2014.04.22
京セラの創業者である稲盛和夫さんは「会計は現代経営の中枢」と、経営者にとって会計への理解が必須であることを頻繁に語られています。
稲盛さんにいわれるまでもなく、会計士・税理士のみなさんは、計数感覚を持って経営することの重要性を感じていると思います。顧問先の社長が必ずしも会計について理解しているわけではないことも痛感しているでしょう。
稲盛さんの著書『実学――経営と会計』によると、稲盛さんも元々は技術者であり、20代で創業したとき、会計の知識は全くなかったそうです。そして会計についての理解を深めるきっかけとなったのが、大企業で経理担当を務めてきた年長の経理部長との「激論」でした。
実務感覚とは異なる会計の数字の概念、そして、その数字の経営上の意義を、経理のプロが音を上げてしまうほど質問し続け、少しずつ理解を深めていきました。
会計士・税理士はいうまでもなく会計のプロです。
しかし、明らかに自分とはタイプの異なる、才覚のある若い経営者の率直な疑問に対して有益な答えを出すことに「自信がある」という方はどれほどいらっしゃるでしょうか。質問のなかには、当然、会計学的に見て「素人くさい」ものもあるでしょう。それを冷笑してしまうのは簡単ですが、それでは経営者の成長にはつながりません。
会計人の、記帳代行等だけではない役割を果たすことがしきりに叫ばれています。自計化を推進し、月次決算等の意義について経営者に伝えることの重要性については、いい尽くされた感があります。
これは会計のテクニカルな手法を教えることだけではありません。
IT化の影響もあって、すぐれた会計システムで、経営指標などが詳細に出るようになってはいますが、その資料をどのように使うのかということを、専門知識のない方に改めて説明できなければ、「宝の持ち腐れ」となってしまいます。
残念ながら「税理士は経営を知らない」という揶揄が、経営者のあいだで常套句のように語られているのも事実です。会計人と経営者に相互不信、距離感がある状況では、会計を経営の武器にする経営者は育っていかないでしょう。
経済・経営環境が新しいフェーズに入っている今、あなたを困惑させるような質問を投げかける若い経営者は、将来の日本の産業界を担う大経営者かもしれません。彼ら、彼女らの質問を逃げずに正面から受け止め、「激論」も辞さない堂々たる心構えを持つ会計人が求められているのではないでしょうか。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。