7月に引き続き8月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
1.前年比12倍の入院給付金支払
生命保険協会が公表した、『5.5、53.1、640.3(億円)』という3つの数字に衝撃を受けた業界関係者も少なくないかもしれません。それぞれ6月の新型コロナによる入院給付金の支払額(2020~2022年)です。
特に、2022年6月においては、前年同月の12倍に跳ね上がりましたが、ほとんどが病院以外の自宅などで療養する「みなし入院」への支払いだった模様です。
通常、保険会社の普通保険約款に定める「入院」とは、病院や診療所の病床を想定していますが、医師の管理下におかれた状況では、“野戦病院”のような状況であっても、「入院」とみなされることもあるようで、「病院以外の自宅などで療養」も約款上の「入院」に該当するものと思われます。
後述の通り、一部の請求においては「不正」が疑われるケースも多発しているようで、 “入院保険に多数加入し、毎週PCR検査を受診して入院給付金を狙う”という類の“つぶやき”なども、急増する給付金支払いの要因になっている可能性も否定できません。
なお、生命保険協会資料『2021年版生命保険の動向』23ページ(資料上は20ページ)によれば、2020年度に支払われた入院給付金は7,021億円でしたので、単純計算すると、毎月585億円(≒7,021億円÷12か月)の支払いがあったことに相当します。
今回のニュースは、新型コロナウイルス感染症に特化した数値ですので、同ウイルス以外による入院給付金支払に匹敵するくらいの支払い、つまり、一昨年に比べて2倍以上のペースで今年度の入院給付金支払いが起こる見通しであることを示唆しているようにみえます。
今後、商品改定などとともに、来年3月の決算での“危険準備金Ⅳの取崩し”など、保険会社の財務内容にも大いに注目されますね。
2.新型コロナ保険の“不正請求”
上記の結果を踏まえて、新型コロナ保険について、営業保険料の引上げや販売停止など、保険業界では様々な対応が余儀なくされていますが、入院給付金の上限金額を引き下げたうえで、当面の間、自発的加入の申込受付を停止する保険会社が登場しました。
理由は、不正請求が疑われるケースが増えているためとのことですが、具体的な不正請求事例としては、発熱などの自覚症状があった直後や濃厚接触者と判断された直後に、そのことを伝えずに高額の保険に加入して、すぐに請求するというケースが多発している模様ですので、“告知義務違反”のような取り扱いと言えるのかもしれません。
https://news.ntv.co.jp/category/economy/bb061f5037824fb7a299b1de9118f97f
3.新型コロナとキャンセル保険
新型コロナの蔓延は、様々な方面で新規ビジネス展開を誘引しているように思えますが、旅の“キャンセル保険”が急増している模様です。
https://www.fnn.jp/articles/-/403901
具体的には、急な発熱などで予定していた旅行をキャンセルにした場合にかかる『キャンセル料』を全額補償してくれる保険が大人気のようです。
なお、類似の保険としては、少額短期保険業者である“チケットガード少額短期保険株式会社”が提供する『チケットガード』というものもありますが、旅行キャンセル料を補償してくれる保険の登場で、気軽に旅行申し込みができる点で、まさに、顧客本位の保険商品と言えるでしょう。
4.平均寿命、10年ぶり縮む 新型コロナ影響か、厚労省
2021年の日本人の平均寿命は、女性が87.57歳、男性が81.47歳となり、前年比で女性は0.14歳、男性は0.09歳縮んだ模様です。
なお、前年を下回るのは東日本大震災があった2011年以来で、男女とも10年ぶりですが、平均寿命が縮んだ原因は、新型コロナウイルス流行の影響とみられます。
また、東日本大震災とは異なり、同ウイルスの影響は当面の間、継続&悪化が懸念されますので、今後の平均寿命を含めた動きが注目されます。
5.海外の生命保険会社買収
第一生命ホールディングス(HD)さんと言えば、積極的に海外の保険会社を傘下に収める戦略を取っておりますが、今回の決算では、トップラインで国内第1位を奪取されたとのこと、まさに絶好調の業績がとても羨ましい限りです!
監督当局の認可を前提に、来年春までに全株式を9.8億NZドル(約840億円)で取得するとのことですが、安定的成長が見込める市場との判断です。
なお、完全子会社にした豪州と隣接するNZということで、マーケティングなどの面で相乗効果を引き出す計画のようです。
相互会社よりも機動的な出資政策が確保できる点が、株式会社のメリットと言えるのかもしれませんね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB122XS0S2A810C2000000/
6.新本店ビルの建て替え
東京海上ホールディングスは、東京・丸の内で建て替える新本店ビルのデザインを公開した模様です。特に、柱や床に耐火性の高い国産木材をふんだんに使い、環境に配慮して、二酸化炭素(CO2)の排出量が3割程度減らせる取り組みが、非常に高く評価されますね。
東京駅と皇居を結ぶ行幸通りに面し、新しいビルは高さ約100メートル、地上20階建てのようです。
なお、2024年末着工、2028年度完成を目指すようですが、戦後植林された国産材の多くは利用期を迎えているため、これらの利用により、林業再生につながることも期待されています。素晴らしい取り組みであると考えられます。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00110/00320/
7.「こども保険」の導入
「こども保険」と聞くと、“大学入学に向けた貯蓄型保険”や“郵便局の学資保険”などを思い浮かべる保険業界関係者も少なくないと思われますが、今回の「保険」は、子ども関連予算の倍増を狙った、新たな財源確保手段として導入されるものです。
具体的には、企業や国民が負担する社会保険料に一定額を上乗せする仕組みで、以前にも導入が検討された経緯があるようです。
しかし、“応能負担の原則”、つまり、“こどもの有無に関わらず広く保険料を徴収”する点について、「子どもがいない人からも幅広く徴収するため、直接恩恵を受けない人の理解を得られるか?」と疑問が、厚生労働省からも出ている模様です。
なお、参院選直後の記者会見で、総理が少子化対策に言及しなかったため、どこまで“本気”で検討されるのかが注目されますね。
https://www.zaikai.jp/articles/detail/1869
いかがでしたか。新型コロナウイルス感染者数は、依然として高止まりの様相を呈していますが、一方で、保険会社側の対応も微妙に変わってきています。今一度、“被保険利益”とは何か?ということを真剣に議論する機会が訪れているようにも感じる今日この頃です。
(ペンネーム:活用算方)