プロフィール
青山 一基(あおやま・かずき)さん
大学院卒業後、国内生保、欧州系生保、独立系生保において、決算、リスク管理、数理プロジェクションシステムの開発・保守等の業務に従事。2022年にCLIMBアクチュアリーオフィス合同会社を設立。
日本アクチュアリー会 正会員。日本証券アナリスト協会 検定会員。
【What’s CLIMBアクチュアリーオフィス合同会社】
青山氏が2022年に立ち上げ、保険会社のアクチュアリー業務のサポートを行うサービスを提供する。保険会社(主に生保)のアクチュアリー部門での実務経験および業務効率化に関するノウハウをもとに、丁寧なコミュニケーションを大事にし、適切な提案とサポートを行なっている。
アクチュアリーを目指してから今に至るまでの道のりを教えてください
アクチュアリーという職を知ったのは大学1年のとき。大学の先輩から紹介された、日本の将来人口推計を作成している国立社会保障人口問題研究所の研究員のアシスタントのアルバイトをしているときです。私がお世話になっていた研究員の方が公的年金のマクロ経済モデルの研究をしていたので当然アクチュアリーという職をご存知で、私に「数学を専攻しているならそれを活かせるアクチュアリーになってみたらどうか」とアドバイスをくれたのがきっかけです。民間の企業に数学を活かした道があると思ってなかったので面白いなと感じてアクチュアリーを目指し始めました。でも当時はまだ大学生は受験できなかったので、すぐに試験を受けることはできず。実際に試験を受け始めたのは大学院に入ってからです。
大学院卒業後は、国内生保、外資系生保、独立系生保と転職をして2022年の8月にサラリーマンを辞めて、フリーランスとして保険会社から業務委託を受けるという形でアクチュアリー業務をしています。
アクチュアリーで独立を目指し始めたのはいつ頃ですか?
私が独立するちょうど1年前に当時働いていた会社の同僚が独立したんです。その彼が業務委託でアクチュアリーの仕事を受けていて、「こんな働き方がるのか!」とまさに目からウロコでした。そのときから自分のキャリアの中に独立という道も一つの選択肢として意識するようになりました。
在職中から独立に向けて何か行なっていましたか?
特に特別なことはしていません。独立したらまずは法人を作ろうとは思っていたので、法人の作り方を調べたりはしていました。あとはやはり独立したらどこから仕事をとってくるかというのが一番心配だったので、過去にお世話になった同僚や上司が今どのような会社にいて、どれくらいの人にコンタクトが取れるのかを洗い出したりしていました。
独立に不安はありませんでしたか
2025年度に導入が予定されている経済価値ベースのソルベンシー規制への対応等で保険会社のアクチュアリーの業務量が増えていると感じており、保険会社のリソース不足のソリューションとして業務委託というのは可能性がありそうだと感じていたので大きな不安はありませんでした。
それとアクチュアリー最大のメリットだと思うんですけど、最悪、独立してうまくいかなかったとしてもアクチュアリー資格と一定の経験があれば再就職できるんです(笑)。なので気負わず、とりあえず1年やってみようという気持ちで始めました。
でも、まず最初の1件目の仕事がいつ取れるかどうかというのが全くわからなかったのでそこは心配ではありました。
個人でアクチュアリーをしていて大変なことはありますか
サラリーマン時代は生命保険会社しか経験してこなかったのですが、現在は、主に生命保険会社でお仕事をしつつも損害保険会社や少額短期保険会社などの業務もお受けしています。業務の中で、自分に経験や知識のない分野にぶつかった際に、共に働く先輩や上司がいないので教えてもらえる人がいないというのは難しい部分ですね。
そういうときは自分で調べたり、知人の中に有識者がいたら聞いてみたり、それでも難しいときは、依頼主の不利益にならないよう現状を告げるという判断も必要だと思っています。
でも、得意分野だけでなく未経験分野にも一歩足を踏み入れることで業務の幅が広がり成長にも繋がっているので、多少は未経験の部分にも意識的にチャレンジするようにしています。
今後独立を考えている人へアドバイスをお願いします
現在働いている会社で、同僚や上司など周囲の人との関係を良くして、信頼されるような働き方をしておくことだと思います。現在いただいている仕事の大部分は、一緒に仕事をしたことがある人もしくはその人の紹介がほとんどです。いくら資格や経歴がすばらしくても、最終的には「青山なら業務委託しても任せられる」と思ってもらえないと、仕事にはつながりません。そのためには独立する前から信頼できる人だと思ってもらえる働き方をしていくことが重要だと思います。
今になって思うと、サラリーマン時代に上司や他部署から相談された仕事に対して協力的にこなしていた姿勢がいいように働いたと思います。
今後のアクチュアリー業界はどうなっていくと思いますか
世の中の働き方が多様化していく中で、アクチュアリーの独立が今後どれくらい増えていくかは正直わからない部分ではありますが、今でも私含めて独立するアクチュアリーの方が少しずつ出てきているようで、そういう人たちが今後もっと増えてくれると嬉しいなと思います。保険会社はまだまだ個人でやっているアクチュアリーに業務委託をするという発想自体がない会社が多いで、フリーランスのアクチュアリーの人数が増えて事例が増えてきてくれれば、業務を依頼する側の保険会社の理解に繋がってくると思います。
なのでアクチュアリーの中に独立するという選択肢があるということが、もっと広まってくれればいいなと思っています。