2014.02.27
最近、経営上の様々な相談を一括して受け付けて問題解決に導く「ワンストップサービス」をキャッチフレーズとして掲げる税理士事務所が増えてきました。孤独な中小企業経営者にとって身近に相談できる相手である税理士の心意気を感じます。
ワンストップサービスを名実ともに実現させるためには、ほかの士業、あるいは幅広い業種の企業との連携が必須。税理士の「顔の広さ」が求められることになります。
人と人とをつなぐ業務では、スケールメリットがものを言います。様々な業種の会社を顧問先に持つ大きな事務所では、顧問先企業同士を引き合わせる「ビジネスマッチング」により、問題解決だけではなく顧問先全体の繁栄につなげることができるからです。
税理士による顧問先企業の紹介には、もうひとつの強みがあります。それは、顧問先企業の財務状況のデータを大量に持っているので、安定供給能力や支払い能力などの信頼性が詳細にわかることです。
もちろん、顧問先の財務状況を他の企業に教えることは守秘義務上できません。しかし、紹介される会社からすると、財務について聞かなくとも、税理士が勧める顧問先企業であれば信頼できるだろうと「暗黙の了解」が生まれます。信用調査会社の情報を調べるよりもはるかに安心感があるでしょう。
とはいえ、税理士がビジネスマッチングの強みについてアピールすることには危険もあります。税理士は各顧問先会社の専門分野に関しては素人であることがほとんど。会社同士が本当に「マッチ」するかどうかには様々な要素が関わっているため、マッチングの成功に完全に責任を負えるというわけではありません。
責任範囲の問題として、よほど特殊な事情がない限り、顧問先企業同士の取引や共同事業などの失敗について、税理士に損害賠償義務が発生するとは考えにくいといえます。しかし、何かの損を負わせてしまえば、顧問先との関係が気まずくなるのは想像に難くありません。
先日お会いした、ある大きな税理士法人の代表の先生は、面倒見の良さで評判の人。人を紹介するのも大好きで、実際に顧問先企業同士を引き合わせたこともあるとのこと。しかし、そのような「顔つなぎ」を得意にしていることを積極的にアピールするのは、リスクがあるからと避けているそうです。
一方で、その先生は顧問先を集めたセミナーや交流会・イベントを定期的に開催しています。それをきっかけに、顧問先同士で家族ぐるみの付き合いが生まれる場合もあり、その中からニュービジネスも誕生しているようです。税理士が持つ企業同士の「結節点」としての強みは、あくまで控えめにアピールし、「出会いの機会」を作る程度にとどめておくのがよいのかもしれません。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。