2013.11.23
開業税理士の広告営業、また勤務税理士の転職時の「市場価値」を高めるための方策として、税理士業務に関連する他資格を取得する、いわゆる「ダブルライセンス」に注目する方は多いと思います。
資格には、法的な独占業務があるものと、独占業務がなく、資格保持者であることを肩書きとして自称できる、いわゆる「名称独占」資格があります。目的意識をはっきりと持ち、必要なのが独占業務なのか名称なのかを見極めることが必要になります。
例えば、税理士であれば行政書士に登録することで、無試験でダブルライセンス保持者になれるのはご存知だと思います。行政書士には独占業務があるので、登録すれば業務の範囲は広がることになります。
しかし、行政書士は一般の方々に業務内容がわかりにくく、名称としての訴求力はそれほど期待できません。実際に行政書士に登録する税理士は、定款認証や各種許認可など、関与先に具体的な行政書士業務のニーズがある方が多いようです。勤務税理士が所長の指示で登録し、事務所で会費を負担するといった例も見られます。
他に独占業務が、税理士業務と非常に親和性の高い資格には、会社であれば必ず需要のある社保、労保業務等を行う社会保険労務士、会社設立や組織変更の際の登記ができる司法書士などがあります。
また、相続・事業承継ニーズの高まりから不動産系の資格にも注目が集まりそうです。相続時や任意売却時の不動産の評価を行う不動産鑑定士、あるいは所有権移転や抵当権設定など、不動産登記を行う司法書士の資格は強力です。
既に税理士としての業務内容が定着し、アピール力を高める目的で資格を取るのであれば、独占業務の有無よりも、名称的な効果が高いものがよいでしょう。代表的なものには、中小企業診断士とFPがあります。中小企業診断士はその名のとおり経営コンサルタント的な能力、またFPはどちらかというと個人資産家への訴求力が期待できます。
独占業務はあるものの、名称独占的な使われ方をする資格もあります。不動産資格の登竜門「宅地建物取引主任者(宅建)」です。本来の独占業務は、不動産業の店舗で、顧客へ物件の説明等ですが、士業の方が名乗る目的は、不動産関連の法制や業界への興味、最低限の知識があるということを端的に示すことだと思います。
そして、税理士のダブルライセンスの対象としてもう一つ挙げるとIT関係です。シスアドやITコーディネーターなどシステム管理系、MCPなどマイクロソフト系、CCNA、CCNPなどネットワーク系の資格は、専業のシステム担当者が自社にいない中小企業には魅力的に映るでしょう。
税理士としてプライドを持ち、一生の職業とすることを心に期している人にとって、ダブルライセンスは、あくまで会計人としての活動を充実させるためのものです。せっかく難関資格に時間をかけて挑戦するのならば、10年後、20年後に、どのような職業人になっていたいか、というイメージに合うものを選びたいものです。
(文:VRPスタッフ)
大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。