3月に引き続き4月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
1.少短の新会社
どちらかと言えば、家財保険など損害保険商品の印象が強い少額短期保険業者ですが、最大手の生命保険会社が少短保険の新会社を設立される模様です。
生損保の双方で保険料を割安に抑えて若年層との接点を確保されるようですので、今後のサービス展開がとても楽しみですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB041KX0U2A400C2000000/
2.最適商品やサービス情報のお届け
大手印刷会社が、属性情報やヘルスケアデータを活用して、最適な商品・サービス情報を届けるサービスを開始された模様です。
生命保険との関連では、東洋美術印刷さんのように、普通保険約款や募集文書などの印刷で常々大変お世話になっておりますので、このようなサービスを通じて、保険商品の販売向上に繋がれば、win-winの関係が構築できますね。
特に、利用者の健康状態をスコアリングし、健康増進を支援する点では、J-scoreのように信用状態のスコアリングと同様、良い意味での顧客の差別化を図る取り組みとして、今後ますます需要が伸びる領域であると考えられます。
https://www.dnp.co.jp/news/detail/10162338_1587.html
3.コロナ保険の苦境?
生命保険において“ニードセールス”といえば、特に、外資系生保が得意としてきた手法ですが、新型コロナウイルスのように先行きが見えにくいリスクに対しても、保険会社の使命として積極的に商品提供することも、大きな社会的使命だと思います。
なお、法令等の変更で給付水準を変える措置(≒基礎率変更権の類似?)においても、生命保険の普通保険約款では、営業保険料を据え置いて、保険金・給付金の水準を下げるケースが多いように思えます。
これは、収納事務負荷を考慮した結果だと思いますが、顧客ニーズとしては、営業保険料は高くても良いので当初設定していた保険金を満額欲しいというニーズもあるように思えます。
なお、記事では、“商品投入を急いだものの、需要予測など商品設計が甘くなり、不十分な金融商品になった可能性”とありますが、コロナ感染者数の増加はあくまでも結果論であって、その責任までも保険会社に要求するスタンスは、業界関係者からは反論が出てきそうですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0796S0X00C22A4000000/
4.免許取消
同じく新型コロナウイルス感染症のニュースですが、タイの大手財閥TCCグループ傘下の保険会社等の事業免許が4月1日付で取り消された模様です。
2社とも新型コロナ保険を販売したものの、感染拡大で保険金支払がかさみ、債務超過に陥った模様です。未払保険金は2社合わせ約180億バーツ(日本円で約670億円)で、タイの人口が約7千万人であることから、日本で起きた場合、約1,150億円の未払保険金に相当するかもしれません。
あまりにも巨額すぎるのは、生命保険が有する射幸性と国民性の違いによるものでしょうか?
5.四半期決算の廃止?
筆者の知る限り、東京証券取引所に上場している企業に対して、四半期決算の開示が義務付けられており、同決算が導入されて相当の期間が経過しているように思います。
このため、関係者の皆様には大変失礼な言い方かもしれませんが、今頃になって、「3カ月ごとの決算開示に膨大な人的資源を投入する現行の制度は、人的資源の効率的投入や長時間労働の是正の観点からも問題がある」と主張されても、今までやってきたではないか?と反論されてしまいそうです。
特に、株式市場などから資金調達しているのであれば、適時適切に投資家に対して財務状況を開示することが上場企業として当然の使命であり、市場の動きが活発にある中において、年1、2回の決算だけで情報開示が十分であるとする考え方は、多くの投資家から反対されそうな気がします。
https://www.sankei.com/article/20220405-7N2I6AASSBJZHMXVTXC33QQYKI/
6.がん検診レコメンドサービス
生命保険会社とメーカーが協力して、がんの早期発見や早期治療などにつながる行動変容を促すの実証実験を実施される模様です。
生命保険会社のお客さま約300人に、メーカー側のサービスを利用してもらうようであり、がん発症リスクを可視化することで、がん予防や早期発見に向けた積極的な行動をサポートする体制が提供される模様です。
開発には、がん研有明病院(https://www.jfcr.or.jp/hospital/)の匿名化データや、メーカーの人工知能技術などによる研究ノウハウが活用されているようですので、今後の展開が大いに期待されますね。
https://japan.zdnet.com/article/35185739/
7.「先進医療」に関するお知らせ
2022年4月の診療報酬改定で先進医療が見直され、「重粒子線治療」と「陽子線治療」の一部等が先進医療から削除されました。
なお、今後は、「放射線治療給付金」の給付対象となる模様ですが、削除前の自己負担分を先進医療特約がカバーしておりましたので、「放射線治療給付金」の給付対象となっても、引き続き、自己負担分をカバーできる給付水準であって欲しいと思います。
また、欲を言えば、給付範囲が縮小しても、営業保険料は不変であることの理由なども、一筆添えていただけたら、尚良いかなとも思います。
https://www.dai-ichi-life.co.jp/information/pdf/index_075.pdf
8.AIが保険をリコメンド
AIが保険業界に与えるインパクトは益々大きくなっていますが、保険募集の場面でもAIが活躍されるようです。
特に、価値観や嗜好性、保険に対する考え方を入力することで、推奨する保険が提示されるようですので、ひょっとすると、保険募集人よりも効率的に良い保険と出会えるかもしれませんね。さらに、無料で利用できる点も安心です。
また、“同じ属性であっても、人の考えはそれぞれであり、保険に期待することや備えたいリスクは異なる。”というご意見は、まさに、今後の保険のあるべき姿を示唆しているように思えます。
https://it.impress.co.jp/articles/-/22994
9.体操の名門クラブの撤退
コーチと選手の間で残念な出来事が起こって以来、去就が注目されていました体操の名門が、2022年度限りで体操事業から撤退される模様です。
保険会社が様々なクラブ活動(例.マラソン、アメフト、テニスなど)を通じて、スポーツ事業に貢献することは、企業のメセナ活動として高く評価されるべきものですが、その一方で、“当該活動に回すお金があれば、契約者配当(社員配当)を増額せよ”というお客さまの声にも傾聴しなければならない時期に来ているのかもしれませんね。
1974年のクラブ発足から約50年の伝統を、受け継いでもらえる企業が登場することを願ってやみません。
10.“円結び”再来?
“円結び”といえば、某サラ金の商品名として、CMなどで知名度を持っていましたが、神社が“円結び”を導入された模様です。といっても、神社が貸金業をするのではなく、両替商のような(無料の)ビジネスです。
大量の小銭の預入や両替に手数料を取る金融機関が増えているため、さい銭の預け入れ費用に悩む神社と両替コストを抑えたい商店の利害関係が一致した助け合いです。
「手数料が節減できた分を施設の維持管理に充てたい。足を運んでもらうことで地域との結びつきを強めることにもつなげたい」
という神社側のコメントは秀逸ですね。
いかがでしたか。当コラムには掲載しませんでしたが、生命保険協会から、「新型コロナウイルス感染症を巡る生命保険業界の取組み報告書」が、2022年4月15日に同会ホームページで公表されました。
https://www.seiho.or.jp/info/news/2022/20220415_2.html
別のコラムに詳細を載せておりますので、併せてご覧頂けますと幸いです。
《お詫びと訂正》
前回のコラム「2022年4月1日 (金)気になるニュース(2022年3月)」で、“3月17日(木)23時36分に発生した地震”と記しましたが、正しくは、“3月16日(水)23時36分に発生した地震”でした。お詫びと共に、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
(ペンネーム:活用算方)