2014.01.28
金融緩和の流れの中で、マネーの供給が中小企業の設備投資等に回るか否か、ということが盛んに議論されています。その中で、キーパーソンになるのが税理士・会計士です。
野田政権時、昨年8月に成立した「中小企業経営力強化支援法」では、中小企業への支援事業の専門家を認定しました。公認会計士や税理士、弁護士、中小企業診断士や民間のコンサルティング会社、地銀や信金などの金融機関、商工会や商工会議所等が、その認定対象となっています。同法施行後、現在までに全国で1万8千を超える機関が認定を受けていますが、そのうち約7割は税理士です。中小企業のビジネスドクターとしての税理士の存在感に改めて気づかされる数字です。
「中小企業経営力強化支援法」は、モラトリアム法の終了に合わせて創設された制度です。モラトリアム法においても、事業計画の策定などについて会計人の役割が盛んに語られましたが、それが公的に裏打ちされた制度だといえるでしょう。
金融機関の方とお話していると、「しっかりした融資申請を出さず、過度に敵対的な態度を取られると、貸せるものも貸せなくなる」という言葉をよく聞きます。その言葉には、多分に与信能力への疑問の声や「貸し渋り、貸し剥がし」批判に対する自己弁護も含まれているとは思います。
しかし、しっかりした事業計画等を策定している会社は、行内の稟議も通りやすくなり、融資担当者にとってありがたい存在であることは事実です。つまり、会計人は、不動産や個人保証など「担保至上主義」ともいわれる金融機関の事業への与信能力を補完する存在なのです。
金融機関はお金を貸すことが仕事です。一定量の貸したい気持ちをこちらに向け、利害の一致する点を探らなくてはなりません。資金繰りの相談といえば、昔は、地方、国会議員に口利きをしてもらう、ということがよく行われていました。
今、それが全くなくなったわけではないでしょうが、その威光はかなり減じられてはいるでしょう。もっと合理的、近代的な手法が求められるところですし、またそのような業務が確立すれば、「大物」とのコネがなくても参入できる分野となります。
もちろんきれいごとばかりではありません。マクロ的に、供給されたマネーが市場に回らず、結局、金融機関が国債の購入に充てる動きが強まれば、個人の力ではどうにもならない部分も出てくるでしょう。しかし、マクロは言うまでもなく、ミクロな動きの集積です。会計人はその最前線に立っているという自覚をもち、顧問先のためにできる限りのことをする、という気持ちを新たにしたいところです。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。