2014.05.04
消費税8%への増税があり、今後は10%へのアップへ向けた議論が進められます。消費増税による景気の冷え込み、また増税によっても解決されるわけではない社会保障などの財政問題について、課題は山積みです。今後の議論が注目されます。税理士にとって税制の大きな変更は当然のことながら実務への影響があります。
税制改正大綱では、品目ごとの軽減税率の導入も盛り込まれています。税制の議論の行方に注視し、税務の効率化、標準化について想いを巡らせている方が多いでしょう。
ところで、税制改正のたびに業界内で行われる議論があります。
それは、税制が大きく変わることで、実務に対応できない高齢の税理士が淘汰されるのではないか、というものです。60代、70代の層が厚く、とかく高齢化が叫ばれる税理士業界。そこには、業界再編を望む若手税理士の「希望的観測」も混じっているように感じます。
税制が複雑化することは、社会的なマイナスもありますので、それをテコに自らの利益を伸ばす、との考え方は、あまり健康的ではないとも思います。
しかし、頻繁な改正を踏まえた実務に対応できない会計人の存在が、納税者の利益に反するのは紛れもない事実です。消費税の増税は、単に税率の問題ですから、実務上の直接的な変化は大きくないかもしれません。
大きな税制改正には、社会的なインパクトがあります。それにより税務周辺の業務へのニーズがますことが考えられます。例えば消費税では、下請事業者の価格転嫁の問題も取りざたされています。元請けの事業者へ、消費税を乗せた請求を行うための書類整備などの需要が起こるでしょう。
契約書作成や債権回収に強い弁護士とのアライアンス等、ワンストップサービスへ向けた取り組みも重要になってくるかもしれません。中小企業の資金繰りの問題が表面化してくることも想定されます。キャッシュフロー改善、融資申請に関する業務への注目も高まります。そして、今回の大綱ではあまり取り上げられなかったとも言われる資産税関連も、今後の大変化は避けられません。
既に語り尽くされていることですが、税務だけにとどまらない相続・事業承継業務への注目の高まりは、税理士業界の大きな変化を促すでしょう。そのような変革の時代、実務を若手に任せきりにしている税理士にはできない、きめの細かいサービスを創出することで、確固たる差別化を行うチャンスが生まれます。
税理士に求められるスキルが変われば、独立の際だけではなく、転職市場の人材ニーズにも変化が訪れます。それらに対応するために日々研鑽しておくことは、税務の複雑化による高齢の税理士の「敵失」を待つような姿勢とは異質なものです。
税制改正を読み込むことが、会計人としての義務感だけではなく、将来へのモチベーションを高めるものとすることが必要ではないでしょうか。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。