2014.03.17
会計士・税理士の方々から、「会計の知識のある経営者は意外なほど少ない」といったお話を聞くことがあります。経理畑出身の社長であればともかく、技術や営業一筋にキャリアを積んできた人は、その専門分野には一家言を持っていても、基本的な会計の知識を欠いていることが多いようです。
以前、ある税理士から「何十年も経営をしている中小企業の社長さんから、真顔で『法人税を安くするため、期末に大量に仕入れを行っておきたい』と言われ、棚卸について一から説明しなければならなかった」といった話を聞きました。こういった事例は、決して珍しいものではないようです。
さて、公認会計士が行う監査業務の一つに、実地棚卸の立会いがあります。棚卸資産の計上について、業種それぞれの特殊性を勘案しながら、会社業務の専門知識を持つ在庫担当者と話し合い、正確かつ効率的な監査をすることに、それぞれ知恵を絞られていることでしょう。
どのような業種でも、多かれ少なかれ在庫計上する資産があります。会社経営において、棚卸に正確を期すことの目的は、粉飾決算を防ぐことだけではありません。在庫管理や不正防止など業務の適正化、コストダウン、経営診断、また税務や融資にも深く関わってきます。実地棚卸の監査スキルは、裏を返せば経営改善のためにも極めて有益なスキルなのです。
特に企業内会計士にとって、監査法人で豊富な棚卸立会いの経験は武器になります。棚卸に関するアドバイスが、決算書の作成、経営診断と「一気通貫」で繋がる知識・スキルは、在庫管理の担当者や経理担当者でもなかなか真似できません。
冒頭に申し上げたように、一般企業の経営者は会計の知識に乏しいことが多々あります。監査業務の経験が豊富な会計士が、企業内会計士への転職活動を行う際、あるいは経営コンサルタントとして一般企業へ営業する際にアピールすべきところは、会計の知識がどのように経営に資するのか、ということです。
棚卸の立会いの経験は、あまり積極的にアピールできるスキルではないと思われているかもしれません。それは、転職先企業が会計士のどのような経験に価値を見出すかということを、転職者は必ずしも正確に理解していないことが原因です。自身が会計士としてどのような業務を行ってきたのかという、いわば「キャリアの棚卸」を行い、棚卸の立会経験も一つのアピールポイントとして提示できるようにしておくことが重要なのだと思います。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。