8月に引き続き9月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
また、スケジュールの関係で、8月下旬のニュースが含まれている場合がありますことを何卒ご容赦ください。
1.顧客データ不正流用(その1)
いわゆる“個人情報保護”は、業種業態に寄らず重要な順守項目であるところですが、残念ながら、保険契約者情報の漏えいが起こった模様です。
グループ会社間で情報授受とのことですが、ファイヤーウォールを徹底して欲しいですね。
なお、当事者擁護ではありませんが、消費者として、よりよいサービスの案内に繋がるのであれば、何が何でも情報共有が不可とまでは言えないかもしれませんが、確りとルールを守って健全経営に努めることを切に願いたいです。
https://nordot.app/1204743746010103869
2.顧客データ不正流用(その2)
保険と銀行が同一グループで経営されている仕組みは少なくありませんが、預金情報(例.満期など)をお客さまに無断で使用することはご法度です。
もっとも、長らく低金利下で保険営業が非常に厳しいことは容易に想像できるところではありますが。
なお、通報を受けた社外通報窓口は「問題なし」として取り合わなかった点は、兵庫県の一連の事件を彷彿とさせますね。
https://www.asahi.com/articles/ASS9N2HFMS9NULFA004M.html?iref=pc_ss_date_article
3.顧客データ不正流用(その3)
保険に加えて、銀行および証券会社でもお客さまデータの不正共有です。
特に、日本証券業協会から3社に対して過怠金計5億円が科されたようですので、この判断が保険業界にどのように波及するのかが注目されるところですね。
https://www.47news.jp/11500042.html
なお、金融商品取引法が定める「ファイアウオール規制」については、例えば、以下のサイトにある資料が参考になります。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market-system/siryou/20201026/06.pdf
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market-system/siryou/20201026/02.pdf
4.慣行是正と新指針
一連のビッグモーター事件等を踏まえて、代理店出向廃止を含む新たなガイドラインが日本損害保険協会から策定される模様です。
「あしき慣行(=出向者と代理店とのなれ合い)」を是正することで、どこまで業界の信頼回復ができるかが、成功のカギとなる見込みです。
ただし、代理店の業務品質向上に役立つ出向等、一部の出向は容認されるとのことですので、くれぐれも“抜け穴”にならないことを祈りたいですね。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024091201139&g=eco
5.金利上昇リスク
急激な金利上昇による外債投資(含み損)をカバーするために、1兆円を超える巨額増資が話題の農林中央金庫ですが、9月末付けでニュースリリースが出ました。(←当コラム執筆は2024年9月26日(木)17時過ぎですが、現時点で既に以下のURLで9月30日のリリースが閲覧できました!先日付の意図は不明ですが、関係者を1日でも早く安心して欲しいという切実な願いが込められているかもしれません)
さて、金利上昇リスクは、農中に限らず我が国の金融機関にとって大打撃となる可能性を十分秘めていますが、8月末に金融庁から公表された『2024事務年度の金融行政方針』では、3つの『上昇』、すなわち、金利上昇、物価上昇および保険料上昇の観点から今後の行政の在り方について滔々(とうとう)と描かれています。
噂では、グループ傘下の子会社のために、無理な投資に手を出してしまったことへの同情論も少なくないようですが、金融庁に負けないくらいの行政対応を農林水産省に強く期待したいところですね。
https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/20240830.html
6.外貨建て保険の手数料改定
10年くらい前に、某週刊誌で銀行窓販に関する苦情記事を見た記憶があるのですが、その際、「定期預金1000万円を変額年金保険の一時払(営業)保険料に充当し、なんと当該保険料の7%を銀行が販売手数料として収受する」という、なんとも羨ましい限りの高水準でした。
一方、銀行の住宅ローンに付帯される火災保険では、一括払保険料40万円に対して、その3割程度が、やはり販売手数料として銀行に入るようで、某行員が、“カウンター業務に従事する派遣行員の1か月分の給料を1件の火災保険手数料で賄える!”と豪語されていたのも記憶に新しいところです。
このような環境下で、いわゆる“(早期の)乗換え募集”について、初年度手数料の高さ等が当該販売の促進材料となり、また、解約に関する諸費用がお客さまの利益を損ねていると金融庁が問題視されている模様です。
以前、保険商品審査事例集でも記載されていましたが、MVA(市場価格調整)の「タイムラグ・マージン」をゼロにする動きがあり、金融庁からも好評を得ていましたが、契約者保護の精神を逸脱することのないよう、業界全体を挙げた取り組みが大いに期待されますね。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-27/SISQ31T0G1KW00
7.フィールドテスト
いよいよ、経済価値ベースのソルベンシー規制導入が近づいて来ましたが、保険会社においては、コンサルティング業者等を含めて懸命な対応が続いているものと思われます。
ここ最近、FT(フィールドテスト)が毎年実施されていますが、当該テストの仕様書及びexcelテンプレートも公開されています。
具体的な数値が埋まらなければ、テンプレートを完全に理解することは難しいかもしれませんが、アクチュアリー試験対策も含めて、当該規制に直接関与されない場合でも、アクチュアリーとしての教養の面からも、全員がレベルアップする必要がありそうですね。(←かく言う筆者も、具体的な計算は部下に一任していますので、本腰を入れて、仕様書及びテンプレートをじっくりと眺める日々を過ごしています。)
https://www.fsa.go.jp/policy/economic_value-based_solvency/index.html
8.アンケート調査
障がい者等への配慮取組みに関するアンケート調査結果(生保42社、損保33社および少短120者を対象)が金融庁から公表されました。
なお、少短(=少額短期保険業者)は、表示末尾が(会社ではなく)業者のため、数え方も「120者(←社ではない!)」となっている点が特徴的です。
具体的なアンケート項目は、
1.自筆困難者の方への代筆に関する内部規定の整備状況について
2.視覚障がい者の方への代読に関する内部規定の整備状況について
3.聴覚障がい者への対応に係る手続に関する内部規定の整備状況について
4.知的・精神・発達障がい者への対応に関する内部規定の整備状況について
でして、保険サービスの普及に各社がより一層の取り組みをされていることが伺えますね。
https://www.fsa.go.jp/news/r6/hoken/20240906/20240906.html
近年、就労支援A型事業所の閉鎖や倒産が増加しているようでして、一見、障がい者支援が後退している感がありますが、実は、当該事業所による不正受給が問題であり、是正措置を講じた結果との見方もあるようです。
https://kaisyuf.jp/2024/09/05/kfcolumn0070/
9.最低賃金と人口流出問題
都市部と地方の格差は可及的速やかに解消すべき国の課題の1つですが、952円を1500円に引き上げるよう、地方労働団体が求めた模様です。
物価高に賃上げが追いついていない面もあるため、単に、都市部との賃金格差というだけでなく、人口流出しなくとも地域住民にとっては死活問題と言えるかもしれません。
https://news.infoseek.co.jp/article/kyodo_1217373351208485008/
10.ブラックインターン!?
アクチュアリー就活の一環として、夏休み等を活用した“インターン・シップ”が行われているようですが、“学生を安価で働かせる”という何とも嘆かわしい「ブラックインターン」が登場した模様です。
なお、2025年卒学生のインターンについては、仕事体験の参加率は85.7%、企業のインターン実施率は61.3%で、いずれも過去最高となり、かつ、「5日間以上、かつ、一定の基準を満たすインターン」で取得した学生情報を採用活動で使用可能とされたようですので、ますます、採用側による“囲い込み”が加速しそうですね。
もちろん、インターンという名目の下、低賃金で長期間働かせることは決して許されるものではありません。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/091900213/
いかがでしたか。今月は、石川県の豪雨被害、政治的イベント(総裁・党首選挙)および再審無罪判決など、例月以上に目立つイベントが多い月だった印象があります。人災を最小限に抑えることは言うまでもありませんが、自然災害が少しでも減少することを期待したいですね。
(ペンネーム:活用算方)