この原稿を執筆しているのは6月ですが、生命保険会社のアクチュアリー、特に、商品開発等でプライシングに従事しているアクチュアリーにとっては重要な月です。
そう、6月は社会医療診療行為別調査の調査月ですね。
以下において、特に、アクチュアリー採用された新入職員向けに、公的データのうち有用と思われるものを列挙してみたいと思います。
1.死亡率
公的データとしては、完全生命表、簡易生命表などがあります。
このうち、5年に一度行われる国勢調査による日本人人口(確定数)、人口動態統計(確定数)をもとに、精緻なデータ及び計算方法により5年ごとに作成しているものが『完全生命表』です。この国勢調査ですが、西暦でみた場合、末尾が5の倍数の年に実施されているのも特徴です。特に、2010年の国勢調査に基づくものが『第21回生命表』となりますので、西暦2010のゼロを省いた『21』と『回数』が一致していますね。
したがって、『2010年=第21回』と対応づければ覚えやすいかもしれません。
一方、推計人口による日本人人口、人口動態統計(概数)をもとに、死亡率を除いて完全生命表とほぼ同様の方法により毎年作成しているのが、『簡易生命表』です。
なお、『完全生命表』および『簡易生命表』とも、厚生労働省の人口動態調査と呼ばれる統計調査に含まれますが、この人口動態調査には、死因別の死亡率統計が含まれており、この統計に基づき、3大疾病(重度疾病)保険の保険料計算に必要な多重脱退表が作成されることもあります。
また、生命表の発表時期について、例えば、第21回生命表は、平成24年5月31日に公表されていますので完全生命表は翌々年の5月末頃に、また、平成27年簡易生命表は2016年7月27日 に公表されていますので、簡易生命表は翌年の7月末頃に、それぞれ公表されると覚えておけば遅滞なくデータ捕捉できるでしょう。
2.入院率
患者調査は最も信頼できる公的データですが、例えば、直近の平成26年患者調査、
(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001141598)では、閲覧表の『6-1 推計患者数,性・年齢階級 × 傷病小分類 × 施設の種類・入院-外来の種別別(総数)』の746行目に『新入院』の患者数が掲載されておりますので、これを365倍して年換算したものを人口で割れば、入院率が計算されます。
なお、最近では、レセプトデータを集計したものを有料で取り扱う会社も登場しておりますので、場合によっては、そちらのデータの方が実態に沿ったものかもしれません。
3.手術率
手術率については、少なくとも2種類の公的データがあります。それは、上述の患者調査と社会医療診療行為別調査です。
このうち、直近の患者調査では、閲覧表のうち『62 推計退院患者数,手術の有無・手術名 × 傷病分類 × 病院-一般診療所別 』において、手術の有無が表示されておりますので、当該患者数を人口で割れば、年齢階級別の手術率が計算できます。
もう1つの公的データである社会医療診療行為別調査では、手術の件数が開示されておりますが、残念ながら性別が合算されたデータになっています。
通常、生命保険会社の医療保険等において手術発生率は男女別料率になっていますので、このままでは使えないかもしれません。
いずれにせよ、少なくとも手術率のトレンド等を伺い知るうえでは貴重な公的データであることには間違いありません。
いかがでしたか?
上記の公的データは、いずれもアクチュアリーにとって非常に大切なデータ群となりますので、是非、その内容を理解しておきたいところですね。
(ペンネーム:活用算方)