これから生保数理を勉強される方々へ


2023事業年度がスタートしましたが、アクチュアリー正会員を目指す方々にとって、5月病を跳ね返す時期に突入した頃かもしれませんね。
そこで、今回のコラムでは、日本アクチュアリー会正会員を目指される受験生の皆様に向けて、その基礎と言うべき「生保数理」をこれから学習される方々に向けて、幾つかの注意点を列挙したいと思います。

1.教科書を読む順序

生保数理を攻略する場合、日本アクチュアリー会が指定する教科書『生命保険数学 二見隆著(日本アクチュアリー会)』(以下、「教科書」という。)のうち、『営業保険料』、『責任準備金』、『連生保険』および『就業不能保障保険(多重脱退表)』は、絶対に外せない論点ですね。
特に、営業保険料に特化した場合、教科書では『第1章 予定利率)』、『第2章 予定死亡率』、『第4章 純保険料』および『第7章 営業保険料(予定事業費)』の順番に読み進めることが、基本中の基本ですね。

2.読まなくてよい章

教科書の第6章「計算基礎の変更」は、全く読む必要はありません。
実際、同章にある「定理」を用いなくとも大小判定について、別の章における議論で十分に対処できるためです。
ただし、同章にある「定理」においては、例えは、代数方程式の解(根)の公式の存在有無に関する事実で有名な、N. H. Abelなど、著名な数学者にとってもなじみ深い定理が生保数理の教科書に登場する点に、学術科目としての「生保数理」の存在意義が大いに目立つ感じがします。

3.重要・頻出公式を丸暗記

少なくとも、以下の公式は超重要かつ頻出公式ですので、是非、丸暗記しておきたいところですね。余力があれば、その公式の導出過程なども、併せて暗記されておけば、大問の穴埋め対策としても極めて有効と思われます。
教科書(上巻)57ページ(2.4.12):死力と生存確率との関係
教科書(上巻)127ページ(4.9.4):養老保険の一時払純保険料と生命年金現価
教科書(上巻)178ページ(5.3.7):養老保険の責任準備金と生命年金現価

4.練習問題(特に、計算問題)

2022年度の資格試験要領によれば、生保数理の教科書の練習問題のうち、試験範囲の同問題は280問程度あります。
つまり、1日1問のペースで学習すれば、1年間で十分に合格レベルに到達できることを暗示しているように見えます。
アクチュアリー試験に限らず、資格試験においては、結局、日々地道に学習される受験生が最短コースで合格されることに変わりはないようですね。

5.等式と近似式

生保数理の教科書(上巻)91ページ(3.2.11)は近似式ですが、教科書には当該公式(=絶対脱退率から(絶対ではない))脱退率を求める公式が紹介されていないことから、脱退率から絶対脱退率を求める問題の場合、当該公式を用いれば正解となります。
ただし、あくまでも「近似式」に過ぎないため、当該公式を用いたからといって、必ずしも正解にたどり着く保証はないという点にも注意された方がよいように思えます。

例えば、H27問題1(7)では、当該公式を駆使することで、2通りの正解(I)(J)が導かれます。(←公式解答では(I)が正解となっていますが、教科書(下巻)154ページ(13.1.4)などを用いれば、(J)も正解です。

6.参考書を読まない

資格試験要領に明記されている通り、少なくとも、第1次試験(基礎科目)の出題範囲は「教科書」に限定されていますので、たとえ、同要領に掲載されている「参考書」であっても、正会員になるまでは一切、目を通す必要はありません。効率よく、受験勉強時間に注力された方がよいように思います。。

7.関連書籍を読まない(ただし例外あり)

アクチュアリー資格の浸透に伴い、巷の書籍としては、数学や生保数理の書籍が多数刊行されています。
しかし、正会員になるまでは、教科書および過去問“だけ”で十分合格できますので、あまりわき目を振らずに、基本に忠実に学習された方が結局は近道のように思えます。
ただし、アクチュアリー受験研究会から刊行された『ストラテジー・シリーズ』は、アクチュアリー試験対策として、極めて有効な書籍ですので、是非、お手元に置かれて学習されることを、強くおススメいたします。

8.過去問

日本アクチュアリー会ホームページでは、「ホーム」-「資格試験過去問題集」に辿っていただければ、昭和37年以降の過去問が閲覧できます。
実は、注意深く同ホームページを探せば、昭和36年以前の過去問にも辿り着けますので、余力があれば、是非チャレンジしたいですね。(https://www.vrp-p.jp/acpedia/2307/

9.ゴシック体

教科書では“ゴシック体で書かれた重要語句”が多数ありますので、初めて教科書を読まれる際には、これらの“ゴシック体で書かれた重要語句”から理解するように努められると合格への最短距離が得られるものと思われます。

10.生命表と残存表

例えば、教科書(下巻)152ページの「死亡・就業不能脱退残存表」および教科書(下巻)155ページの「就業不能者生命表」のように、生保数理では、生命表と残存表の使い分けが合否の分かれ目になります。
その意味では、教科書(上巻)の『第3章 多重脱退表』は、重要な位置づけとも言えるでしょう。

いかがでしたか。新型コロナウイルスも、無事に「第5類」に分類され、コロナ禍前の生活に戻りつつありますね。先行きが不透明なこの時代であるからこそ、リスク管理を含めたERM経営が益々重要になっているように思えます。

 

(ペンネーム:活用算方)

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