2014.04.16
ガソリン代の高騰が家計、また経営において重荷になることは言うまでもありませんが、ここで中小企業の経営者が考えがちなのは、社長個人が所有する自動車のガソリン代、あるいは社用車を個人的に使った際のガソリン代を、会社の損金に算入してしまうことです。
税法上、車の名義が個人であろうと、会社であろうと、事業目的で自動車を使用した場合のガソリン代を損金算入しても全く問題はありません。しかし、経営者が車で移動する際、それが事業のためなのか、完全な私用なのかを分けるのは難しいもの。「社長は24時間365日、すべての行動が仕事だ」と言いたい気持ちも非常によくわかります。
しかし、税務当局にその説明が通用するかどうかは別問題。社長の車のガソリン代の損金算入が否認された場合、会社が負担したガソリン代は社長個人への給与扱いになると考えられます。役員給与の損金算入の要件にも適合しないため、法人税が高くなるだけではなく、社長個人への所得税も課税される、俗に言う「往復ビンタ」をくらうことになります。
従来、このような経営者の私用でのガソリン代は、たいした金額ではないことが多いので、税務調査でも大きな問題にならないことが多かったようです。また、ガソリンの価格が上がっているからといって、その額が急激に増えるとも思えません。
しかし、税務当局は社会・経済状況やマスコミの報道などを見て、どのような租税回避への誘惑が高まるかを予測し、調査の際に集中して調べる傾向があります。ガソリン代が高騰し、経営者が個人経費の付け回しを考えそうなタイミングで、今まで指摘されたことがなかったガソリン代の内訳について、集中的に調査される可能性があるのです。
税理士としては、個人の車を会社で使うためのルールを定めた個人、法人間の契約書、もしくは業務のために使われた車の走行距離が説明できる簡易な運転日報などの整備をすすめたいところです。自動車に限った話ではありませんが、個人と法人が別人格であり、2つの契約主体であるという、中小企業経営者が理屈ではわかっていても、なおざりにされやすい部分を、見直してもらうきっかけにもなるのではないでしょうか。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。