昨年末から世間を大いに賑わしている『フジテレビ問題』ですが、特に、トップアイドルの下品なニュースと共に、ジャニーズ問題に負けず劣らずの話題で週刊誌やYouTubeなど、特定のメディアが大いに盛り上がっているようですね。
一方、(金融持株会社の)リスク管理部門の管理職(GM)としても、純粋なリスク管理の観点から日々の報道を如何にして実務に落とし込むか、常に考察を加える日々を送っています。
そこで今回のコラムでは、一連の報道(含.YouTube などによる関係者暴露など)を踏まえた上で、同じ轍を踏まないようにするためのいくつかの注意点を思いつくまま、順不同で列挙してみましょう。
1.内規違反
フジテレビに限らず、ある程度の規模の会社であれば、社内規定を始めとするガバナンス態勢が構築されていて当然のはずです。
さらに、余程の悪徳企業でない限り、コンプライアンス規定には、“役職員はコンプライアンス違反事例を見聞きした場合には、直ちにコンプライアンス部門へ報告または内部通報制度を利活用”という趣旨の規定がなされているはずです。
しかし、経営トップである社長にまで本事案があがっていたにも関わらず、被害者からの訴えに関する情報をコンプライアンス部門に共有せず、結果的に、トラブルを長期間にわたり放置した形になりました。
流石に、“内規違反で停波命令”と行かないまでも、せっかく作ったルールが社内に徹底されていないのであれば、そもそもルールがない「無法地帯」と判断されても仕方がないように思います。
恐らく、主務官庁(総務省)によるオン/オフサイトも徹底されていないように感じます。(←保険会社と異なりテレビ局はそれほど多くの会社があるわけでもなく、簡単に立ち入り検査できそうですが。
天下りの存在が当該検査の阻害要因になっているのであれば、まさに本末転倒ですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2794O0X20C25A1000000/
ちなみに、同社ホームページのコンプライアンス方針(例.グループ全体が常に社会全体に思いを馳せ、「高い法令遵守の意識」「使命感」「倫理観」を持ち続けなければならないと認識)が悲しく響きます。言葉にすることは極めて簡単ですが実行できるかは。。。
https://www.fujimediahd.co.jp/corporate/compliance.html
2.被害届の提出
週刊誌報道やYouTubeが真実だとすれば、セクハラの域を超えて、傷害事件とみなせるほどの重篤な犯罪が行われたように思います。
もちろん、被害者ご自身が“大事(おおごと)にしたくない”との意思があるため、被害届が出せなかったという事情があるかもしれませんが、もし、筆者が被害者の身内であれば、せめて被害届を提出することを勧めます。
なお、“匿名通報ダイヤル”という制度も存在するようですので、被害者に危害が及ぶことなく捜査が行われることも可能なようですね。
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/jiken/3619.html#:~:text=%E5%8C%BF%E5%90%8D%E9%80%9A%E5%A0%B1%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%8C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B6%E5%BF%83%E9%85%8D%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
3.謝罪会見
結果的に株主からの圧力に屈して、10時間以上の会見を行う羽目になるのですが、それにしても、1回目の会見はマスコミの一員としてあまりにも誠実さに欠ける内容となったのが非常に残念です。
その道のプロ(例.桜美林大学の西山先生、弁護士の亀井先生等)に何故相談しなかったのかが本当に不思議ですが、“フジテレビ村”とでも言うべき、自分たちのご都合主義で決めた“他人事意識”を今一度、見直す必要がありそうですね。
“楽しくなければテレビじゃない”から“コンプラなければテレビじゃない”にスローガンを直ちに改正すべきかもしれません。
4.株主からの要請
“モノ言う株主”というワードが強烈に印象的だった、ライブドア・村上ファンド事件も記憶に新しいところですが、彼らの唯一(失礼!)といっても過言ではないことは、株主総会などできちんと株主として発言するという点かもしれません。
それまでは、いわゆる“持合い”というナアナアの世界で安定株主・物言わぬ株主として機関投資家である保険会社などの金融機関が君臨してきたように思います。
トランプ大統領による“関税ショック”で、日韓の消費税がゼロに!?という見出しに小躍りした方も少なくないかもしれませんが、結局、大国から指示されなければ何も変わらない体質から脱却して、(監督指針が大好きな)自己責任原則に基づく経営姿勢が望まれますね。
5.スポンサー対応
相次ぐスポンサー企業の脱退申出でCMの大半が「ACジャパン」に差し替えられていますが、ACジャパンといえば東日本大震災の時に一斉に放映されたことも記憶に新しいところです。
一方、テレビを見ていると「えーしー」という甲高い音に恐怖感やトラウマを感じられる方も、もちろんいらっしゃるようで、なかには“ウザイ。なかやまきんにくん。”がトレンドワードになった時期もあったようです。
たまたま、「ACジャパン」のCMに起用されただけですが、何度も登場してしまうと流石に毛嫌いされるのも仕方ないかもしれませんね。
6.不動産事業
フジテレビの直近の決算発表資料:
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/46760/fee7d077/547e/4103/8273/8584957d3ed8/20240521151457579s.pdf
の8ページでは、事業セグメントのうち「都市開発・観光事業」の営業利益率が最も高く、ホリエモンがYouTubeで連呼している「テレビ局は不動産事業が活発」というご見解も大いに頷けます。
もちろん、リスク管理の観点からも「経営の多角化」は重要な経営政策でして、かくいう筆者もアクチュアリー試験対策講座の「副業」を10年以上続けさせていただいております。
7.ワンマン経営
創業者でなく大株主でもない人物が、実に40年近く役員に君臨できてしまう企業風土に、果たして未来はあるのでしょうか?
もちろん、ワンマン経営でも万事うまく行く会社もあれば、業務提携が決裂してしまった某自動車メーカーには役員だけで60人いるそうですので、まさに、“船頭多くして船山に上る”状態ですね。絶対に入社したくない会社です!
いかがでしたか。フジテレビ続いて、ついにTBSも芸能人との懇親会にアナウンサーが同席されていたことを認めた模様です。貸金庫事件同様、次はどの局(メガバンク)がターゲットになるのでしょうか。
(ペンネーム:活用算方)
2025年02月25日 (火)
リスク管理の観点からみたフジテレビ問題
