2013.12.20
会計士・税理士資格を持つ人の働き方には、自分で事務所を開業するほか、監査法人や会計事務所での勤務という形態があります。そして、勤務税理士・会計士として働く人が、必ず一度は考えたことがあると思われるのが、他事務所への転職です。
転職を考える際は、他の事業会社における転職と同じように、求職者が個人で転職市場に投げ出されることになります。そこでまず知っておきたいことは、自身の「転職市場での価値」です。この部分を見誤ると、理想と現実の食い違いに苦しむことになります。
例として、35歳の勤務税理士、Aさんを挙げます。彼は、都内の中堅事務所で、税理士事務所の一般的な業務である中小企業の顧問税理士として働いています。所長税理士からの信頼も厚く、年収は1千万円。実質的に事務所の中心として活躍していました。
しかし、Aさんは転職を考えていました。彼の理想は、「もっと大きな税理士法人で、上場企業の顧問、とくに企業が海外進出をする際の国際税務コンサルティングを行い、より多くの報酬を受けること」でした。
一念発起して勤務する事務所に辞表を提出したAさん。慰留を受けましたが、決意は揺らぎませんでした。そして、以前の職場と比べ物にならないほどの大きな税理士法人に転職し、法人担当となりました。
さて、Aさんは、以前勤務していた時と比較して、収入面での満足が得られたでしょうか。答えはNO。年収は、以前の1千万円から、700万円に激減してしましました。
転職市場において、特に会計人のような専門職に求められるのは、その会社で即戦力となるような業務経験です。Aさんは、中小企業の税務には十分な経験がありました。同じ法人税ですから、もちろん共通するスキルはありますが、上場企業では活用する税制、また税務周辺の法務知識が大きく異なります。国際税務となれば尚更でしょう。
転職者が肝に命じるべきことは、転職市場では、従来の「社内の評価」は通用しないこと。転職を考える際に第一に必要となる視点は、前職の経験を活かし、新しい職場においてどのような価値を提供できるのかを自己分析することです。
もちろん、新たなスキルを身に付けるために、収入の減少は仕方がないという考え方もあります。新しい職場で能力が開花し、以前の収入を大きく超えることもありえるでしょう。しかし、転職の時点で、自分の適正な市場価値を知り、一定の覚悟を持って転職しなければ、「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。