2014.01.07
会計士や税理士の就職先として多い監査法人や税理士法人。大手と中小とでは、仕事内容や環境などにどのような違いがあるのでしょう。ここでは大手と中小を比較してみたいと思います。
大手の監査法人/税理士法人
大手の場合、一番の魅力は「安定性」ではないでしょうか。周囲からの信頼性、規模感などを勘案すれば、よほどのことがない限り会社が潰れる、職を失うということはないでしょう。大企業同様、福利厚生も充実しているのはいうまでもありません。
大手の場合、新卒として採用する人数も多くなります。同期で入社した「仲間」が多いことから、仕事に取り組みやすい、悩み事を相談しやすいなどのメリットも見込めるでしょう。もし退職したとしても、同期の仲間とのつながりは強いもの。勤務先が変わったとしても、大事な人脈として困ったときには大いに役立つでしょう。
一方、大手ゆえに仕事の融通が利かない、仕事が画一的になる、組織に属するゆえ窮屈に感じる、などのデメリットももちろん存在します。
中小の監査法人/税理士法人
大手に対して中小は「自由度」が一番の魅力といえるでしょう。大手の場合、組織がしっかりしているため、業務が細分化されがちですが、中小では一人で多くの業務をこなさなければなりません。そのため、いろいろな業務を経験し、身につけられることが魅力ともいえます。
多くの経験を積めることから、実力さえあれば出世も早くなります。自ら率先して仕事を引き受けることも可能です。自らの手腕を試すには、こうした自由な環境はうってつけといえるでしょう。あらかじめ独立を考慮している人にとっては勉強の場になるはずです。
一方、大手にはないデメリットも。給与は必ずしも大手より高くありません。むしろ低くなりがちです。退職金制度などの福利厚生も大手に比べて充実しているわけではないでしょう。また、転職するとなると「大手」出身というブランド力が評価されることも事実。中小出身者では不利に働くかもしれません。中小から大手に転職、というのも相当難しいと捉えるべきでしょう。
なぜ中小から大手への転職は難しいのか。その理由の1つが経験にあります。大手の場合、グローバル企業を顧客にかかえるケースが少なくありません。そこではグローバルで利用している電子監査システムを使用している例が多く、このシステムの使用経験を問われることが多いのです。
大手の場合、このシステムを使いこなすためのトレーニングに時間を割いて社員を育成しますが、中小ではこうしたシステムを使う機会は少なく、トレーニングに時間も割きません。導入していたとしても大手が使用する高度なシステムでないケースがほとんどです。
仮にグローバル電子監査システムを使っていたとしても、大手と中小では監査の内容が異なります。大手の場合、顧客は大手企業であるケースがほとんど。複雑な会計であることから、社員は非常にさまざまな経験を積むことができます。これに対し中小では、顧客も小規模な企業であるケースが少なくありません。会計は比較的簡易な処理であることが多く、そこには大手ほどの経験は求められません。ここに経験の差が生まれてしまいます。
では転職先として中小を選ぶ場合はどうでしょう。転職先として避けたいのは、設立して10年経っても事業があまり拡大していない監査法人/税理士法人です。経営者の手腕が悪い、もしくは事業への意欲が低いなどが考えられます。何かしらの問題を抱えていると考えて然るべき。業績や成長性を考慮して選定するのが好ましいでしょう。
プロジェクトによっては同じ上司としばらく付き合うことになります。もし上司が気に入らなければ……。大手のようにプロジェクトごとに、上司や組織が異なるというケースは稀です。中小では仕事がやりにくい、上司が気に入らないとなったら、自分が辞めるしか選択肢はなくなってしまうのです。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。