1月に引き続き2月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
1.入院保険の販売停止
新型コロナウイルス感染症の感染者数が当初想定を大幅に超過している現状を踏まえ、入院保険の新規販売が停止された模様です。
一方、同感染症による保障を組み込んだ保険では、引き続き販売が継続されているものもあるようですので、特定のリスクに特化した保険の場合は、このような臨機応変な対応もありえる事例の1つと言えるでしょう。
https://www.taiju-life.co.jp/corporate/news/pdf/20220203_1.pdf
なお、普通保険約款における「免責」事項としては、以下の文言が定番ですので、保険金などの支払免責と販売停止のトリガーが類似しているようにも思われます。
“被保険者が、地震、噴火もしくは津波または戦争その他の変乱によって死亡した場合、その事由によって死亡した被保険者の数の増加がこの保険の計算の基礎に及ぼす影響が少ないと当会社が認めたときには、当会社は、その影響の程度に応じ、災害死亡保険金の全額を支払いまたはその金額を削減して支払います。”
https://www.meijiyasuda.co.jp/my_web_yakkan/pdf/2019/0960000020190401.pdf(3ページ)
2.コロナ保険、「自主療養者」対応に苦慮 感染者増で販売停止も
上記1.に関連したニュースですが、まず、『不正需給』という単語に目が留まりました。『不正受給』という表示が正しいようにも思えたのですが、新聞記者としての何らかの意図があるのかもしれません。
ポイントは、“医師が症状に基づき検査なしで「みなし陽性者」と診断した場合”の取り扱いですが、医師の指示がなく自宅で療養している場合に給付金が出るかどうかなど、保険会社および自治体によって格差が出ないことを期待したいところです。
なお、生命保険協会によれば、令和2年3月(?)(記者注:原文では“令和23月”)から令和3年12月末までのコロナ感染拡大に伴う保険金の支払額は627億円に上る模様ですので、保険業界にとっても無視できない支払額に達しているようですね。
https://www.sankei.com/article/20220217-RXYXFJA27VNLDLTB5KVAN6Q43E/
3.第3四半期決算
例年、2月15日前後は、第3四半期決算の開示が行われますが、明治安田生命さんの開示情報には圧倒されました!
具体的には、継続率を開示されていまして、特に、6年目の継続率である、“61か月目の継続率”を開示されています。筆者の知る限り、“61か月目の継続率”を開示された保険会社は同社が初めてであるように思えます。
なお、欲を言えば、“総合継続率”の定義を明確にしていただけると、なお読みやすいと感じました。「総合」という語感からは、例えば、「新規契約と転換契約を合算」、「個人保険と個人年金保険を合算」した継続率なのかもしれません。ちなみに、同社では販売されていないかもしれませんが、例えば、5年満期保険の継続率実績は“61か月目の継続率”の分子分母から除外するなど、継続率の判定ルールも気になります。
いずれにせよ、年度末決算以外でも、四半期決算のポイントを要約したダイジェストを公開いただけることは大変貴重な情報であり、是非、保険業界全体に波及して欲しいと願うばかりです。
なお、上述の新型コロナウイルス感染症については、14ページ目に、同感染症に伴う給付金支払いデータなどが開示されていますので、時宜を得た適時適切な開示と言えるでしょう。
https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/corporate_info/disclosure/account/2021/pdf/quarter_202103.pdf
なお、別の生命保険会社のサイトでは、ニュースリリースに決算発表のリンクが見当たらないものもありました。
https://www.lifenet-seimei.co.jp/
ただし、「ニュースリリース一覧」のサイトに到達すれば、右上に、「決算情報・過去の決算資料はこちら」という誘導があり、時系列での決算データの遡及閲覧が手軽に行えるという観点からは、かえってこちらの方が見やすいかもしれませんね。
https://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/
4.特定保険ブロックの出再
保険料払込期間満了後の終身保険契約ブロックを出再する動きは以前にもありましたが、個人年金保険の既契約ブロックの一部を再保険に付す動きが出た模様です。
具体的には、予定利率の高い個人年金保険契約を出再することで、責任準備金の積立義務を再保険会社に移転し、安定的な支払財源が確保される模様です。
なお、再保険契約の方式は、共同保険式再保険で、再保険料は7,100 億円程度になる模様ですが、これほど大規模な再保険料は見たことがありません。
また、年金開始後のブロックについては、例えば、金利リスク、長寿化リスクなど、様々なリスクが混在するため、リスクごとに、さらに引き受け再保険会社を分散し、さらなるリスク移転を図り、外貨建運用で為替リスクをヘッジするなど、多くのビジネスモデルが集結するのかもしれません。
https://www.taiyo-seimei.co.jp/company/notice/download/press_article/2021/20220214_3.pdf
5.人事異動も45日ルール?
東京証券取引所に上場している法人については、同取引所の内規として、四半期決算の開示が義務付けられている模様です。
https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/index.html
一方、生命保険会社では、非上場の株式会社であっても、45日ルールを踏襲して、四半期決算を原則、45日以内に自主開示する動きが広まっています。
なお、四半期決算に合わせて、人事異動などにも45日ルール(?)を適用して、2月15日前後に開示される動きも広まっている模様です。
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2021_067.pdf
https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2021/220215.pdf
https://www2.tmn-anshin.co.jp/download/924/220218news.pdf
6.CxO
筆者が学生時代、理学部化学科の友人が、“SOx”、“NOx”という用語を連発していた記憶があります。硫黄酸化物、窒素酸化物を表すようで、酸性雨の原因となっている模様です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/46/2/46_KJ00003520324/_pdf
一方、保険会社などの人事異動では、CEOやCOOなどの略称も普及している感じがします。
https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/news/2021/a-01-2022-02-14.pdf?la=ja-JP
なお、CDOの「D」には、デジタル(Digital)とディストリビューション(Distribution)の(少なくとも)2通りある模様ですので、注意したいところです。
https://www.manulife.co.jp/content/dam/insurance/jp/documents/press/2022/0222.pdf
7.「節税保険」で検査
複数の保険会社が話題になっている模様ですので、募集時の独特の話法など、会社間で共有されていた可能性があるかもしれません。
なお、国税庁による税務通達改正で、法人向けの節税保険マーケットが狭くなりつつある中では、営業推進のためにやむを得ない動きだったのかもしれません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd50c3cba94af71db746c8db6ab4b410cdbd46c2
8.休職保険
認知症保険と並んで就業不能保障保険は、最近の生命保険トレンドですが、「休職保険」というネーミングは初めてのように思えます。
特に、“1年継続型とすることで、加入しやすい低廉な保険料水準を実現しました。”というフレーズは、定期付終身保険などにおける更新時の保険料上昇を懸念する声に対抗する話法として、今後、流行るかもしれません。
https://www.aflac.co.jp/news_pdf/20220209.pdf
なお、別の生命保険会社のサイト(『「新型コロナウイルス感染症」に関連したご案内について(最終更新日:2022年2月22日)』)では、“就業不能保険は、休業補償や失業保険とは異なります。勤務先の指示による自宅待機や休業等は所定の就業不能状態に当てはまらないため、給付金のお支払い対象外です。”とのコメントがあるため、“休業と求職”など、用語の理解に混乱がきたさないことを期待したいですね。
https://www.lifenet-seimei.co.jp/profile/information/1190014_1703.html
9.90歳満期の無解約払戻金型定期保険
アクチュアリー試験の旧教科書「保険1(生命保険)第4章 新商品(平成11年5月作成)」4-17ページで、1980年代に登場したカナダの『100歳定期保険(Term-to- 100)』が紹介されています。
日本では、低解約返戻金終身保険で従来型の終身保険に比べて解約返戻金(解約払戻金)が3割カットされていますが、定期保険では無解約返戻金型も発売されています。
ただし、噂では、主務官庁のご意向として、あまり長期間にわたって無解約返戻金型とすることに違和感を覚えていらっしゃるようですので、90歳満期が限界なのかもしれませんね。
https://www.zurichlife.co.jp/aboutus/pressrelease/2022/20220222
10.営業職員の賃上げ
太陽生命さんが、営業社員の賃上げを行う模様です。営業社員の給料の安定化を図り、職場への定着率を高めることが目標のようです。
営業職員のターンオーバー問題は、生命保険業界共有の課題であり、営業職員の定着率が高いほど、アフターサービスなどの“きめ細やかさ”に繋がり、継続率向上にも寄与することを以前、某保険会社のセミナーで伺った記憶があります。
特に、顧客の契約が長年続くことをより評価した給料体系に変えたりされるようですので、同社の継続率の動きが大いに注目されます。
https://www.asahi.com/articles/ASQ2B6W0WQ2BULFA011.html
11.公的保険アドバイザー資格
令和3年10月15日にパブコメに付された、保険会社向けの総合的な監督指針の改正で、
“また、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑みて、公的保険制度に関する適切な理解を確保するための十分な教育を行っているか。”
という文言が、Ⅱ-4-2-1 適正な保険募集管理態勢の確立(4)に追加されました。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/hoken/20211228/20211228.html
これを受けて、公的保険アドバイザー資格受験申し込みが急増している模様です。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000045924.html
なお、筆者も当該記事で初めて、『一般社団法人 公的保険アドバイザー協会』の存在を知りました。
https://siaa.or.jp/
12.歩数データの競争
健康増進型保険では、日々の歩数などを計測することが多くなっています
が、団体保険などでは職場の部署ごとで歩数を競うことで、社員の健康増進を活性化させる動きも広がっています。
特に、部署全員ではなく、上位3名の歩数で競い合う事例もありますので、今後、導入を検討されている会社にとって参考になるかもしれませんね。
https://www.ms-primary.com/news/ir/assets/20220215_sports%20yell.pdf
いかがでしたか。新型コロナウイルス感染症の影響は、まだまだ予断を許さない状況ですが、コロナ専用商品の売り止め、料率改定など、今後の状況が大いに注目されます。また、阿蘇山の噴火、ロシアによるウクライナ侵攻など、自然災害や地政学リスクなど、引き続き、課題山積な時期が継続しそうですね。
(ペンネーム:活用算方)