新社会人へのメッセージ(情報収集編)


2020年度がスタートしました。2回目となる東京五輪の延期はもちろん、収束の気配が見えてこない新型コロナウィルスなど、我が国を取り巻く環境はかつてない状態に置かれています。
このため、一部の会社では、入社式をとりやめたり、4月中は自宅待機させるなど、新社会人としてのスタートが特殊な状況となる方々も少なくないと思われます。
そこで、今回のコラムでは、自宅待機中などの時間を利用しながら、アクチュアリーを目指す新社会人向けに役立つ、情報収集のテクニックをご紹介したいと思います。

1.週刊誌
金融機関と関係の深い週刊誌としては、「週刊ダイヤモンド」、「週刊東洋経済」および「週刊エコノミスト」が有名だと思います。また、これらの雑誌には専用のホームページが準備されており、毎週金曜日頃に翌週に発売される内容が紹介されます。
通勤途中などで車内広告を見たりする機会が多いと思いますが、特に、月曜日の午前中に社内会議等がある場合には、上司から「今週の週刊○○に掲載されている記事について至急教えてくれ。」という業務命令が飛んでくることがあるかもしれません。
そのような事態に備えて、例えば、土日にインターネットで検索したり、書店へ赴いて周辺情報を入手すれば、上司からの厚い信頼を得ることができるでしょう。

2.業界紙
保険業界に特化した業界紙としては、「保険毎日新聞」、「週刊インシュアランス」、「新日本保険新聞」および「保険情報」が有名だと思います。また、これらの業界紙にも専用のホームページがありますので、業界の動き等を手早くタイムリーに把握することができるでしょう。
特に、保険会社にお勤めの場合には、これらの業界紙が社内で回覧されることも多いかと思いますので、大いに活用されると良いでしょう。
また、商品開発部門に配属された場合には、他社の新商品・新サービスなどがどのように紹介されているかを見れば、当該商品などの特長や(自社商品にとっての)対抗話法など、業務に直結する内容となります。

3.臨時増刊号
1.で紹介した「週刊東洋経済」ですが、毎年、秋頃(昨年は9月24日発売)に「臨時増刊号」が刊行されますので、特に、保険業界に務める方は是非、一読されることをおススメします。
年1回の刊行頻度ですが、協会長や社長インタビューもありますので、経営トップの生の声を把握する絶好の機会です。(ちなみに、私は生命保険会社に10年在籍していましたが、社長と直接お話ししたことは一度もありませんでした。)

4.金融庁ホームページ
主務官庁のホームページは、必ずチェックしましょう。特に、以下のサイトは非常に有用ですので、最低でも、週に一回はチェックしておきたいところです。
・「法令・指針等」:保険会社向けの総合的な監督指針
・「金融機関情報」:パブリックコメント、保険会社関連(保険商品審査事例集)
特に、「保険商品審査事例集」では、明文化されにくい、商品認可基準を明示的に表す貴重な情報源ですので、第2次試験対策はもちろんのこと、日々の実務遂行にも大いに役立つことでしょう。

5.日本アクチュアリー会ホームページ
ホームページの「ライブラリ」から「アクチュアリー試験の過去問」を入手したり、会員専用ページから「会報」や「アクチュアリー・ジャーナル」等を閲覧したり、まさに、アクチュアリーにとって必要不可欠なコンテンツ満載のホームページです。
特に、会報や会報別冊に関しては、単語検索等で該当論文等を抽出することも出来ますので、試験対策はもちろん、実務対応にも大いに役立つと思います。

6.厚生労働省ホームページ
新型コロナウイルスの影響で、ICDコードなどが追加された場合に、是非、閲覧したいホームページです。
例えば、以下のURLをご覧いただければ、同コードに対する最新情報が得られるでしょう。https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/
また、死亡率(人口動態調査:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html)や疾病罹患率(患者調査:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)など、予定発生率の基礎データの宝庫である「統計表一覧:https://www.e-stat.go.jp/」も、上記のホームページからリンクが貼付されていますので、是非、利用したいですね。

7.生命保険協会
生保業界全体の財務諸表や会員各社のホームページ等、業界全体の動きを含めて網羅的に把握できる団体です。
アクチュアリー試験対策(特に、第2次試験)としては、当協会からの提言や意見具申をみれば、業界全体の課題等が素早く把握できるでしょう。
特に、「生命保険会社のディスクロージャー~虎の巻:https://www.seiho.or.jp/data/publication/tora/」は、一般消費者向けにディスクロージャー資料を分かり易く解説していますので、アクチュアリー試験(特に、第2次試験)を初めて受験される方は、是非、手元において適宜参照されると良いでしょう。

8.生命保険文化センター
新社会人にとっては、生命保険協会との違いがピンとこないかもしれませんが、3年ごとの「生命保険に関する全国実態調査」の実施主体と認識されるとよいでしょう。
また、生命保険協会よりは、学術的な側面が多く、例えば、
・生命保険用語 英和・和英辞典:https://www.jili.or.jp/research/dictionary/index.php
・調査報告書紹介(ファクトブック):https://www.jili.or.jp/research/factbook/
 といった資料が公開されています。
  特に、上記のファクトブックでは、隣接業界(簡易生命保険、JA共済)の予定死亡率
 も一部公開されているため、データが古いものの、保険および共済を研究する上では欠かせないものとなっています。このファクトブックの復活を切に願うばかりです。

9.日本評論社
「数学セミナー」で有名な日本評論社ですが、最近は、「アクチュアリー数学シリーズ」を刊行する等、アクチュアリー試験にも直結する書籍が登場しています。
また、「数学セミナー」自身にも、例えば、「生保ビジネスのリスク管理/栗山晃:https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/5338.html」など、アクチュアリーの話題が登場していますので、余力があれば、定期購読されることをおススメします。
なお、筆者は、「エレガントな解答をもとむ:https://www.web-nippyo.jp/elegant/」を40年近く愛読しており、特に、仕事や試験勉強等で疲れたときにリラックスするための教材として大いに重宝させていただきました。
数学科出身者の1人として、末永く数学と付き合っていきたいと常々考えているのですが、まさに、「数学セミナー」を愛読することで、アクチュアリーの素養としての「数学力」が衰えないようにすることも重要な日常習慣の一つであると思います。

10.著名ブログ
アクチュアリーのブログとしては、以下のものが有名だと思いますので、定期的にチェックされると良いでしょう。
・s_iwkのブログ:http://iwk.cocolog-nifty.com/
・保険アナリスト植村信保のブログ:https://nuemura.com/(←研究会員のようです)
・アクチュアリーによる アクチュアリアルでないブログ:https://blog.goo.ne.jp/askactuarialfirm(←年金がご専門のようです)

いかがでしたか。アクチュアリーを目指す方々にとって、アクチュアリー試験勉強を進めることはもちろん重要ですが、特に、仕事をしながら試験勉強を続けるためには、日々の仕事をスムーズにこなしていく必要があります。
そのためには、勤務先の情報を習得することに加えて、社外の情報にも注意しながら、日々の業務に役立てることも有効な手段となりますので、今回ご紹介しました情報源が少しでも役立つことを祈念しております。

(ペンネーム:活用算方)

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