アクチュアリー試験の出題範囲は、毎年6月末頃に公表される『資格試験要領』に記載されていますが、同要領によれば、第1次試験については「第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するかどうかを判定することを目的とする」という観点から、出題範囲は(アクチュアリー会が指定する)教科書に限定する旨が規定されています。
この“出題範囲は教科書に限定する”とは、問題を解くために必要な知識が“教科書”に記載されている趣旨であると考えられますが、教科書の練習問題と“同じ問題”が出題されるのかなと考える受験生がいるかもしれません。
実際、教科書と同じ問題が出題されることもあります。
例えば、生保数理の平成19年度問題1(3)は教科書(上巻)203ページ問題(13)と、また、生保数理の平成25年度問題1(5)は教科書(上巻)171ページ問題(3)と、それぞれ同じ問題です。
実は、教科書以外からも、“同じ問題”が出題されていることをご存知でしょうか?
例えば、数学の平成16年度問題1(2)は、『明解演習数理統計(共立出版)小寺平治著』の18ページ例題23と、また、『数学2』の平成8年度問題3は、『詳解 確率と統計演習(共立出版)鈴木七緒、安岡善則、志村利雄共編』の152ページ例題【6】と、それぞれ同じ問題です。
特に、小寺氏の本は受験生の間で有名な本のようで、勤務先の先輩からこの本を教えてもらったおかげで、アクチュアリー試験が突破できたというエピソードを聞いたことがあります。
なお、平成16年度問題1(2)は、いわゆる“破産の問題”として有名ですが、小寺氏の本と同じく、『勝者が敗者にお金を渡す』という設定で出題されました。しかし、勝者が敗者にお金を渡すという設定が一般的ではないという観点から、『敗者が勝者にお金を渡す』という設定で解答した場合でも正解にするという取扱いがなされた模様です。(現在、アクチュアリー会ホームページで公表されている“過去問”では、『敗者が勝者にお金を渡す』という設定になっています。)
平成12年度からアクチュアリー試験科目が変更され、例えば、従前の「数学1」、「数学2」の2科目は「数学」の1科目に統合されましたが、上記の2冊はいずれも確率と統計が1冊にまとまって、かつ、各ページの例題に丁寧な解説が記載されていますので、仮に、同じ問題が出題されなかったとしても、アクチュアリー会が指定する教科書・参考書の次に、「数学」の副読本として是非、揃えておきたい本と言えるでしょう。
もちろん、教科書および過去問を繰り返し解くことが、第1次試験のオーソドックスな攻略法であることは言うまでもありませんが、特に、数学は市販の本が多数ありますので、教科書および過去問に慣れ親しんだ受験生の方々は、今回紹介した本にチャレンジされても良いかもしれません。