アクチュアリー試験のうち第2次試験(専門科目)の出題範囲には、保険業法などの法令も含まれます。
このため、例えば、契約者(社員)配当における“公正かつ衡平”(←保険業法第55条の2、同法第114条)や、保険料及び責任準備金の算出方法書の審査基準である“合理的かつ妥当”(←保険業法第5条)というように、“AかつB”という表現をある程度、暗記する必要があります。
そこで、今回のコラムは、保険業法を中心に、“AかつB”という表現(ただし、AおよびBが文章の場合を除く)の例を幾つかご紹介いたしましょう。
1. 保険業法
以下のような表現が登場します。
第1条(目的):保険業を行う者の業務の“健全かつ適切”な運営
第5条(免許審査基準):
保険会社の業務を“健全かつ効率的”に遂行するに足りる財産的基礎
保険会社の業務を“的確、公正かつ効率的”に遂行することができる知識及び経験
保険契約の内容が、保険契約者等にとって“明確かつ平易”に定められた
第54条の3(計算書類等の作成及び保存):
会社の財産及び損益の状況を示すために“必要かつ適当”なもの
第99条:“不特定かつ多数”の者を相手方とする当該業務
第122条の2(指定等):業務を“公正かつ適確”に実施することができるもの
第265条の30(業務規程):資金援助等業務の“適正かつ確実”な運営
第271条の19:経営管理を“的確かつ公正”に遂行することができる知識及び経験
第271条の21の2:保険持株会社グループの業務の“一体的かつ効率的”な運営
附則(平成21年6月24日法律第58号)第21条(検討):
“業態横断的かつ包括的”な紛争解決体制の在り方
特に、業務などを遂行できる知識及び経験については、“的確、公正かつ効率的”と“的確かつ公正”という2つの表現があるのも面白いですね。
なお、保険業法では、「公平」という単語は登場しません。
2.保険業法施行令
以下のような表現が登場します。
第40条(生命保険募集人に係る制限が適用されない場合):
保険募集に係る業務を“的確かつ公正”に遂行する
なお、保険業法施行令でも、「公平」という単語は登場しません。
3.保険業法施行規則
例えば、以下のような表現が登場します。
第10条の2(免許の審査):申請者の業務の“健全かつ適正”な運営を確保するもの
第51条の2(業務の代理又は事務の代行の認可の申請等):
保険会社相互の“公正かつ自由”な競争を阻害するおそれのないもの
第52条の13の15(広告類似行為):“明瞭かつ正確”に表示されているもの
第53条の8(個人顧客情報の安全管理措置等):“必要かつ適切”な措置
第53条の11(委託業務の的確な遂行を確保するための措置):
顧客からの苦情を“適切かつ迅速”に処理する
第54条(特定関係者との間の取引等を行うやむを得ない理由等):
経営の状況を改善する上で“必要かつ不可欠”である
第55条の2(保険業務等に関する苦情処理措置及び紛争解決措置):
業務を“公正かつ的確”に遂行する
特に、保険業法第1条では、“健全かつ適切”とあるのに対して、保険業法施行規則第10条の2では“健全かつ適正”という表現が登場するのも面白いですね。
また、保険業法第271条の19では、“的確かつ公正”とあるのに対して、保険業法施行規則第55条の2では“公正かつ的確”という表現が登場するのも面白いですね。
なお、保険業法施行規則でも、「公平」という単語は登場しません。
4.監督指針
例えば、以下のような表現が登場します。
Ⅰ-1(2) 明確なルールに基づく“透明かつ公正”な行政を確立することを基本
Ⅰ-1(3) 網羅的な検証項目に基づいた“事後的かつ一律”の検証
Ⅰ-1(4) ③ “大局的かつ中長期的”な視点
Ⅰ-1(4) ⑦ 庁内外の様々な主体と“適切かつ密接”に連携
Ⅱ-1-2-1(1) ③ 財務情報その他企業情報を“適正かつ適時”に開示
Ⅱ-1-2-1(2) ④ 法令等遵守に関し、“誠実かつ率先垂範”して取り組み
Ⅱ-1-2-1(2) ⑨ “適切かつ有効”な経営管理を検証
Ⅱ-1-2-1(5) ② 頻度・深度に配慮した“効率的かつ実効性”ある内部監査計画
Ⅱ-1-3(1) 情報の蓄積及び分析を“迅速かつ効率的”に行う
Ⅱ-2-1-3-1(2)④ ア.“合理的かつ客観的根拠”に基づき定められたもの
なお、保険業法などと異なり、監督指針では、「公平」という単語が登場します。具体的には、Ⅰ-1 (4)④において、『各社の状況を踏まえて、公正・公平に業務を遂行』などの部分が該当します。
また、アクチュアリー試験(生保1)H18問題1(1)では、監督指針の「IV-5 保険数理」にある算出方法書の審査上の留意点について、「A=合理的」の場合の「B=妥当以外」の穴埋めをさせています。
(1) 保険料の算出方法は(中略)“合理的かつ妥当”なものか
(4) 予定利率は(中略)“合理的かつ( ③ )”な観点
5.実務基準及び同解説書
例えば、以下のような表現が登場します。
実務基準第24条:アセット・シェアの初期値を“合理的かつ適正”に決定
解説書第23条:その他保険計理人が“合理的かつ適正”であると判断した契約
なお、実務基準及び同解説書では、「公平」という単語は登場しません。
6.日本国憲法
日本国憲法において「かつ」は登場せず、「且つ」という単語が登場します。
ただし、AかつBのような表現ではなく、AおよびBが文章の場合に限られます。
7.余談
今回のコラム作成にあたっては、「かつ」という単語をホームページ及びPDFファイルなどで検索しましたが、特に、WordファイルとPDFファイルとでは検索ルールが異なることをご存じでしょうか?
実は、Wordファイルの場合、検索したい単語が行をまたぐ場合(例.1行目の最後に「か」、2行目の最初に「つ」があるような文章で、「かつ」という単語を検索するなど)でも正しくヒットします。一方、PDFファイルでは、うまくいきません。
なぜ、このような事象が起きるのかは不明ですが、仕事で検索機能を使う場合に注意したいですね。
いかがでしたか。アクチュアリー試験は今年からCBT方式が導入されます。特に、第2次試験(専門科目)では、キーボード入力により答案作成がし易くなったものの、逆に、誤字・脱字(例:“公正かつ衡平”⇒“公正かつ公平”など)の類には十分注意したいですね。
(ペンネーム:活用算方)