監査法人への転職を考えている方にとって、適切なキャリアパスを見極めることは非常に重要です。監査法人には、大手のBIG4系、準大手、中小規模の法人があり、それぞれ異なる特徴や働き方があります。
また、監査法人の業務は監査業務だけでなく、コンサル業務(アドバイザリー業務)も含まれ、幅広いキャリアの可能性が広がっています。
本記事では、監査法人の種類や業務内容、転職成功事例、そして転職を成功させるためのポイントについて詳しく解説します。監査法人への転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
監査法人とは
監査法人は、企業や組織の財務情報の正確性を保証する役割を担う専門機関です。法的には、監査法人は公認会計士法に基づいて設立され、独立した第三者機関としての役割を果たします。主に財務諸表の監査を通じて、投資家や利害関係者に信頼性の高い情報を提供し、企業活動の透明性を確保します。また、近年ではM&A関連業務や内部統制の評価など、非監査業務も増加しています。
監査法人の種類
監査法人はその規模や対象とするクライアント層によって、大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人に分類されます。それぞれの特徴と役割を詳しく解説します。
大手監査法人(BIG4系)
大手監査法人は、グローバルに展開する「BIG4」と呼ばれる監査法人ネットワークに属する法人を指します。具体的には、以下の4つです。
- 有限責任監査法人トーマツ
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任あずさ監査法人(KPMG)
- PwC Japan有限責任監査法人
これらの監査法人は、国内外の大企業や多国籍企業を主要なクライアントとし、規模の大きなプロジェクトに携わることが特徴です。
グローバルネットワークの一員として、各国の専門家と連携して業務を遂行するため、幅広いスキルと経験を積む機会が得られます。また、財務諸表監査だけでなく、M&A関連業務や内部統制構築支援など、付加価値の高いサービスも提供しています。
準大手監査法人
準大手監査法人は、クライアント規模も大手監査法人とあまり変わりませんが、やや法人規模が小さいこともあります。
具体的な準大手監査法人は以下の通りです。
- 太陽有限責任監査法人
- 東陽監査法人
- 仰星監査法人
- 三優監査法人
大手監査法人と比べてチームの人数が少ないため、早めにインチャージを経験できるなど、公認会計士としての成長を感じることができます。
また、幅広いスキルを習得しつつ、クライアントと近い距離感で業務を進められる利点があります。
中小監査法人
中小監査法人は、地元の中小企業や非営利団体を主なクライアントとしています。クライアント層が多様であるため、監査法人の業務範囲も幅広く、以下のような特徴があります。
- 一人の会計士が複数の役割を担うことが多く、経験の幅が広がる。
- 働き方の柔軟性がある場合が多く、ワークライフバランスを重視したい方に適している。
中小監査法人は、大手に比べるとグローバルな品質管理などの社内向けの業務が少ない分、ワークライフバランスが保てることが多い傾向にあります。
社員数が少ない監査法人では、一人ひとりの業務の幅が広く、自分のスキルを磨く良い経験になるといえるでしょう。
監査法人の業務内容

監査法人では、主に「監査業務」と「非監査業務(アドバイザリー業務)」の2つの分野に分かれています。それぞれの業務内容について詳しく解説します。
監査業務(監査部門)
監査業務とは、企業が作成する財務諸表が正しく作られているかを、公正な立場で確認する仕事です。企業の売上や利益、資産や負債などが正確に記載されているかをチェックし、誤りや粉飾がないことを保証します。監査法人による監査がなければ、企業が都合のよいように財務諸表を作成しても、金融機関や投資家はその内容を信じるしかなく、正しい判断ができません。そのため、監査を行うことで、企業の財務情報の信頼性が担保され、安心して投資や取引が行えるようになります。
監査法人は、企業からの依頼に基づき監査を実施しますが、企業と独立した立場を保つことが求められます。公認会計士は、企業に対して公平な態度を保つ「精神的独立性」と、特定の利害関係を持たない「外観的独立性」を守る必要があります。これにより、監査結果の信頼性が確保されるのです。
監査業務には、大きく分けて「外部監査」「内部監査」「監査役監査」の3種類があります。外部監査は、監査法人が企業の依頼を受けて実施するもので、特に上場企業や一定規模以上の企業に義務付けられています。内部監査は、企業内でルールに従い適正な業務が行われているかを確認するもので、業務の改善にもつながります。監査役監査は、企業の監査役が経営陣の業務が正しく行われているかを監督するものです。
監査業務は、監査法人の主な業務の半数から半数以上を占めており、企業の健全な経営を支える大切な役割を担っています。
非監査業務(アドバイザリー部門)
非監査業務(アドバイザリー業務)とは、企業が抱えるさまざまな課題に対して、専門的な知識を活かして解決策を提供する業務です。監査法人のアドバイザリー業務の中心は、主に財務に関するアドバイスを行う「財務アドバイザリー業務」です。企業の会計処理や財務管理の改善をサポートし、より健全な経営基盤の構築を支援します。具体的には、国際会計基準(IFRS)の導入支援や、決算早期化、内部統制の強化などが含まれます。
監査法人では、以前はM&Aアドバイザリー業務や企業再生支援なども行っていましたが、現在ではこれらの業務は「FAS(Financial Advisory Services)」と呼ばれる別法人に分社化されることもあります。FASでは、企業の買収や合併に関する財務デューデリジェンスや企業価値の評価(バリュエーション)、事業再生の戦略立案などを専門的に担当しています。
監査法人のアドバイザリー業務は、企業の経営課題に寄り添い、財務の専門家として的確なアドバイスを提供することが求められます。クライアントが抱える問題を深く理解し、最適なソリューションを提案することで、企業の成長や持続可能な経営をサポートする重要な役割を担っています。
監査法人への転職成功事例
ここでは、監査法人から転職を成功させた事例を紹介し、具体的なキャリア形成のヒントをお伝えします。
大手監査法人からアドバイザリー部門への転職
転職前
- 勤務先:大手監査法人
- 職種:監査部門、職位:シニア
- 年収:930万円
転職後
- 勤務先:大手監査法人
- 職種:アドバイザリー部門(財務会計領域)、職位:シニアアソシエイト
- 年収:900万円+サインオンボーナス:100万
新卒で大手監査法人に入社し、会計監査業務に従事されていたAさんは、上場企業の主査も経験するなど順調にキャリアを積んでいました。しかし、監査業務において「独立性」の観点からクライアントに寄り添った支援ができないことに課題を感じ、今後のキャリアについて悩んでおられました。さらに、監査法人特有の長時間労働や社内向けの調整業務に追われる日々に、働き方を見直したいという思いが強くなり、転職を決意されました。
Aさんのご希望として、これまでの監査経験を活かしながらも、ワークライフバランスを改善し、かつ結婚を機に収入を大きく下げたくないという点が挙げられました。そこで、監査業務以外のキャリアパスとして、FAS(財務アドバイザリーサービス)、事業会社の経理・財務、コンサルティングファームなど複数の選択肢をご提案。その中から、監査法人の財務会計アドバイザーへの転職を選択されました。
転職後、Aさんは監査時代と同様に財務会計領域の専門性を活かしつつ、クライアントに寄り添ったアドバイザリー業務を担当。業務のやりがいを感じながらも、月の残業時間は監査時代の約半分に軽減され、プライベートの充実も図ることができました。加えて、年収についても大幅なダウンは避けることができ、初年度に一時金が支給されたことで、生活水準を維持しながら新たなキャリアへとスムーズに移行できました。
事業会社から監査法人への出戻り転職事例
転職前
勤務先:東証プライム上場メーカー
職種:経理
年収:700万円
転職後
勤務先:中堅監査法人
職種:監査部門(スタッフ)
年収:750万円
公認会計士試験合格後、大手監査法人に就職し、約4年間にわたり会計監査業務に従事していたBさん。その後、ワークライフバランスの向上を求めて上場メーカーの経理職に転職しました。経理業務を3年間経験しましたが、ルーティン業務が中心であり、会計士としての専門性を十分に発揮できていないと感じるようになりました。
そこで、再び監査法人でのキャリアを検討し、大手監査法人とは異なる労働環境の中で、幅広い業界のクライアントに対応できる中堅監査法人への転職を決意しました。3年間の監査ブランクがあったため、当初はスタッフ採用でしたが、1年後にはシニアスタッフへ昇進し、専門性を活かした監査業務に再び取り組まれています。
大手監査法人から中堅監査法人への転職
転職前
勤務先:大手監査法人
職種:監査部門、職位:マネージャー
年収:1000万円
転職後
勤務先:中堅監査法人
職種:監査部門、職位:マネージャー
年収:950万円+業績賞与
新卒で大手監査法人に入社し、監査業務に従事されていたCさん。マネージャーとして主査を務め、豊富な監査経験を積んでいました。しかし、大手監査法人では慢性的な人材不足により、マネージャー職以上に過度な負担がかかる状況にあり、将来のキャリアや働き方に不安を感じるようになりました。また、クライアントに寄り添った監査業務を行いたいと考えていたものの、「独立性」の観点から踏み込んだ支援ができないことに課題を感じ、転職を決意されました。
Cさんのご希望は、監査業務の経験を活かしながら、クライアントにより深く関わることができる環境を求めること、そして労働環境の改善も重視したいという点でした。そこで、FAS(財務アドバイザリーサービス)やコンサルティングファームなどの選択肢も含め、中堅監査法人への転職を検討。その中で、面接官との相性や企業文化を重視し、中堅監査法人の監査部門へと転職されました。
転職後は、監査業務の専門性を活かしながら、よりクライアントに寄り添った監査を実施。業務のやりがいを感じつつも、労働環境が改善され、社内調整業務の負担も軽減されました。また、会計士試験合格前はSEとしての経験があり、大手監査法人の品質管理部門に在籍していた経験を活かして、監査の品質向上や業務効率化にも貢献されています。
監査法人への転職を成功させるポイント

監査法人への転職を成功させるためには、しっかりとした準備と戦略が重要です。ここでは、転職活動をスムーズに進めるための具体的なポイントを紹介します。
転職をする目的を整理しておく
まず、監査法人へ転職を希望する目的を明確にすることが大切です。キャリアアップを目指すのか、新たなスキルを習得したいのか、またはワークライフバランスを重視したいのか、具体的な理由を整理することで、応募する法人の選定や面接時のアピールに役立ちます。自分が監査法人で何を実現したいのかを明確にすることで、転職後のミスマッチを防ぐことができるでしょう。
自分の経験・スキルを棚卸ししておく
監査法人への転職においては、自身のこれまでの経験やスキルを的確に把握し、整理しておくことが重要です。
これまでの監査業務経験だけでなく、会計基準や内部統制、コンサルティング業務に関する知識など、どのような強みがあるのかを具体的に言語化することで、採用担当者に対して説得力のある自己アピールが可能になります。
財務会計の知識だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメントの経験など、幅広いスキルを振り返り、転職後のキャリアビジョンに活かすことが求められます。
監査法人への転職に強い転職エージェントに相談する
監査法人への転職を成功させるためには、専門的な知識を持った転職エージェントを活用することも有効です。監査法人の採用動向や業界特有のポイントを熟知しているエージェントに相談することで、自分の強みを活かせる最適な転職先を提案してもらうことができます。
エージェントは履歴書や職務経歴書の添削、面接対策などのサポートを受けられることに加え、非公開求人への応募をすることもできます。
特に、初めての転職を考えている場合や、自分の市場価値を客観的に評価したい場合には、プロのサポートを受けることで転職活動をより有利に進めることができるでしょう。
監査法人への転職に関するよくある質問
監査法人への転職を検討する際、多くの方が疑問に感じるポイントについて解説します。転職を成功させるために、事前に不安や疑問を解消しておくことが重要です。
年齢制限はありますか?
監査法人への転職において、年齢制限は設けられていません。採用においては年齢よりも実務経験やスキル、専門知識が重視されます。
一般的に、若手のうちはポテンシャル採用が期待され、30代以降は即戦力としての業務経験が求められる傾向にあります。
特に、財務諸表監査や内部統制、コンサルティング業務の経験が豊富であれば、年齢に関係なく転職のチャンスは十分にあります。また、近年では監査業務以外の領域においても専門性が評価されるため、キャリアチェンジを考えている方にとっても門戸は広がっています。
何年目で転職する人が多いですか?
監査法人へ転職するタイミングとして、3〜5年目での転職が多い傾向にあります。
これは、一定の実務経験を積み、監査の流れや手続きを一通り理解した上で、キャリアアップを目指すためです。
一方、キャリアの中盤にあたる10年目以降の転職では、管理職や専門的なスキルを活かしてより高いポジションを目指すケースも見られます。転職時期は個人のキャリアプランやライフスタイルによって異なるため、自分にとって最適なタイミングを見極めることが大切です。
監査法人に向いている人はどんな人ですか?
監査法人に向いている人の特徴として、論理的思考力と細かい点に気を配る能力が挙げられます。
監査業務では、膨大なデータを分析し、財務情報の正確性をチェックするため、細部にわたる正確な作業を求められます。
また、クライアントとコミュニケーションを取りながら業務を進めるため、協調性や調整力も重要です。チームでの作業が多いため、協働する姿勢や問題解決能力が高い人は、監査法人での業務に適しています。
加えて、変化の激しい会計基準や規制に対応するため、常に学び続ける意欲が求められます。専門知識を深めながらキャリアを積みたい方にとって、監査法人はやりがいのある環境といえるでしょう。
監査法人の業務はきついと聞いたのですが本当ですか?
監査法人の業務は、繁忙期には長時間労働が求められることがあり、ハードな働き方が求められるのは事実です。
特に、決算期や監査のピーク時には、クライアント対応や報告書作成などの業務が集中し、残業が発生することが一般的です。しかし、近年では働き方改革の推進により、フレックスタイム制度やリモートワークの導入など、労働環境の改善が進められています。
また、監査法人によっては、ワークライフバランスを重視した職場環境を整えており、繁忙期と閑散期のメリハリをつけることで、無理なく働ける環境が整いつつあります。業務の大変さを軽減するためには、計画的なタスク管理や、適切なストレスマネジメントが重要となります。
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まとめ
監査法人への転職を成功させるためには、業界の特性や自分自身のスキル・キャリアプランをしっかりと理解することが重要です。監査法人には、大手のBIG4系、準大手、中小規模の法人があり、それぞれに特徴や業務範囲が異なります。転職を検討する際には、目的を明確にし、経験やスキルの棚卸しを行った上で、転職先のリサーチを徹底することが求められます。
監査法人の業務は、財務諸表監査や内部統制監査を中心とした監査業務のほか、IFRS導入支援やM&Aアドバイザリーといった非監査業務もあり、多様なキャリアパスが広がっています。転職時には、自分に合った法人の選択が大切ですが、業界の実情を理解し、転職エージェントを活用することで、より良い選択が可能になります。
監査法人への転職を検討する際には、転職の目的やスキルの整理、転職先のリサーチが欠かせません。加えて、監査法人ごとの働き方やキャリアアップの機会を理解することが、後悔のない転職につながります。VRPパートナーズでは、公認会計士に特化した転職支援を行い、業界の専門知識を活かして、あなたに最適なキャリアパスを提案いたします。