法令解釈(公的年金財政検証)


さて、前回の財政検証の話題で出てきたキーワード、アクチュアリーを目指す皆さんであれば、原文にもあたってみましょう。

いわゆる財政検証と言われるのは次の部分になります。

国民年金法
(財政の現況及び見通しの作成)
第四条の三 政府は、少なくとも五年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による給付に要する費用の額その他の国民年金事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という。)を作成しなければならない。
2 前項の財政均衡期間(第十六条の二第一項において「財政均衡期間」という。)は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね百年間とする。
3 政府は、第一項の規定により財政の現況及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

この「財政の現況及び見通し」を作成する作業が、「財政検証」というわけです。
そして、概ね100年間に渡る見通しをたてる、ということになっています。

マクロ経済スライドによって調整をする部分の記述がこちらです。法令中にはマクロ経済スライドとは一言も出てきませんね。

国民年金法
(調整期間)
第十六条の二 政府は、第四条の三第一項の規定により財政の現況及び見通しを作成するに当たり、国民年金事業の財政が、財政均衡期間の終了時に給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金(年金特別会計の国民年金勘定の積立金をいう。第五章において同じ。)を保有しつつ当該財政均衡期間にわたつてその均衡を保つことができないと見込まれる場合には、年金たる給付(付加年金を除く。)の額(以下この項において「給付額」という。)を調整するものとし、政令で、給付額を調整する期間(以下「調整期間」という。)の開始年度を定めるものとする。
2 財政の現況及び見通しにおいて、前項の調整を行う必要がなくなつたと認められるときは、政令で、調整期間の終了年度を定めるものとする。
3 政府は、調整期間において財政の現況及び見通しを作成するときは、調整期間の終了年度の見通しについても作成し、併せて、これを公表しなければならない。

給付額を調整する期間の開始年度については、国民年金法施行令で定められています。
2004年年金改正の翌年度から、マクロ経済スライドは開始する、とされています。

国民年金法施行令
(調整期間の開始年度)
第四条の二の二 法第十六条の二第一項に規定する調整期間の開始年度は、平成十七年度とする。

さて、財政検証の大きなチェックポイントである、所得代替率の下限はどう記述されているのか見てみましょう。

(給付水準の下限)

第二条 国民年金法による年金たる給付及び厚生年金保険法による年金たる保険給付については、第一号に掲げる額と第二号に掲げる額とを合算して得た額の第三号に掲げる額に対する比率が百分の五十を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとする。

一 当該年度における国民年金法による老齢基礎年金の額(当該年度において六十五歳に達し、かつ、保険料納付済期間の月数が四百八十である受給権者について計算される額とする。)を当該年度の前年度までの標準報酬平均額(厚生年金保険法第四十三条の二第一項第二号イに規定する標準報酬平均額をいう。)の推移を勘案して調整した額を十二で除して得た額に二を乗じて得た額に相当する額

二 当該年度における厚生年金保険法による老齢厚生年金の額(当該年度の前年度における男子である同法による被保険者(次号において「男子被保険者」という。)の平均的な標準報酬額(同法による標準報酬月額と標準賞与額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額をいう。次号において同じ。)に相当する額に当該年度の前年度に属する月の標準報酬月額又は標準賞与額に係る再評価率(同法第四十三条第一項に規定する再評価率をいい、当該年度に六十五歳に達する受給権者に適用されるものとする。)を乗じて得た額を平均標準報酬額とし、被保険者期間の月数を四百八十として同項の規定の例により計算した額とする。)を十二で除して得た額に相当する額

三 当該年度の前年度における男子被保険者の平均的な標準報酬額に相当する額から当該額に係る公租公課の額を控除して得た額に相当する額

所得代替率という表現も法令では出てこないですが、この第2条に
定義は以下の通りです。
分子=第2条第1項第1号(基礎年金2名分=夫婦の年金給付分)
+第2条第1項第2号(男子の厚生年金の報酬比例部分の年金給付分)
分母=第2条第1項第3号(男子の平均的な標準報酬(税引き後))

この下限については、国民年金法附則第2条第2項に以下記述されています。

2 政府は、第一条の規定による改正後の国民年金法第四条の三第一項の規定による国民年金事業に関する財政の現況及び見通し又は第七条の規定による改正後の厚生年金保険法第二条の四第一項の規定による厚生年金保険事業に関する財政の現況及び見通しの作成に当たり、次の財政の現況及び見通しが作成されるまでの間に前項に規定する比率が百分の五十を下回ることが見込まれる場合には、同項の規定の趣旨にのっとり、第一条の規定による改正後の国民年金法第十六条の二第一項又は第七条の規定による改正後の厚生年金保険法第三十四条第一項に規定する調整期間の終了について検討を行い、その結果に基づいて調整期間の終了その他の措置を講ずるものとする。

3 政府は、前項の措置を講ずる場合には、給付及び費用負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずるものとする。

ということで、所得代替率の調整目標は50%以上であり、次回の財政検証までの間に50%を下回るみこみの時は、調整(引き下げ)を終了し、保険料の引き上げを含めた見直しをしましょう、ということが記述されているということです。

以下は別の回で。
年金財政フレームワークで、基礎年金の2分の1を負担をする、という部分が次の記述になります。

(国庫負担)

第八十五条 国庫は、毎年度、国民年金事業に要する費用(次項に規定する費用を除く。)に充てるため、次に掲げる額を負担する。

一 当該年度における基礎年金(老齢基礎年金、障害基礎年金及び遺族基礎年金をいう。以下同じ。)の給付に要する費用の総額(次号及び第三号に掲げる額を除く。以下「保険料・拠出金算定対象額」という。)から第二十七条第三号、第五号及び第七号に規定する月数を基礎として計算したものを控除して得た額に、一から各政府及び実施機関に係る第九十四条の三第一項に規定する政令で定めるところにより算定した率を合算した率を控除して得た率を乗じて得た額の二分の一に相当する額

二 当該年度における保険料免除期間を有する者に係る老齢基礎年金(第二十七条ただし書の規定によつてその額が計算されるものに限る。)の給付に要する費用の額に、イに掲げる数をロに掲げる数で除して得た数を乗じて得た額の合算額

イ 次に掲げる数を合算した数

(1) 当該保険料四分の一免除期間の月数(四百八十から当該保険料納付済期間の月数を控除して得た月数を限度とする。)に八分の一を乗じて得た数

(2) 当該保険料半額免除期間の月数(四百八十から当該保険料納付済期間の月数及び当該保険料四分の一免除期間の月数を合算した月数を控除して得た月数を限度とする。)に四分の一を乗じて得た数

(3) 当該保険料四分の三免除期間の月数(四百八十から当該保険料納付済期間の月数、当該保険料四分の一免除期間の月数及び当該保険料半額免除期間の月数を合算した月数を控除して得た月数を限度とする。)に八分の三を乗じて得た数

(4) 当該保険料全額免除期間(第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るものを除く。)の月数(四百八十から当該保険料納付済期間の月数、当該保険料四分の一免除期間の月数、当該保険料半額免除期間の月数及び当該保険料四分の三免除期間の月数を合算した月数を控除して得た月数を限度とする。)に二分の一を乗じて得た数

ロ 第二十七条各号に掲げる月数を合算した数

三 当該年度における第三十条の四の規定による障害基礎年金の給付に要する費用の百分の二十に相当する額

2 国庫は、毎年度、予算の範囲内で、国民年金事業の事務の執行に要する費用を負担する。

以上

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