2024年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保1について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。
1.問題数等
問題数および配点は昨年とほぼ同じでしたので、戸惑った受験生は少なかったかもしれません。
また、“文字数”については、昨年同様、“文字数の制限”が指定されています。これは、昨年と同様ですが、「生保2」では文字数が「上限」であるのに対し、「生保1」では「程度(目安)」ですので、両科目を同時受験される場合は、注意が必要ですね。
2.各問題のポイント
問題1(1)
講評:責任準備金対応債券に関する問題です。経済価値ベースのソルベンシー規制導入後は、満期保有目的の債券と並んでその取扱いが注視されるため、時事ネタといえる出題かもしれません。
問題1(2)
講評:危険準備金の積立・取崩基準に関する出題です。ご案内のとおり、経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に併せて、当該基準も見直されますので、本問も時事問題と言えるかもしれませんね。
問題1(3)
講評:経済価値ベースのソルベンシー規制におけるリスク・マージンに関する出題です。「生保2」では教科書改訂で同規制にかかる論点などが追加され、また、金融庁からも適時適切な情報提供がなされていますので、比較的解きやすかったかもしれません。
問題1(4)
講評:監督指針のうち「第三分野保険のストレステスト及び負債十分性テスト」に関する部分からの出題でした。こちらも、経済価値ベースのソルベンシー規制を踏まえて、ストレステストの在り方などを含めた時事問題と言えるかもしれません。
問題1(5)
講評:生命保険会社の自己資本が有する4つの機能という伝統的な問題です。こちらも、経済価値ベースのソルベンシー規制を踏まえて、自己資本の在り方に関する時事問題と言えるかもしれません。
なお、今後の受験対策としては、「区分経理における全社区分の4つの機能」との類似点や相違点を暗記されると良いかもしれません。
問題1(6)
講評:生命保険会社の区分経理における商品区分について、監督指針を踏また説明問題です。経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に併せて、内部管理会計等も見直される可能性が高いため、区分経理が出題されたのかもしれません。
問題2(1)
講評:上述の問題1(4)と同様にストレステストに関する出題ですが、統合的リスク管理の一環で行うという前提条件がより普遍的なものとなっています。
なお、某大学教授曰く、過去に破綻した生命保険会社では、取締役会および主務官庁に対して「楽観的シナリオ」のみを報告された事例があるように漏れ聞こえてきますが、ストレステストを含む悲観的シナリオも、より一層重視されるべきですね。
問題2(2)
講評:利源分析のうち「費差損益」および「解約・失効益」についての出題です。予定事業費枠およびその考え方や継続率変動が当該損益に与える影響など、内部管理会計としての重要論点からの出題と言えるでしょう。
問題3(1)
講評:契約者(社員)配当に関する出題でしたが、伝統的な論点であるため、そろそろ出題されてもよい頃と予想された受験生も少なくなかったように思います。
特に、金利水準が徐々に上昇基調にありますので、保有債券などの含み損をうまくかわしつつ、利差益配当率を中心とする増配基調の流れに即した時事問題と言えるかもしれません。
問題3(2)
講評:経済価値ベースの保険負債評価に関する出題でしたが、こちらも時事問題と言えますね。ただし、問題文の最後に、“2025年度末から適用が予定されている「経済価値ベースのソルベンシー規制」については説明する必要はない。”とありますので、試験対策として、例えば、FT(フィールドテスト)の仕様書や金融庁からの資料などを熟読された受験生は、拍子抜けされたかもしれませんね。
なお、“経済価値ベースの保険負債評価を内部管理として経営に活用”という問題文は、まさに、ESRをどのように活用していくのか、ステークホルダーなどへの説明や現在のSMRとの“段差”をわかりやすく説明する能力も、アクチュアリーにとっての重要な役割と言えるでしょう。
3.次回以降に向けて
いかがでしたか。昨年のコラムにも記しましたが、第Ⅰ部対策としては、やはり、教科書を中心として監督指針や実務基準等、さらに余裕があれば法令や告示等の理解が極めて重要です。また、第Ⅱ部対策としては、繰り返しで恐縮ですが、やはり、常日頃から課題意識を持ちながら、自分自身の意見や考え方を“自分の言葉で分かりやすく相手に伝える練習”をしておくことも大切です。当たり前のことを当たり前に実行できることは、決して当たり前ではありませんね。
(ペンネーム:活用算方)