アクチュアリー試験講評(2024年度 年金2編)


2024年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会のホームページで公開されました。長い勉強期間を経て挑んだ試験、まずはお疲れさまでした!「年金2」は幅広い知識と深い理解が求められる難関科目ですが、しっかり対策をすれば結果が出やすい科目でもあります。本記事では、この試験のポイントを振り返りながら、次回以降の学習に役立つヒントをお届けします。

1.問題数と全体の難易度

問題数や配点は昨年とほぼ同じであったため、大きく戸惑うことは少なかったかもしれません。昨年と比べて国際会計基準に関する問題が激減し、代わりに国内会計基準の問題が増えていました。この点だけは少し傾向が変わったように思います。
所見問題でも、例年通りDBからの出題が1つ、公的年金からの出題が1つということで、想定通りだったのではないかと思います。(1)の方が比較的書きやすいかなと思いますので、(1)をしっかり書き上げて(2)でどこまで書けたかが合否の分かれ目になったのではないかと思います。

2.各問題の分析と講評

問題1(1)
講評:最初は正誤問題です。年金1と違っていろんな領域から出題されています。全て基本的な問題なので、難しくないと思います。
アは他制度掛金相当額に関する問題ですね。年金1でもそうですが、今年の時事問題ですね。内容としてはそんなに難しくありません。あまり勉強できていなくても読んで意味を考えればある程度わかるような問題です。

問題1(2)
講評:給付減額と最低保全給付に関する内容です。条文からの出題で基本事項を問う問題ですが、1カ所の穴がやや広いですね。穴埋め問題を単語レベルで対策していた受験生は戸惑ったかもしれませんが、時々出題されますので注意が必要です。

問題1(3)
講評:退職給付会計における予想昇給率に関する問題です。世の中が賃上げムードになってきているため、ベースアップに関する内容を出題したという感じでしょうか。穴が開いている部分は基本事項なので問題なかったと思います。

問題1(4)
講評:公的年金に関する問題です。財政検証レポートからの穴埋め問題ですが、公的年金に関してしっかり勉強している受験生はレポートに記載されているというよりは基本事項だと思います。

問題2(1)
講評:DBに関する簡記問題です。何の変哲もない問題です。完璧に書いて差し上げましょう。

問題2(2)
講評:国内会計基準に関する簡記問題です。複数事業主の場合についてもしっかりと押さえられていましたか。アは、基本問題ですし、5つある中の3つを書けば良いということで難易度を下げてくれています。イは開示の問題なので、もしかしたら何のことを指しているかわからなかった受験生もいたかもしれません。

問題2(3)
講評:DBに関する簡記問題です。積立金が積立上限額を超えた場合に控除する掛金に関する内容です。アイいずれも特に何の捻りもありませんので、素直に解答できたのではないかと思います。

問題2(4)
講評:国内会計基準に関する簡記問題です。適用指針のどの部分を問われているかさえわかれば問題なく解答できたのではないかと思います。

問題2(5)
講評:DBに関する簡記問題です。「確定給付企業年金の財政計算等に係る特例的扱いについて」という通知は、結構細かい内容が多いので身構えた受験生も多かったかもしれませんが、今回出題された内容は、そんなに難しいものではありませんでした。

問題3
講評:DBの給付増額時の掛金計算に関する問題です。特に特殊な問題設定はなく、新財政基準の決算や再計算の基本を理解していれば問題なく解答できたのではないかと思います。実務で携わっている受験生は、対策なしでも解けるレベルでしょう。(4)だけは、他制度掛金相当額の導入により新しく出てきた留意点ですので、DBの給付増額とDCの関係がわかっていない受験生には難しかったと思います。

問題4(1)
講評:別途積立金の活用に関する問題です。過去に類似の問題が出題されており定番の問題ですが、今年は運用環境が良かったので、ある意味時事問題かもしれません。予想していた受験生もいるのではないでしょうか。実務で実際に別途積立金の活用方法を企業から相談されることも十分に考えられます。
解答にあたっては、方策を挙げ、目的・効果・留意事項を書くように設問に記載されていますので、そんなに悩むことはなかったのではないでしょうか。

問題4(2)
講評:令和元年財政検証で公表された「生年度別に見た年金受給後の年金額の見通し」からの出題です。表が多く、読むのが大変に感じた受験生もいたかもしれません。ただし、問題の趣旨を正しく理解すれば、表の細かい内容を確認しなくても解答できることがわかったはずです。「生年度別に見た年金受給後の年金額の見通し」を見ていない受験生は表を読まないといけないと思ったかもしれません。問題自体は、所得代替率や財政検証に用いられているモデル年金の意味が理解できていれば解答できたでしょう。

3.次回以降に向けたアドバイス

いかがでしたでしょうか。第Ⅰ部では、法令・会計基準・数理実務ガイダンス・財政検証レポートなどの理解・暗記が基本です。年金1と違って決まった範囲以外からの出題はほとんどありませんが、法令改正・制度改正は出題されやすいのでそれにどれだけ対応できるかが、合否を分ける鍵となります。第Ⅱ部の対策としては、時事問題が出題されやすい傾向にありますが、定番の問題も多いです。試験までにどれだけ準備ができるかの勝負となります。
年金2は、勉強した分だけ結果が出やすく、報われやすい試験だと思いますので、やるべきことを一つひとつ潰していくことが合格への近道だと思います。

 

ペンネーム:mizuki

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