2024年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保数理について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。
1.問題数
2023年度と同じ問題数および配点でしたので、大きな混乱はなかったものと思われます。
したがいまして、昨年と同様に、2時間で8問、つまり15分1問のペースで解ければ、2時間で40点近く獲得できますので、残り1時間で20点弱という理想的な時間配分になるでしょう。
2.各問題のポイント
問題1(1)
解法:終身保険において、第5保険年度末の平準純保険料式責任準備金を問題です。
問題文で「t=1」の責任準備金が与えられ、保険料払込が終身(=全期払)ですので、教科書(上巻)183ページ問題(2)を学習された方は取り組み易かったかもしれませんね。
問題1(2)
解法:3重脱退残存表における中央脱退率および絶対脱退率に関する問題です。
特に、中央脱退率と絶対脱退率との「1対1対応」が前提かもしれませんね。
問題1(3)
解法:確定年金の現価および終価から予定利率を求める問題です。最近の出題傾向では、問題1(1)に登場してもおかしくなく、基本的な問題と言えるでしょう。
問題1(4)
解法:教科書『第9章 解約その他諸変更に伴う計算』に登場する契約変更(払済保険)の問題です。最近は、払済保険と延長保険がセットで登場することが多いように見られますが、払済保険単独の出題は久しぶりのように思います。
問題1(5)
解法:死力から条件付連生保険の死亡率を求める問題です。類題としては、例えば、2020年度問題1(6)がありますが、被保険者数が3名という点が特徴的かもしれませんね。
問題1(6)
解法:「生存者総数に占める就業不能者数の割合」が問題文に登場すれば、教科書(下巻)160ページ(13.1.27)を用いる頻出論点です。
問題2(1)
解法:定常状態にある社会で定常状態が崩壊した場合の問題です。類題としては、例えば、平成18題1(2)があります。ポイントとしては、定常状態崩壊後も各年齢の死亡率は不変という点ですね。
問題2(2)
解法:三大疾病罹患に関する2脱退残存表に関する問題で、これまで出題されていないようにみえます。ただし、「三大疾病罹患」を「就業不能」と考えれば、教科書『第13章 就業不能(または要介護)に対する諸給付』の公式が使えます。
問題2(3)
解法:脱退残存表に関する公式の正否問題です。教科書(上巻)『脱退残存表』を理解した受験生にとっては、比較的易しい問題かもしれません。
問題2(4)
解法:養老保険における予定死亡率変更前後での責任準備金の増減に関する問題です。なお、教科書(上巻)『第6章 計算基礎の変更』に関連する問題ですが、それ以外の章における内容で解けます。
問題2(5)
解法:死亡時に既払込(営業)保険料 を払う生存保険の問題です。問題文からは、当該支払に「利息」を付すことが明記されていないため、利息なしパターンとして、IAなどの記号を用いれば良いでしょう。
問題2(6)
解法:平準純保険料式責任準備金を全期チルメル式責任準備金で表す問題です。
特に、α_0の定義式が特徴ですので、教科書(下巻)『第8章 実務上の責任準備金』の公式を用いれば良いでしょう。
問題2(7)
解法:2つの保険の一時払純保険料がすべての年齢で等しくなるとき、かつ、人数を表す式に現価率vが登場するため、平成20年度問題1(9)を思い出すことができると良いでしょう。
問題2(8)
解法:手術給付に関する問題で、教科書(下巻)『第14章 災害および疾病に関する保険』の公式を用いれば良いでしょう。
問題3
解法:終身保険において、予定利率のビルトイン方式を適用した場合の問題です。問題文にある通り、支出現価および収入現価をそれぞれ契約当初k年間とk年経過後に分けて考えれば良いので、問題文に沿って解答すれば良いでしょう。
問題4
解法:親子連生保険の問題ですが、子供の死亡時に死亡保険金として既払込保険料を支払いますが、払込免除の保険料が含まれるため、幾分、計算が楽になるような設定になっています。余力があれば、教科書(下巻)117ページ問題(5)(6)を比較しながら解くと良いでしょう。
3.次回以降に向けて
いかがでしたか。今回の生保数理は、昨年に続いて、比較的オーソドックスな問題が多かった印象でして、難易度も昨年とほぼ同程度に感じました。昨年のコラムにも記しましたが、過去問はもちろん、教科書の問題も一通りチェックしておくことが早期合格の秘訣の1つと言えるでしょう。
(ペンネーム:活用算方)