先日、平成29年度のアクチュアリー試験の合格発表がありました。正式な合格率はまだ発表されていませんが、略算合格率(=合格者数÷合格者受験番号の最大値)をみると、どの科目も概ね10%台であり、残念ながら『ビッグウェーブ』は来ませんでしたね。
【平成29年度の略算合格率】
数学 | 生保 数理 |
損保 数理 |
年金 数理 |
会計・経済 ・投資理論 |
生保1 | 生保2 | 損保1 | 損保2 | 年金1 | 年金2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
110 | 217 | 94 | 89 | 139 | 41 | 44 | 17 | 16 | 12 | 19 |
1,561 | 1,151 | 996 | 791 | 1,025 | 383 | 374 | 166 | 140 | 126 | 149 |
7.0% | 18.9% | 9.4% | 11.3% | 13.6% | 10.7% | 11.8% | 10.2% | 11.4% | 9.5% | 12.8% |
特に、年金数理では、合格最低点が(60点から)50点に引き下げられてこの結果ですので、難易度は相当高かったものと推測されます。
なお、昨年と同じスケジュールであれば、3月中旬(注)には、合格率が公表される模様ですので、是非、日本アクチュアリー会ホームページをチェックしてみましょう。
(注)2017年3月17日に、資格試験結果についてのニュースリリースを業界紙向けに発信した旨のお知らせが会員専用ページで公表。
気持ちを切り替え、早速、次回の試験に向けて勉強を開始したり、また、首尾よく合格された方は転職活動をスタートしたりと、新たな目標に向かって進もうとしている受験生も少なくないと思います。(転職活動は、是非、VRPパートナーズで!)
そこで、今回のコラムでは、(有料講義を含む)勉強会や、第1次試験に比べて参考書が少ないと言われている第2次試験について、効果的と思われる勉強方法を、筆者自身の経験と反省を交えつつ、幾つかご紹介しましょう。
1.教科書の『目次』を常に持ち歩く
資格試験要領によれば、第1次試験の出題範囲は教科書に限定されますが、第2次試験は教科書以外からも出題されます。ただし、第2次試験の第Ⅰ部(専門的知識の判定問題)では、第1次試験と同様、教科書から出題されることが多いため、やはり教科書を理解することが、第2次試験においても重要となります。
一方、第2次試験の教科書は、各コース(生保、損保、年金)の2科目とも分量が多いため、各章の教科書を個別に持ち歩くことはできても、2科目の全ての章を常に持ち歩くのには限界があります。
そこで、筆者が実践したのは、教科書の目次をテキストファイルに入力し、フリーメール(例.GMAILなど)に添付またはメール本文に貼付して、すきま時間にスマホ等で閲覧するという方法です。こうすれば、重たく嵩張る教科書を持ち歩かなくても、常にその内容がチェックできます。
しかも、会社の休憩時間等でも、シャツの胸ポケット等にスマホを忍ばせておけば、いつでもどこでも目次がチェックでき、自然に各セクションの見出しやセクションの流れが頭に入るようになります。慣れてくれば、目次を見ただけで、大まかな内容が思い浮かぶようになり、さらに続ければ、各セクションにどのような論点が書かれているかまでイメージできるようになります。
アクチュアリー試験に限らず、教科書の論点や流れ(ストーリー等)をしっかりと理解することは、資格試験において極めて重要なポイントですね。
2.初学者はノートを作らない
これは、筆者の失敗体験から得た教訓なのですが、最初から気合いを入れてノートを作ろうとすると、そのこと自体が目的化されてしまい、極端な場合、そのノートが手元になければ勉強が進まないという悪循環に陥ります。
特に、第2次試験を始めて受験される方は、まず、教科書の全体像を一通り読み、例えば、実務経験の乏しさ等から難しいと感じる点を(紐綴じされている)ノートではなく、差し替えや並び替えができるようなルーズリーフにまとめていくと良いでしょう。ルーズリーフであれば、1ページ単位での持ち運びも自由ですし、オモテに問題を、ウラに解答等を記載しておけば、ちょっと大きめの『単語カード』のようにも使えます。
1.と共通しますが、とにかく、常に教材を持ち歩いて、すきま時間を有効活用することが早期合格の秘訣です。
3.週間スケジュール作成
司法試験の予備校で、あるカリスマ講師がその著書において、『社会人の勉強時間は1週間で30時間が限界』というコメントをされていました。確かに、平日の昼間に仕事に従事している立場では、土日をフル活用しても30時間が限界に思えます。
これから勉強計画を立てようと考えている人は、そもそも自分にはどれくらい勉強時間が確保できるのか、という点から把握されるのが良いでしょう。
なお、週休二日で仕事をされている方は、ついつい祝日を土日並みにフル活用しようと考えてしまうかもしれませんが、これはオススメしません。その代わり、祝日は、スケジュールの遅れを取り戻したりする予備日として確保しておき、もし、スケジュール通りに勉強が進んでいた場合には、自分自身への『ご褒美』として、好きなことを1日中やってみるというのも良いでしょう。
もちろん、『自分は30時間の壁を突破してやる!』と意気込んで、限界に挑戦するのも悪くはありませんが、試験勉強は長丁場です。適度な息抜きが必要ですよ。
4.ホームページ等のチェック
時事問題対策として、業務時間中に会社のパソコンで生命保険会社、金融庁、日本アクチュアリー会など、ホームページを定期的にチェックするのも効果的です。特に、金融庁の報道発表資料やパブリックコメント等をチェックすれば、保険業界の時事問題が豊富に列挙されていますので、そのまま、第2次試験ネタに使える可能性が十分あります。
ホームページであれば、勤務時間中に“堂々と(笑)”業務と称して試験勉強できる点も魅力です。
さらに、勤務先で、いわゆる“保険業界紙(例.保険●●新聞など)”を購読されている場合には、最低でも週一回程度、定期的に内容をチェックする習慣を身につければ、時事ネタ等が自然と目に飛び込んでくるでしょうし、他の人と雑談するような機会でも話題に困ることはないでしょう。時には、経営者インタビューなどもあるため、ホームページ上のニュースリリースなどでは把握しにくい情報もあったりする点が、業界紙の魅力です。
5.ブログの立ち上げ
最近では、特殊なITスキルがなくても、簡単にブログを立ち上げることが可能になっています。思い切って、アクチュアリー試験勉強のブログを立ち上げて、日々の勉強内容を日記のような感じで残していき、可能であれば閲覧者からのコメント等も寄せてもらうようにすれば、自分自身の勉強スケジュールの管理やモチベーションの維持にもつながることでしょう。
ただし、ノート作成と同様、ブログ作成そのものが目的化してしまう可能性もありますので、その点は注意しましょう。
6.勉強会への積極的な参加
東京や大阪など大都市圏では、アクチュアリー試験の私的な集まりが開催されていたり、有料ではありますが、専門の講座等も増えつつあります。
特に、社会人の方は『お金で時間を買える』というビジネスチャンスを理解されているでしょうし、自腹をきれば後戻りできない気持ちも高まるでしょう。そもそも、手元に余裕資金がなければ、お金の浪費に情熱を傾けることもないでしょう(笑)
また、地方に在住されている方もネット環境さえあれば、気軽に参加できる掲示板のような仕掛けも用意されていますので、工夫次第で、いくらでも勉強の環境を整えることも可能です。
今回ご紹介した勉強方法は、いずれも筆者が受験時代に実施したもので、受験生仲間と談義しながら試行錯誤の末に編み出したものです。普遍的に正しい勉強法というものは存在しないかもしれませんが、結局、自分に相応しい勉強スタイルを早く発見できた人が、早期合格するという点では全員一致でした。少しでもヒントになれば幸いです。
(ペンネーム:活用算方)