アクチュアリー試験まであと1ヶ月となった。
通常であれば、試験直前対策などをコラムとして伝授すべきかもしれないが、その当たりは、2年前のコラム(アクチュアリー試験の心得)を参照していただくとして、今回は、受験生のうち、学部3回生または修士1年生に向けて、就職活動、特に、アクチュアリー採用を目指す方々に向けてメッセージを送ろう。
来年4月に就職活動が本格的にスタートし、保険会社や信託銀行などのホームページにも採用情報の専用サイトが創設され、個人情報やエントリーシート等の登録、インターンシップの案内など、就職活動が本格化していく。
そこで、アクチュアリー採用を目指す方に、応募者および面接官の両方の経験者として注意すべき点を幾つか列挙してみよう。
大抵の会社では、まず、志望者のエントリーシート等の情報を事前に登録または郵送させて、そこから第1次面接や筆記試験などの案内を個別に行う場合が多い。その際、企業の人事担当者に初めて接する情報が、このシートとなる。このため、シート作成には入念な配慮が必要となることは言うまでもない。
経験上、多くのシートを拝見してきたが、やはり、シートの内容と実際に面接した時の印象は面白いほど一致している。換言すれば、シートで優秀と思われる人材は、面接する必要はほとんどないという印象が多い。
では、シート内容の秘訣とは、何か?
キーワードは、ラブレター(笑)
好きな人に向かって、会わずに電話もせずに、どうすれば相手に気に入ってもらえるかを考えれば、自ずと良い表現が生まれてくる。最低でも、以下の3点はスラスラと言えるレベルでなければ、逆に、その人(彼氏、彼女)にはラブレターを出すべきではない。
(1)自分はどういう人間か? ⇒ 自己アピール
(2)なぜ、その人(彼氏、彼女)が好きなのか? ⇒ 志望動機
(3)自分と付き合うとどのようなメリットがあるか? ⇒ 会社貢献
例えば、アクチュアリー採用の場合、『自分は大学で確率統計を勉強しているので、アクチュアリーを目指したい。』という応募者を結構見かけてきたが、残念ながら、これだけでは、100点満点中、30点の回答だ。
何故か?
それは、上記の(1)~(3)が網羅されていないからだ。
特に、上記の(2)について、面接の際、私が必ずする質問が1つある。それは、『当社のディスクロージャー資料で、一番気になった記事を教えてください。』だ。
『ディスクロージャー資料』とは、文字通り、会社の『顔』だ。会社のホームページにアクセスすると、大抵『会社情報』というメニューがあり、そこから『ディスクロージャー資料』にたどり着ける場合が多い。
ラブレターを出そうとして、相手の『顔』を見ないまま出す人は恐らくいないだろう(笑)
どんなことでも良い。例えば、『御社は昨年、●●という新商品を出されているが、この商品を開発した理由は?』とか『商品開発のかかる時間はどのくらいなのか?』あるいは思い切って『商品開発が多忙を極めると、残業はもちろん、休日出勤もあるのか?』など、『商品開発』をキーワードにして、面接官に失礼にならない程度で、関連する質問をいくつも準備しておくのが効果的だ。
上記の表現は、『商品開発』の部分をアクチュアリー業務である『決算業務』や『リスク管理』に置き換えても良い。ただし、中途半端な質問はかえって墓穴を掘る可能性もあるため、背伸びして『ソルベンシーⅡの準備は進んでいるのか?』という質問をしてしまい、逆に、『それでは、ソルベンシーⅠとソルベンシーⅡの違いを簡潔に説明してください。』と聞かれて、シドロモドロになった応募者もいた。
無理に深堀の質問を用意する必要はない。例えば、決算業務に関心があれば、『損益計算書を拝見したが、直近の保険料等収入が●●億円で前年に比べて▲▲%減少している。経営的に大丈夫か?』といった質問も良いだろう。この場合、単に、『保険料が減っていて心配だ。』というだけでなく、具体的な数字を挙げて、専門用語にもある程度馴染んでいる点をアピールすると好印象だ。『保険料収入』ではなく『保険料”等”収入』と言えれば文句なしだろう。
逆に、(こんな人はいないと思うが)面接官からの一方的な質問だけに答えて、自発的な質問ができない人材は内定獲得が厳しいだろう。
『自発的質問がない』=『当社に関心がない(薄い)』と判断されるからだ。
最後に、面接時には、必ず相手の目を見ながら、ゆっくりと話すこと。目を見るのが恥ずかしいという人は、目の周辺(例.鼻やおでこなど)でも良い。
『(アクチュアリーは)頭は良いが目を見て話せない。』、という笑えない意見も少なくないので、注意したい。
(ペンネーム:活用算方)