気になるニュース(2021年12月)


11月に引き続き12月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。

1.「金融庁の1年(2020事務年度版)」の公表

平成29事務年度版以降から毎年12月に公表されている資料ですが、タイトルの通り、金融庁の1年の動き(2020年7月1日から2021年6月30日まで)が、実に624ページに集約されています。

特に、当資料は、アクチュアリー試験教材としても有効で、例えば、478ページ以降にある『第4節 保険会社に係る財務基準等』のうち、
Ⅱ 経済価値ベースのソルベンシー規制等
Ⅲ 基礎利益の見直し
Ⅳ 外貨建保険に関する責任準備金積み立てのあり方”
など、第2次試験(専門科目)対策としても、是非、熟読されるとよいでしょう。
https://www.fsa.go.jp/common/paper/2020/index.html
https://www.fsa.go.jp/common/paper/2020/zentai/h1.pdf

2.「がん経験者」の明るい未来

がん団信の引受条件が緩和されました。具体的には、がん既往歴のあるお客さまも、団信に加入できるようになりましたので、既往歴のため住宅ローンなどを断念していた方々にとっては朗報ですね。

なお、某生命保険会社の取締役の方々とミーティングした際、“社会的貢献という観点からは、がん罹患経験者を含めて、既往歴のある方々に何らかの保障を提供することは重要だが、マーケットが小さくビジネスになりにくい”とのコメントをいただいた記憶があります。

本件のように、団体保険で市場開拓しながら、徐々に個人保険に波及する流れが加速することを期待したいですね。
https://life.cardif.co.jp/-/release211223

3.「団信パスポート」

「入院パスポート」https://www.sompo-japan.co.jp/kinsurance/medical/kenkousupport/

「元気パスポート」https://www.aeon-allianz.co.jp/products/genki-passport/

など、今年は、新商品のネーミングで“~パスポート”というのが多かったように思えます。

今回の「団信パスポート」とは、住宅ローン手続きにおいて、団信加入を真っ先に行い、法務局などから必要資料の取り寄せを最小限にする配慮から考案されたものと思われます。

実は、筆者自身も、住宅ローンの借り換えを検討した際、団信の申し込み前に法務局で必要書類を入手して提出した後に、既往症のため団信が不成立となり、ローン借り換えできず、必要書類も全く無駄になった苦い経験があります。
住宅ローンの申込手順として、まず、団信加入可否から判断するプロセスは、極めて合理的ですね。是非、多くの生命保険会社に拡充されることを期待したいです。
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2021_059.pdf

4.「180日ルール」の適用拡大

商品開発部門で普通保険約款を担当した経験があれば、医療保険(入院保険)における「180日ルール」は馴染み深いと思われます。
入院初期給付金の支払いについて、従来の取扱いを一部変更し、過去の入院について追加支払いの対象とするもので、まさに、お客さまに寄り添った遡及適用事例と言えるでしょう。

なお、ニュースリリースに記載の“<入院初期給付金のお支払いにおいて、お取扱いが一部変更となる事例>”がとても分かりやすいため、生命保険会社の広報部門などにいらっしゃる方にも、是非、ご覧いただきたいところです。
https://www.taiju-life.co.jp/corporate/news/pdf/20211224_1.pdf

5.新型コロナウイルス感染症による入院

新型コロナウイルス感染症を明示的に保障する商品が幾つか登場していますが、同感染症などによる入院時に入院給付金が受け取れる保険のようです。
https://www.taiju-life.co.jp/corporate/news/pdf/20211207_1.pdf

ケガと感染症に特化することで、簡易告知や低廉な保険料の実現につながったようですが、ニュースリリースでは、新型コロナウイルス感染症が所定の感染症に含まれるという点がやや分かりにくかったため、もう一工夫されるとさらに良いかなと思います。

なお、同ウイルス感染症が所定の感染症に含まれる点は、会社ホームページで確認できましたので、お客さまにとって安心材料がまた1つ増えますね。
https://www.taiju-life.co.jp/products/omamoleaf.htm

6.健康増進型保険

法人向けの健康増進型保険のようですが、正式名称が「無配当年満期重度就業不能保障定期保険(無解約払戻金型)」などとありますので、団体保険ではなく個人保険かもしれません。
特長としては、例えば、「1日あたり平均歩数が8,000歩以上」の場合に翌年の保険料が割り引かれる模様です。

また、お客さまニーズとして、経営者が従業員保障に求めるものは、「保険料の安さ」「幅広い保障」「手続が簡単で、全員加入が可能」という点が挙げられるそうですが、特に、3点目の「全員加入が可能」という点は、まさに経営者目線での従業員を差別しない姿勢が強く伺えます。

なお、お客様の負担軽減のため、告知項目を全て選択式(記述項目ゼロ)にして、さらに告知項目数も従来のおよそ半分に削減された点もあり、引受基準・査定方法は、医務査定関連の支援実績が豊富な再保険会社のサポートを受けた成果の1つかもしれません。
https://www.daido-life.co.jp/company/news/2021/211220_news.pdf

7.自動引受査定の導入

保険引受時の医務査定を一部自動化する「自動引受査定」を開始し、引受判断結果を即時に提示することが一部可能となる模様です。
加入手続きの迅速化もさることながら、個人的に共感できるのは、引受不可の場合に、不要な手続きの負担軽減という点です。
まさに、2023年の100周年に向けた、大いなる前進という感じですね。
https://www.fukoku-life.co.jp/about/news/download/202112241.pdf

8.金融/健康リテラシーに関する意識調査

金融リテラシーと健康リテラシーに関する意識調査の結果が公表されました。具体的には、人生100年時代を楽しむために必要と思うリテラシーとして、
第1位「健康リテラシー」
第2位「金融リテラシー」
というランキングで、また、子どもに社会人になるまでに身につけてほしい金融リテラシーとして、
第1位「生活設計・ライフプランニング」
第2位「資産形成・資産管理」
第3位「金融・経済の仕組み・事情」
という結果でした。

学校教育を含めた幅広い年齢層に対して、保険会社が提供できるサービスはまだまだありそうですね。
https://www2.axa.co.jp/info/news/2021/pdf/211216.pdf

9.さまざまな受賞

時節柄、さまざまな「受賞」に関する記事が多かったように思われます。
(1)「契約者貸付請求書」の配慮:
https://www.sbilife.co.jp/corporate/press/pdf/NR20211220.pdf
(2)業務に必要な IT スキルを数値化した IT 技能判定基準を策定:
https://www.orixlife.co.jp/about/news/2021/pdf/n211208.pdf
(3)「ヘルスリテラシーを高め、豊かな健康長寿社会実現」に向けた取組み
https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/topics/2021/a-01-2021-12-24.pdf?la=ja-JP
(4)データ利活用により「業務の変革」「事業の変革」を推進する企業姿勢:
https://www.nissay.co.jp/news/2021/pdf/20211202.pdf
(5)常にお客さまの視点に立ち、お客さまに寄り添ったコールセンターの応対:
https://news.medicarelife.com/release/down2.php?attach_id=615&seq=1
(6)消費者を動かしたCM展開:
https://www.lifenet-seimei.co.jp/shared/pdf/202112-23-news.pdf

10.サステナビリティの推進

「金融リテラシー教育の推進」を目的に開発した「ライフシミュレーションゲーム Frontier World」に関するニュースですが、ライフサイクルに応じた資産形成方法や必要性を遊びながら学ぶことができるゲームで、全国の学校の授業でも活用されている模様です。

2022年4月から民法上の「成年」年齢が18歳に引き下がりますので、諸条件をクリアした高校生が自ら保険契約者となり、保険契約が締結できる時代が到来したことに併せて、金融リテラシーの向上も国策として重要課題の1つと言えそうですね。
楽しみながら社会の仕組みを学習できるツールとして、大いなる活用が期待されます。
https://www.d-frontier-life.co.jp/corporate/release/pdf/2021_0016.pdf

11.循環型社会の形成

循環型社会の形成はあらゆる企業や個人にとって重要なテーマですが、オフィスビルから排出、焼却処理されている有機性廃棄物を燃料化する実証実験が実施された模様です。具体的には、保険会社などのテナント企業が協力して、有機性廃棄物から固形燃料「バイオ石炭」などを生成し、今後、燃料の再利用方法が検討される見込みです。

以前、某家電量販店の社長が、“電気を使う家電製品の販売会社の役割として電気そのものを作る会社を目指そう!”というスローガンの下、太陽光発電事業に進出されたようですが、人と紙の会社とも言われた保険事業においても、同様に環境配慮型経営を目指すことは大歓迎といえますね。
https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2021/pdf/20211220_01.pdf

12.「生物」=「生殖」!?

史上初の生体ロボット「ゼノボット」を作製した米国の研究者らが「生殖」が可能だとする論文を発表された模様です。
さらに、興味深いことに、その生殖方法が動植物では見られない異例のものだったという点です。

高校時代の生物の授業で、先生から“生物と機械の絶対的な違いは何か?”と聞かれ、級友の一人が“子孫を残すこと”と明快に回答していたのが鮮明に蘇ってきました。
https://www.cnn.co.jp/fringe/35180169.html#:~:text=%EF%BC%88%EF%BC%A3%EF%BC%AE%EF%BC%AE%EF%BC%89%20%E5%8F%B2%E4%B8%8A%E5%88%9D%E3%81%AE%E7%94%9F%E4%BD%93,%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AB%96%E6%96%87%E3%82%92%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

いかがでしたか。いよいよ、2022年がスタートしましたが、“With コロナ”から“After コロナ”へと向かう1年になりそうですね。不透明な世の中だからこそ、生命保険をはじめとする金融商品の重要性がますます高まりますが、皆さまにとって平和で健やかな1年となることを切に願っております。

(ペンネーム:活用算方)

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