2024年のアクチュアリー試験まであと数か月となり、受験生におかれましては、そろそろラストスパートに突入される時期かと存じます。
また、CBTによる試験もスタートしていますので、特に初受験の方は是非、体験版で、操作方法などを事前にチェックしておきたいですね。
そこで、今回のコラムでは、アクチュアリー試験のうち「第1次試験(生保数理)」について、重要性が高いと考えられる論点を幾つかご紹介いたしましょう。
なお、当コラムに関連する過去のコラム(https://www.vrp-p.jp/acpedia/4249/、https://www.vrp-p.jp/acpedia/3677/、https://www.vrp-p.jp/acpedia/3162/、https://www.vrp-p.jp/acpedia/2366/)も併せてご覧いただけますと幸いです。
1.昨年の合格率
以前のコラム(https://www.vrp-p.jp/acpedia/4586/)でご紹介いたしました通り、2023年度の生保数理の合格率は35.6%(https://www.actuaries.jp/info/pdf/20240329.pdf)という高水準でしたので、今年は難化が大いに予想されるところです。
したがって、今年の対策としては、過去問のうち、
1) 合格率が低かった年の過去問を重点的に学習すること
2) 特に、難問と呼ばれる過去問を重点的に学習すること
といった試験対策が合格への秘訣となるかもしれませんね。
2.難問例(その1)
昭和60年度の保険数学Ⅱ(問題3)は、所謂『瞬間脱退率』に関する出題でして、恐らく、初出問題と言えるでしょう。
現在の教科書で参照すれば、『第3章 脱退残存表』および『第13章 就業不能(または要介護)に対する諸給付』に近い概念ですが、主集団(就業者集団)からの脱退は2種類であり、副集団(就業不能者集団)からの脱退は1種類であることを利用する必要があります。
また、特に、副集団に特化した場合、主集団からの異動もありますが、少なくとも、『瞬間脱退率』に関していえば、当該異動は全く影響しない点も重要な論点ですね。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/S60/S60hs2.pdf
余力があれば、是非、平成6年度(保険数学2)問題4にもチャレンジ頂きたいところです。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H06/H6hs2.pdf
3.難問例(その2)
昭和42年度の保険数学Ⅱ(問題2)は、所謂『責任準備金再帰式を辺々引く』出題でして、具体的には、予定死亡率および予定利率の両方を動かした時に、出来上がりの数式に辿り着けるのが至難の業という難問ですね。
変形テクニック自体は、残念ながら、現在の教科書には明記されておりませんが、むしろ、本問のような過去問を活用しながら、是非、応用力を身に着けたいところです。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/S42/S42hs2.pdf
余力があれば、是非、昭和63年度(保険数学Ⅱ)問題1にもチャレンジしたいですね。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/S63/S63hs2.pdf
4.難問例(その3)
昭和48年度の保険数学Ⅱ(問題6)は、所謂『条件体』に関する出題でして、実務上で活用される『P増し、S削減』のうち、S削減期間を求める大変ユニークな問題です。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/S48/S48hs2.pdf
余力があれば、是非、平成7年度(保険数学1)問題1(5)にもチャレンジしたいですね。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H07/H7hs1.pdf
5.難問例(その4)
平成7年度(保険数学1)問題1(3)は、所謂『完全平均余命の微分結果』に関する出題でして、教科書(上巻)68ページ問題(16)の結果を利用しなければ(恐らく)解けない点が特徴です。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H07/H7hs1.pdf
なお、余力があれば、是非、昭和54年度(保険数学Ⅰ)問題2にもチャレンジしたいですね。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/S54/S54hs1.pdf
6.難問例(その5)
昭和60年度(保険数学Ⅰ)問題1(5)は、所謂『年額tの割合で支払われる年金』に関する出題でして、日本語の解釈力が問われる問題です。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/S60/S60hs1.pdf
なお、余力があれば、是非、平成24年度(生保数理)問題1(1)にもチャレンジしたいですね。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H24/H24B.pdf
7.難問例(その6)
平成8年度(保険数学1)問題1(4)は、所謂『年間を通して一様に入ってくる』出題でして、この「一様性」に対する理解力が問われる出題です。
この手の問題では、必ずと言っていいほど、『定常状態』や『定常社会』または『開集団』という単語が登場することが多いのですが、本問の場合、一切それらの単語が登場しないことも難易度を挙げている一要因かもしれません。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H08/H8hs1.pdf
8.難問例(その7)
平成7年度(保険数学1)問題1(2)は、所謂『○○歳以上』に関する出題でして、この「以上」に対する解釈で答えが非常に難しくなる点が特徴です。
https://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H07/H7hs1.pdf
点で考えるのか、それとも、面で考えるのかという数学的(図形的)な思考力を問う意味においては、受験生の力量の差異が如実に表れる問題の1つと言えるかもしれません。
いかがでしたか。昨年のコラムでも触れましたが、アクチュアリー試験は直前になればなるほど、緊張感のために、なかなか集中できない日々が続く可能性もあります。今回ご紹介した内容をしっかりと押さえた上で、良い結果につながることを祈念しております。
(ペンネーム:活用算方)