これまで、社内異動や転職など、様々な場面で数多くの“引継ぎ”を行ってきましたが、引継ぎが終わった後、“これも引き継ぐべきだった”と後悔することが少なくありませんでした。
そこで、今回のコラムでは、自分自身の備忘録を兼ねて、引継ぎのコツを幾つかご紹介いたしましょう。
1.年間スケジュール
引継ぎで重要なことは、常に相手のことを慮ることに尽きるように思います。いわゆる総論からスタートすることを心がけて、各論からスタートしないことが大切ですね。
では、そもそも総論とは何か?ということが悩ましいですが、筆者の経験上、『年間スケジュール』を最優先で示すことが重要と考えます。
つまり、引継ぐ者・引き継がれる者に共通の尺度として、何時、何が行われるのかを最初に頭に入れる必要があります。
したがって、引継書の最初のページに年間スケジュールがあれば、スムーズな引継ぎができるでしょう。
2.カウンターパート
現在進行形のプロジェクトがある場合には、後任者をカウンターパート(例.プロジェクトの相手先など)に真っ先に紹介することが求められます。
特に、当社側がフィーを受領するプロジェクトでは、引継ぎが上手くいかない場合、“もう取引はしない”と断られることが最大のリスクと言えるでしょう。
逆に、当社側がフィーを払っている場合でも、後任者を速やかに連携することで、フィーに見合う成果を得られる機会を確保することも重要です。
当社側の引継ぎが上手く行かなかったことを理由として、プロジェクト全体の質が低下することは絶対回避すべきですね。
3.積み残し課題
担当業務などに積み残された課題が存在する場合には、上述の年間スケジュールと併せて、何をいつまでに解決する必要があるかも引き継がなければなりません。
最悪なのは、“時間がなかったので引継ぎが上手く行かなかった”と言い訳をして、結果的に大きな手戻りが生じてしまうことです。
その意味では、引継ぎが決まりそうな段階で、自社内に引き継ぐ相手がいる場合には、早めにプロジェクトに参画させるなどの措置を講じる必要があるかもしれませんね。
4.予算有無
ヒト・モノ・カネは、ありとあらゆるビジネスにおいて共通の重要アイテムですが、特にお金がからむ案件の引継ぎでは、細心の注意を払う必要があります。
特に、予算取りを行っている最中にやむを得ず引き継がなければならない場合、予算が無事獲得できるまで責任を持ってフォローする姿勢も大事になります。
限られた資源を有効活用することは、環境問題のみならず全てのビジネスに通用する絶対的要件と言えるでしょう。
5.過去の成果物
引継ぎ者自身が作成した成果物はもちろん、参画プロジェクトの重要資料など、引継ぎに必要な関連資料があれば、必ず引き継ぎましょう。
特に、独自のルールで作成した資料や、極めて専門的なスキルが必要な場合には、当該資料の作成手順も含めて引き継ぐようにされれば、異動後・転職後にも良好な関係が維持できるでしょう。
6.専用フォルダの設置
引継ぎ資料を作成する際、引継ぎ専用のフォルダをイントラネットなどに設置しておくことも有効ですね。
特に、引継書に登場する補助資料(例.Wordファイル、Excelファイルなど)を当該フォルダに格納しておけば、引き継がれた方にとっても内容をスムーズに理解することができるでしょう。
7.名刺
在職中に受領した取引先の『名刺』も勤務先にとっての重要資産であることを念頭に置く必要があります。
特に、ライバル企業に転職する場合、当該名刺を新職場に持参して活用することは、守秘義務違反に問われる可能性も十分ありますので、くれぐれも無用な疑いをかけられることがないように注意したいですね。
なお、退職者の名刺の取扱いについて、裁判になったケースもあるようですので、より慎重な対応が必要になりそうです。
https://iikyujin.net/success_manual/detail/51321/
8.退職の挨拶
転職の場合、退職までの間に有給休暇消化を行いつつ、最終出社日などでは、在職中にお世話になった方々へメールなどで挨拶を行うことが一般的です。
その際、御礼や後任有無などを伝えることはもちろんのこと、何かあった場合に備えて、私用連絡先(例.携帯電話番号、メールアドレスなど)も記載しておけば、元勤務先に迷惑がかからないように配慮できるでしょう。
なお、筆者はこれまで「退職のご挨拶はがき」を出したことはないのですが、社会人の礼儀として当該はがきを必ず出す方もいらっしゃいますので、参考にしたいですね。
9.着任の挨拶
一方、転職のケースでは、前職でお世話になった方々へ新職場からメールなどで挨拶を行うこともあります。
ここでも、上述の通り、前職で得たメールアドレスの利用可否について賛否が分かれそうですが、新旧の所属先に対する損害を与えないことが前提であれば、大きな問題とならないようにも思われます。
むしろ、ライバル企業に転職することそのものが、職業選択の自由が憲法で保障されているとはいえ、ある種の信義則違反とも捉えられる可能性がありますので、転職時には注意したいところです。
もっとも、アクチュアリーのような“狭い世界”では、転職後に“挨拶がなかった!”と指摘されないように、慎重に着任の挨拶を徹底した方が無難かもしれません。
10.日本アクチュアリー会への異動届
筆者はこれまでの転職活動において、日本アクチュアリー会への異動届は、全て新所属の連絡担当者経由で行って参りましたが、今回初めて個人会員へ異動しました。
このため、当該異動届は、(新所属ではなく)旧所属から手続きが必要となることを初めて知りました。
幸い、前職メンバーとも良好な関係は構築できておりますので、スムーズな異動手続きができたことを大変ありがたく思います。
いつの時代でも、“人の和に如かず”を忘れないようにしたいですね。
いかがでしたか。雇用の流動化が叫ばれる中、自分自身の業務の棚卸しを含めて、いつでもどこでも引継ぎができる環境を整備しておけば、機動的な異動・転職活動につながるため、今を生きる社会人として具備すべき姿勢かもしれませんね。
(ペンネーム:活用算方)