2014.02.03
自宅近くの商店街に店舗を構える美容師さんとお話をしたときのことです。
私が税理士に関連する仕事をしていることを知ったこの方、「じつは最近、顧問税理士を変えたいと思っているんです」と告白しました。
理由を聞いてみると、「その税理士さんとは10年以上付き合っているんですけど、未だに私の商売のことを全然わかっていない」とおっしゃいます。
税理士に経営に関するアドバイスをしてもらおうと質問すると、「今年度の税制改正では~」と、何やら複雑な税法についての「講義」が始まってしまうそうです。「その話が僕にはまったくチンプンカンプン。聞きたいのはそういう難しいことじゃないんですよね」と不満げです。
これに類する話はとてもよく聞きます。税理士がビジネスについて興味がないように感じられ、単なる「税法マニア」に見えてしまうという、というものです。
その美容師さんとのお話で、さらに興味深かったことは「社労士さんのほうが、まだ経営の相談に乗ってくれている」という言葉があったことです。
これは、税理士の資質の問題だけではなく、士業の業務内容も関係していると思われます。美容師の業務は、会計的にはそれほど複雑さはありません。そして、労働集約的な仕事で、雇用する美容師の人件費が経費のうち大きなウェイトを占めます。
そのため、雇用・人事制度について相談に乗る社労士は、専門業務だけを行っていたとしても、「経営」の最も重要な部分について指導しているように感じられます。
一方、税理士は、出された数字に基づいて機械的に申告書を作るだけの人のように見えてしまうのです。
おそらく、この美容師さんについている顧問税理士は、多少の融通の利かなさはあるかもしれませんが、税理士としてそれほど問題のある仕事をしているわけでもないのでしょう。本人も、よもや顧問先からこのような評価をされているとは気づいていないと思われます。
もしかしすると、その税理士は会計に基づいた経営上のアドバイスも行っているつもりであるのに、美容師さんが税理士への不信感から心を閉ざし、聞く耳を持たなくなってしまっているのかもしれません。これは不幸な関係です。
「税理士は、もっとコンサルティング能力をつけるべき」との声が聞かれるようになって久しいですが、まずは、すべてのコンサルティングの土台となる、お客様がお客様自身のビジネスについて何に関心があるのかを察する能力がが必要とされていると感じる出来事でした。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。