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大谷幸宏
再建? 廃業? 会計人は「再スタート」への道を提示しよう

2014.03.29

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昨年3月にモラトリアム法が終了し、日々顧問先の資金繰りに関する相談を受けている税理士の皆さんは、今後の金融機関の出方について、詳細に注視されていることかと思います。
何人かの税理士の先生に聞き取りを行ったところ、同法終了以降、与信への影響は今のところ限定的との声が多いようです。「まだまだ金は出ている。こちらも拍子抜けしたくらいだ」との声も聞きました。
しかし、金融機関の種類によって対応には差があるとの話も。都市銀行ではすでに引当を積み、審査を厳格化する動きが目に見えるようになっていますが、地銀や信金についてはその動きがまだ目立って起こってはおらず、様子見の状態にあるとのことです。
皆さんの周りの金融機関ではまた別の動きが見られるかもしれませんが、いずれにしても、モラトリアム法により「厳しくしたくてもさせてもらえなかった」状態から、「やろうと思えばできる」状態に変わったことは間違いありません。景気動向が大きく関わることでもあり、油断できない状況はまだしばらく続きそうです。
 
「ゾンビ企業」などという、いささか悪意のある言い方も一般化しましたが、モラトリアム法により延命を図っている状態であった企業も本格的な変革が迫られることになります。昨年8月には、税理士を含めた専門家を経産省が認定し、質の高い事業計画の作成を支援した企業に融資上の優遇を与える制度もスタート。会計人への期待も高まっています。
再建の目処が立たない会社は廃業し、市場から退場する道を選ぶところもあるでしょう。それはある意味で仕方のないことで、廃業は必ずしも後ろ向きの決定ではありません。個人保証した経営者個人の生活を守りながら債務を整理できれば、新しい人生を歩み出すことができます。
 
すでに「死に体」であった会社に対し、税理士が早めに積極的な助言をしていれば最悪の事態は避けられた、という事例もあるようです。しかし、税理士に対して時々聞かれる「顧問料ほしさに会社を延命させた」との批判はあまりにも一方的な気もします。最終的な決断は経営者にしていただくほかありません。
会計人の役割としては、顧問先の危機の予兆を発見した際、客観的なデータをもとに経営状態について注進し、再建と廃業の選択肢をリスクとともに提示する必要があるでしょう。再建の場合、金融機関の動きも視野に入れながら、経営改善計画の策定を含めた事業再生に積極的に取り組むこと、廃業を選択した場合は、利害関係者との調整を他士業とも連携しながら迅速・適切に進めること。いずれにしても、多大なストレスの中にある経営者を元気づけながら、気持ちよく再スタートを切ってもらえるように尽力することが求められていくと思います。
(文:VRPスタッフ)

大谷幸宏 プロフィール

大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。

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