2013.12.11
転職市場において必ず起こる問題として、求職者のスキルと雇用者が求めるスキルのミスマッチがあります。
税理士業務や監査業務は専門性が高く、また業務の同質性、汎用性は比較的高いと考えられます。しかし、他の事業会社よりもミスマッチによるトラブルが起こりにくいというわけではありません。むしろ、専門性が高いからこそ、転職者に求めるスキルのレベルが高くなるため、小さな認識の食い違いが強調されやすいという側面があります。
公認会計士と税理士でもミスマッチの様相は異なります。これは「会計士募集」と「税理士募集」という言葉を聞いて、どちらが将来的に行う業務、期待されるスキルが想像しやすいかと考えるとよくわかります。
公認会計士の仕事は、独占業務である監査業務をはじめ、MAS監査(コンサルティング)、また税理士登録しての税務などがあります。「会計士募集」だけでは、その人が入所後、おもに何の業務を担当するのかわかりにくいところがあります
一方、「税理士募集」という広告の場合、法人税・所得税と資産税といった税目や、付加価値業務の違いはあるものの、主として申告業務などの税務を担当するのであろう、と想像しやすいのではないでしょうか。
では、扱う業務が一言ではわかりにくい公認会計士の方が、雇用のミスマッチが多く、税理士の方がそのリスクが少ないのかというと、必ずしもそうではないのがまた難しいところです。
会計士は、もともと監査法人やコンサルティング会社に雇用された状態で働く人が多い職業です。一般企業での「企業内会計士」という働き方も認知されつつあります。雇用する側は、今までも新卒・転職組含め多数の雇用を行っている場合が多いため、多少のミスマッチはリスクとして織り込んでいる面があります。また、求人広告でも、ミスマッチを最小限にするため、あらかじめ伝えておきたい事業内容を詳しく説明する傾向があります。
一方税理士事務所は、組織的にも、所長のマインドとしても、開業当初の個人事務所の雰囲気を残しているところが多く、雇用や人事に慣れていない場合があります。時には、転職者に対し求人では告知していない理不尽な期待をしたために、所長と転職者双方に不満が出ることもあります。
雇用のミスマッチの原因には、求められるスキルの思い違いのほかに、「期待」という人間の主観が挙げられます。労使双方にとって不幸なミスマッチを避けるため、募集する側が業務内容についての詳細な説明を行うこと、また転職を考える税理士・会計士が、求人している事務所が何を求めているかを見極めるための情報収集をしっかり行うことが重要となってくるのです。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。