ベンチャー企業の経営企画と他企業へのIPOコンサルを兼務。ボランティアとして実践的な知見を広げる機会を持つ


キャリアを通して一貫してIPOに携わり、株式会社GameWithで創業4年目でのマザーズ上場を果たした伊藤さん。一方で、ボランティアとして現在も3社のIPOをサポートするなど、活動の幅も広げている。無償のボランティアにこだわる理由や活動の原動力はどこにあるのか、話を聞いた。

-これまでのキャリアについて教えてください。

GameWithに入社したのは、同社創業から約2年経った2015年10月。それまでベンチャー企業3社を経験し、IPOや管理部門の強化に携わってきました。
大学卒業後に入社した情報通信企業では、2年目にIPOの担当役員に誘われて上場準備に関わるようになり、資料作成や雑務が中心ではありましたがIPO業務の一端を担い、1年後に会社はジャスダック市場に上場(当時は店頭登録)することができました。その後、私はIRを担当したものの、圧倒的な知識不足と経験不足を痛感し、会計等を専門に学べる中央大学会計専門職大学院で学びなおすことにしました。ここでは会計だけでなく、ファイナンスやマネジメントについても学ぶことができただけでなく、自身がなんとなく実践していたIPOについて改めて体系的に学ぶことができました。
大学院に通っていた2年間は、平日の9時から18時までは会社、18時半から21時まで授業を受け、土日は勉強や宿題に明け暮れる日々。体調を崩すぎりぎりまで追い込んでいました(笑)。ただ、年齢では一回りも二回りも上の、素晴らしい実績や経験を持った方と“大学院同期”になり、夜な夜なご飯に行ってディスカッションを繰り広げた時間は本当に刺激的でした。特にお世話になった大学院の先生に「ここで得られるものの半分は知識、半分は人脈」と言っていましたが、社会人大学院はまさにその通り。大学院で学んだことや知り合った方たちとの交流は、その後のキャリアでも重要になっています。
大学院で学びながら、会社では財務経理部のマネージャーとしてM&Aを約30件担当し、勉強した理論を実務で実践していました。おかげさまで会社の規模も大きくなったものの、もう少し一つ一つの業務の細部まで目を行き届かせたかったために、転職することで職場の環境をあえてダウンサイズをはかることにしました。
2社目の不動産コンサル会社では大学院の同期がCFOを、私が経営企画室長として監査法人の監査に耐えうる管理部門の構築や新規商材の開発や情報システムの一新などを担当しました。残念ながらこの会社はIPOはしていませんが、IPOを目標に掲げたことで管理部門を強化することができ、業績も劇的に改善しました。
次に入ったのは人材サービスの会社です。この会社でもIPOを目標に掲げ、管理部門の抜本的な改革を任されたので、自分に不足している知識や経験を持つメンバーを採用しながら、2年で会社組織の強固な土台を作り東証二部に上場、その翌年には東証一部に上場しました。


―GameWithに入ったきっかけと、現在の仕事内容を教えてください。

GameWithを知ったきっかけは、スタートアップに強いベンチャーキャピタルにいる友人から「投資先に面白い会社がある」と紹介されたことでした。当時はまだマンションの一室にオフィスがあり、面接も友人のベンチャーキャピタルのオフィスでするような会社でしたが、社長の今泉から「ゲームをより楽しめる世界のインフラを目指す」というビジョンとその想いを聞き、一緒に働いてみたいと思ったことがきっかけです。
私は大きなビジョンと株式公開のように高い目標を掲げている社長が好きです。IPOは、経営部門や管理部門の構築や強化が主となることから、そのような向上心の強い社長の直下で働けて、一緒に働くことにストレスのない社長でなければお互い続きません。今泉は、目的を説明さえすれば、私が「これをやってください」「ここは守ってください」と言えば嫌な顔をしても受け入れてくれますし、私を信頼して全権を委譲してくれるので非常に働きやすいです。
例えば私がGameWituに入社した時には、成文化されたルールはほどんとなく、規程といっても定款や労務関係の規程しかないような状態でした。そこで同時期に入社した管理部長と二人で試行錯誤しながら管理部門を構築しました。当社の管理部長は、公認会計士なので主に財務経理を、私はそれ以外の管理部門を担当するなど、お互いの補完機能が高く、社長も我々を信頼して任せてくれているので意思決定から実施まで何事も早かったです。その甲斐もあり、入社してから約2年、創業4年目の2017年にマザーズ上場を果たしました。
なお、現在はGameWithに勤めながら経営部門の管掌をしていますが、空いている時間で3つの上場準備中の会社にIPOのコンサルテーションを提供しています。具体的には社長やその会社のIPO担当の方の相談にのったり、資料作成を手伝ったりですが、必要であればIPO担当者のご紹介や採用面接のお手伝いもします。他にも機会を頂ければセミナーでお話をさせて頂いたりします。


-本業に加えボランティアで企業コンサルタントも務める。活動の原動力は何ですか?

IPOには教科書がなく、たまに本はみかけますが発行体となる企業側の目線で書かれたものは少なく、実務的な内容ではありません。私は自分が経験してきたことやどのように問題を解決したかなどを伝えることで、少しでも良い会社や成長している会社のお手伝いができればという気持ちがまずあります。
また、信頼されてコンサルタントとして企業に携わることで、社外の人間であれば普通は見ることのできない経営資料や聞くことができない経営者の方たちの悩みに触れ、自分の経験を伝えながら一緒に解決方法を考えることは、私にとって貴重な学びの機会となっています。IPOは1社につき平均4~5年を要するプロジェクトなので、一人の人間が関われる数は必然的に限られます。しかし、ボランティアとして複数の企業に関わることで、実践的なケーススタディに触れることができ、私自身の知識を最新のものにアップデートすることができます。これはお金を払っても学べない貴重な経験です。そう考えれば、私は無償で勉強させてもらえ、企業側は実務的なIPOコンサルティングを受けられるのであればWin-Winの関係となります。

-ボランティアという「実践的に学ぶ機会」を複数持てている理由はなんだと思いますか?

私はよく勉強会や食事会に参加していますが、自分でも様々な勉強会や食事会を主催しています。参加してくれた方が、次回はまた新しい参加者を連れてきてくれることも多いので、私自身も会を重ねるたびに新しい刺激を受けます。
私がお手伝いをする企業は、こうした会に参加してくれた方のご紹介がほとんどです。そのため相手方がどのような企業で、どのような課題を抱えているのか、その問題を解決するために私がどのようなお手伝いができるのかをざっくばらんに聞くことができます。信頼できる方が、信頼できる企業を紹介してくれ、求める事項についてもすり合わせができている状態でお手伝いを開始できることからお互い安心できます。
ただ、どんな形であればパラレルキャリアを続けるには、自分にとっての「ベース」がなければいけません。私のベースは「GameWithを大きくしていくこと」。そのために、他で学んだことを持って帰ってくるという循環を大切にしたいと思っています。

**プロフィール**
伊藤修次郎さん

株式会社GameWith 経営企画室長。これまで情報通信、不動産コンサル、人材サービスなど3社を経験し、ジャスダック、東証一部、東証二部、マザーズすべての市場で上場を果たす。現在はGameWithでの業務に加え、ボランティアでIPOコンサルタントとして活躍している。

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