おかげさまで、前回のコラム「これから生保数理を勉強される方々へ」が高評価をいただきまして、2023年7月6日時点で第7位にランキングされています。
そこで、今回のコラムでは、生保二次(生保1,生保2)をこれから勉強しようとされる方々に向けて、参考となる情報を幾つかご紹介することといたします。
1.過去問を見ながら教科書を読む
第1次試験(基礎科目)に比べると第2次試験(専門科目)の教科書はページが大量であり、初めて教科書を読まれる方は、教科書を読み終えるだけで1年近くかかってしまうといっても過言ではありません。
このため、自分に合った効率的な“教科書の読み方”を探る必要があります。
そこで、お勧めしたいのが、“過去問を見ながら教科書を読む”というものです。もっと正確に言うと、「まったく教科書を読んだことがない受験生」が、「いきなり過去問の公式解答」を読みながら、「教科書の該当箇所」を探していくという方法です。
言うまでもなく、この方法をマスターするためには、それなりの時間を要するため、慣れないうちは途中で断念したくなるかもしれません。
しかし、過去問の公式解答は、試験委員からの貴重なメッセージが含まれることもあり、また、そもそもアクチュアリー実務を遂行し、問題解決能力を試すために作成された問題である点を考慮すれば、教科書を1から読み始めるよりも、遥かに効果的な学習スタイルが構築されるように思います。
そのうち、教科書を単なる『辞書』として活用できるレベルに到達できれば、間違いなく合格レベルと言えるでしょう。
2.暗記テクニック
筆者が大学受験勉強をしていた30年以上前、なかなか「暗記科目」を突破することができず苦しんでいたのですが、ふと目にした新聞広告で、渡辺剛彰先生の記憶術の書籍を目にしました。
早速、親に購入を迫ったところ、快くOKしてくださり、到着を心待ちにしていましたが、実際に届いたのは、書籍のみならず音声データ(←カセットテープ!)が何個か同封されていましたので、ラジカセ(!)で何度も繰り返して聴きました。
特に、興味深かったのは“すずなり式記憶術”と呼ばれるもので、1つ目の情報から次々と、それに続く情報を引き出すというものでした。
幸い、渡辺先生の書籍は現在も販売中ですので、興味のある方は購入されるとよいでしょう。
なお、先生の記憶術を含めた「記憶術大辞典」という面白そうなサイトがありますので、併せてご確認頂ければ幸いです。
3.計算問題を万全に
第2次試験(専門科目)においても、最近は計算問題が出題されることが多いため、配点が大きくなくても確実に解けるように準備されるとよいでしょう。
特に、旧制度である平成11年以前の問題のうち、計算問題だけでもピックアップしておけば、計算力の強化に加えて知識量も拡大できるように思います。
なお、生保1の教科書『第7章 医療保険』が改定され、継続関数が消えてしまいましたが、実務に直結した計算問題である『平成11年度の保険1(生保)問題1(1)』も解かれることを強くお勧めします。
4.時事ネタの見つけ方
第Ⅱ部(論述問題)、いわゆる『所見問題』では、その時々で業界が抱える共通の悩みなどの『時事ネタ』が出題されることが多く、受験生の間では、この時事ネタを如何にして効率よく見つけられるか?という点に関心が高いようです。
時事ネタを見つける方法として、幸い、公私共々非常にお世話になった先輩アクチュアリーである坂本嘉輝氏からお伺いしたエピソードをご紹介しましょう。
具体的には、保険研究所から刊行されている『インシュアランス生命保険統計号』の「(最近5年間)事業概況」を過去10年分くらい集めて、毎日読み続けるという方法が極めて効果的であることを、筆者が受験生時代に痛感しました。
また、正会員になれた後も、当該資料には「英語訳」も付されていますので、特に、外資系保険会社に転職した際にも、大変役に立ちました。
保険会社にお勤めの場合、恐らく、会社の書棚に各年1冊ずつは保管されていると思いますので、適宜ご覧いただければと思います。
5.「足きり(=最低ライン)」に注意
第2次試験(専門科目)の出題形式は、第Ⅰ部(知識問題)および第Ⅱ部(論述問題)の2部構成ですが、それぞれ最低ライン、いわゆる「足きり」が導入されています。
具体的には、第Ⅰ部は満点の60%、第Ⅱ部は満点の40%を基準として試験委員会が相当と認めた得点を下回った場合は不合格となるようです。
今のところ、第Ⅰ部および第Ⅱ部とも50点満点で出題されていますので、特に、第Ⅱ部では、20点(=50点×40%)以上をとる必要があります。
なお、科目全体では100点中60%が合格ラインになることが一般的ですので、逆算すれば、第Ⅰ部では、40点(=100点×60%-20点)を超える点数をとったとしても、合否に影響がないと解釈できるかもしれませんね。
6.全く同じ問題が出ることも
第1次試験(基礎科目)においては、例えば、平成5年度(保険数学2)問題1(4)と平成8年度(保険数学2)問題1(5)とは(解答の選択肢は異なりますが)全く同じ問題です。
第2次試験(専門科目)においても、例えば、2018年度(生保2)問題2(2)と平成20年度(生保2)問題2(2)とは(問題番号まで)全く同じ問題です。
このように、第2次試験でも過去問と(全く)同じ問題が出題されますので、やはり、過去問を徹底的に繰り返し学習することが合格への近道と言えるでしょう。
7.実務をイメージ
資格試験要領に明記されている通り、第2次試験(専門科目)では、「専門的知識」を有するかという点に加え、「(具体的な)問題解決能力」も有するかという点も問われます。
このため、教科書や過去問の公式解答をひたすら『丸暗記』するだけでは、なかなか合格点に届かないという事象がみられます。
当該事象を克服するためには、そもそもの「問題解決能力」を生保実務でどのように活かすのかという実務的な背景などの正しい理解を伴う必要がありますので、異業種や学生の方々にとって、所見問題が攻略し難い点は、まさにそこにあります。
したがって、可能な限り、保険会社での実務を具体的にイメージしながら教科書や公式解答を読む習慣をつけることが合格への近道と言えるでしょう。
とはいうものの、実務経験がなければ、「実務を具体的にイメージ」することに限界があるでしょうから、その場合、専用サイト(例.アクチュアリー受験研究会など)や、有料講座(例.シグマベイスキャピタルなど)の利活用も検討されるとよいでしょう。
いかがでしたか。いよいよ7月が到来しますが、受験生にとっては、まず、資格試験要領にしっかりと目を通した上で、半年後に迫る試験本番までの学習スケジュールを、ムリ・ムダ・ムラのないように再構築するところからスタートしてもよいかもしれません。
いずれにせよ、今回のコラムが受験生の方々にとっての一助となれば幸いです。
(ペンネーム:活用算方)