2014.02.06
監査法人の就職市場について考えてみましょう。監査法人への就職状況は年度ごとに大きな波があります。監査法人の場合、採用活動は長期計画に基づいていません。多くのケースが単年度計画なのです。つまり試験に合格した年に就職するとしても、1年前と1年後では、状況は大きく異なるのです。
過去のケースを見てみましょう。2002年は監査法人にとって完全な「売り手市場」(求職者が有利)でした。法人説明会に参加すると、その場で「内定」なんていうケースもありました。履歴書は後で郵送してくれれば結構、そんな状況だったのです。
これに対し翌年の2003年はどうでしょう。実は状況がガラリと変わってしまったのです。書類選考はまったく通りません。もし内定が出たとしてもすぐに返事をしないと取り消しに……。そんな状況に変わっていました。
2005年から2007年は「天国」のような時代でした。内部統制報告制度の導入準備のタイミングと重なったことが大きな要因と考えられます。そのため監査法人の忙しさは尋常ではなく、猫の手も借りたいほど。資格さえもっていれば即採用という状況でした。
では最近はどうでしょう。公認会計士の試験経度見直しにより大量の試験合格者が輩出されるようになりました。しかし世間はリーマンショックの影響による監査報酬のダンピング化が進んでいる状況。MBOによる非上場化、新規のIPOの低迷なども影響しました。内部統制報告制度による需要が思っていた以上に伸びなかったことも影響しているのでしょう。監査法人の経営環境を悪化させる外的要因がいろいろと増えているのです。その結果、試験合格者の未就職が社会問題化。就職市場が改善されないまま現在にいたっているのです。
金融庁は2018年までに公認会計士の総数を5万に増やすという方針を打ち出しています。しかし現状、この方策は市場の状況に沿っていません。そのため軌道修正をかける必要が出てきています。今後は少しずつ求人市場についても需給のバランスが改善されていくのではと思います。
なお金融庁は、試験合格者の未就職問題を受け、一般企業に受け入れやすくする「企業財務会計士」の創設を検討していました。これも市場に沿っていないなどの理由から最終的には廃止になっています。
この先、2、3年で求人市場は改善されるようになるでしょう。ただし、その時の年齢を考慮することを忘れてはいけません。転職するタイミングが2、3年後だとしたら、そのときの年齢はいくつでしょう。もし30代になっているのなら、先を待たずに20代で転職する方が有利かもしれません。市場の改善と自身の年齢をかんがみながら転職活動を進めるようにしましょう。
なお、会計士や税理士業界でも一部、派遣が認められるようになっています(2013年3月時点)。こうした状況も踏まえるべきでしょう。ただし法律は今後も変わる予定があるので、常に動向はチェックしておきましょう。厚生労働省のホームページで「労働者派遣法」について調べてみてください。
ただし公認会計士や税理士の場合、派遣としてではなく個人として非常勤勤務するケースが多々見られます。派遣法自体が無意味ともいえるので、今後、どのような法改正がなされるのか注意しておくようにしましょう。
なお余談になりますが、公認会計士や税理士の場合、退職後に次の転職先が決まってないと資格の登録先が勤務先から自宅に移ることになります。この場合、自宅で開業していると思われてしまい、これまでは失業手当が支給されなかったのです。
しかし2013年2月から自宅で開業していないことが確認され、一定の要件を満たす場合に限り、失業手当が支給されるようになりました。詳しくは厚生労働省のホームページで「雇用保険制度」について調べてみてください。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。