引き続き8月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
1.フィールドテストの仕様書公開
経済価値ベースのソルベンシー規制については、2025年の本格導入に向けたフィールドテストがこれまで実施されてきましたが、今年の同テストにかかる『仕様書およびテンプレート』が公開されました。
2020年の仕様書等も公開されていますので、2021年のものと比較いただければ、理解がより深まるでしょう。
保険業界以外にも広く周知・公開することは、幅広い意見を求めるきっかけになりますので、非常によい取組みであると思います。
https://www.fsa.go.jp/policy/economic_value-based_solvency/index.html
2.パブコメ
いわゆるMVA(市場価格調整)を利用した商品におけるタイムラグマージン(※)について、保険契約募集上および保険商品審査上の留意点にかかる監督指針改正に対するパブコメおよび金融庁の考え方が公開されました。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/hoken/20210827.html
※タイムラグマージンについては、例えば、『保険商品審査事例集(https://www.fsa.go.jp/status/hoken_sinsajireishu/20200630/2006shinsajireishu.pdf)』5~6ページ参照。
特に、(別紙1)No.14のコメントでは、日本アクチュアリー会の保険1のテキストに言及されていますので、準会員の方々はチェックされるとよいでしょう。
また、当該コメントを踏まえたテキスト改訂を、テキスト委員会に是非お願いしたいです。
3.コロナ感染の保険金支払い急増
新型コロナウイルス感染症による保険金支払いが、2021年4月~6月の3か月で350億円を超える水準となり、今年度上半期中に昨年を超える勢いのようです。(←2020年3月~2021年3月までの同金額:約481億円)
ワクチン接種や国産治療薬(例.塩野義製薬など)提供など、来年にかけて明るい兆しがみえてきていますが、まだまだ予断を許さない状況ですね。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210810-OYT1T50276/
4.3か月で3,000万件の新契約?
タイ損害保険協会によると、新型コロナ保険(損害保険)の販売実績が、今年1~3月は130万件、感染が拡大した4~6月は1,400万件だったそうです。
タイの人口は日本の約半分ですので、日本市場におきかえると、僅か3か月で3,000万件近い新契約が獲得されたことに匹敵します。
同ウイルスで職を失った人々は自らの命を顧みずに「意図的感染」で保険金を詐取する行動に出たようでして、数十万バーツ(日本円で100万円前後)欲しさに大多数のモラルリスクが混入した事例となりました。
さらに、SNSでの呼びかけで、それまで保険加入に関心の薄かった人々にも広まったようで、IT技術の発展がまさに“ウイルス”のように世の中に浸透した、なんとも皮肉な結果となりました。
某大臣曰く“民度が高い日本”では、このような事象が起きないことを願うばかりですが、新型コロナ感染も疾病ですので、適時適切に保険金・給付金が支払われることは、保険会社にとってまさに、一丁目一番地であることに変わりありません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b53b3d2cbf6d581ef3fb97a3023a51d93bafe362
5.未だに紙の書類なの?
お笑い芸人さんが、生命保険会社への申請書類を披露して、書き間違いの多さを暴露されたようです。
生命保険会社の「『ご家族登録制度』重要事項」という申込書の申込日に生年月日を記入したり、家族情報の記入欄に自分の情報を書き込んだりと、いずれも初歩的なミスのようですが、個人的には、“いまだに紙の書類を使っているのか!”と驚きました。
会社によっては、ネット完結型の申し込みであったり、署名も電子署名であったりと、IT化が進んでいるように思えるのですが、“申込者のリテラシー”に応じて、保険会社側が柔軟な対応を行っていることの証左かもしれません。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2021/08/14/kiji/20210814s00041000209000c.html
6.生保レディ「大量採用&大量脱落」の悪循環
昭和の頃からずっといわれ続けてきた“営業職員のターンオーバー問題”が、東洋経済で取り上げられました。
動画もアップされているようですので、アクチュアリー以外の方々も必見の内容と言えそうです。
その昔、某シンクタンクの役員が金融関係の雑誌で、“大量の戦争未亡人の受け皿として営業職員制度は順調に拡大した。その結果、「専業」になることはできたものの「専門」にはなれなかったのが残念だ。”とのコメントをされていたのが、とても印象的でした。
https://toyokeizai.net/list/video/bDK0yNvj6IA
7.携帯ショップのインセンティブ
保険代理店等においても、高額の保険契約を獲得した代理店報酬に大きな金額を支払うことは一般的ですが、さすがに、お客さまのニーズに合わないプランを提供することは失格ですね。
どの業界でも「不適切営業」は決して許されるものではありません。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC16CWM0W1A710C2000000/
8.「数独」の名付け親
世界的人気パズル「数独」の名付け親である鍜治真起さんが亡くなられたそうです。
“数字は独身に限る”という氏のお考えが命名のきっかけだそうですが、数学科出身者の独りとしては、オイラー先生も「数独」に関心があったという逸話に惹かれます。
阿弥陀くじが置換群を導いたのと同様に、数独が何らかの数学的モデルを導く日が来ることを心待ちにしています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0bed0c64ede7cd180568f4b182d1e07631779286
9.円周率新記録
スイスの研究者チームが円周率を62兆8000億桁目まで計算されたようです。独自の高性能コンピューターが用いられたようで、従来の世界記録よりも約3.5倍速く、科学者がコンピューティング能力を競う舞台となっている模様です。
学生時代、“マチンの公式”を授業で教わり、数式処理ソフトを使って計算した記憶があるのですが、“計算よりも検証の方が難しいのだよ”という指導教官のありがたいお言葉は、むしろ、社会人になってからの方が思い返す機会が多いように感じます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ac958e18c9334eb74af0f13ea434da859489a4d9
10.たこ焼きチャレンジ?
「たこ焼きはどこまで大きくできるのか」という論文を、京都大学大学院の橋本教授がYouTuberとともに公開されました。
特に、風味を落とさず巨大化するための予想を「オイラー・ラグランジュ形式」という方程式を使って説明されたようでして、上述のオイラー先生がここにも登場されております。やはりオイラー先生は偉大なる数学者ですね。
なお、「たこ焼き」と「YouTuber」の組み合わせで、「ゆっぴーチャンネル / YUPI Ch」の「たこ焼きチャレンジ?」が久々に見たくなりました。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2108/16/news126.html
いかがでしたか。今回は数学にまつわるニュースが多く目に留まった印象でした。まだまだ暑い日が続きますが、一日も早く新型コロナの蔓延が収束して、平穏な世の中に戻ることを心から願っております。
(ペンネーム:活用算方)