アクチュアリー試験の合格率推移(2023年度まで)


2023年度のアクチュアリー試験につきましては、以前のコラム(https://www.vrp-p.jp/acpedia/4455/)で推計合格率などに触れましたが、「アクチュアリージャーナル第127号(2024年6月)」135ページ「事務局からのお知らせ」で、詳細なデータ(例.申込者数など)が公開されました。
そこで、今回のコラムでは、合格率などを時系列に眺めながら、気づいた点をご紹介いたしましょう。

1.申込者数

第1次試験および第2次試験の申込者数の状況は以下の通りです。
第1次試験(基礎科目)では、おおむね2度のピーク(平成22年度および2018年度頃)が見られ、第2次試験(専門科目)では、(特に生保二次で)平成24年度から(急)上昇が見られます。
このうち、第2次試験の(急)上昇については、後述の「4.合格率」にある通り、平成24~25年度の“第1次試験のビッグウェーブ(=高い合格率)”により準会員数が増加したことが原因と考えられます。
また、第1次試験(特に数学)の申込者数の減少が気がかりでしたが、昨年スタートした受験年齢引下げ(例.大学3回生など⇒満18歳以上)により、数学および生保数理で申込者数が増加に転じたのが大きな特徴ですね。
なお、他のグラフに合わせて、横軸が平成12年度から始まっていますが、アクチュアリージャーナルなどで当該年度の申込者数が不明でしたので、同年度のデータが空白になっている点をご容赦ください。

また、申込者数の平均および分散は以下の通りです。
このうち平均については、学生および文系出身の方々が受験しやすい、数学および会計・経済・投資理論で申込者数の平均が高く、生保・損保・年金数理については、(第2次試験を含めて)各業界(生保・損保・年金)の会員数に、ほぼ比例しているように見られます。
一方、分散については、損保数理が大きくなっていますが、これは、当該科目が平成12年度に新設され、他の科目に比べると比較的歴史の浅い科目であることから、受験者数が増加傾向にあることが原因と考えられます。

2.受験者数

第1次試験および第2次試験の受験者数の状況は以下の通りです。
後述の「3.欠席率」が安定していることから、申込者数の多寡に応じて受験者数も増減しています。申込者数と同様、第2次試験での平成24年度からの(急)上昇が目立ちますね。
なお、上述の「1.申込者数」にある通り、数学および生保数理で受験者数も増加に転じたのが大きな特徴ですね。

また、受験者数の平均および分散は以下の通りですが、両者とも、申込者数と同様の結果となっています。

3.欠席率

第1次試験および第2次試験の欠席率の状況は以下の通りですが、特に第1次試験では2022年度の大幅減少から一転、上昇に転じました。(←「2023年9月13日 (水)のコラム『アクチュアリー試験の合格率推移(2022年度まで)(https://www.vrp-p.jp/acpedia/4251/)』にある「3.欠席率(第1次試験)」のうち「2022年度の数値」が誤っていたため、当コラムで修正後のグラフを掲載しております。大変失礼いたしました。

なお、2022年度に欠席率が大幅に低下した理由としては、CBTが初めて導入され、受験会場が大幅に拡大したことで受験しやすくなったことが考えられますが、2023年度の(急)上昇の原因は、今後のデータ推移等を踏まえた分析が必要になりそうですね。

また、欠席率の平均および分散は以下の通りです。
このうち、平均については、第1次試験および第2次試験のそれぞれにおいて、科目間の差異が比較的少ないように見えます。
一方、分散については、損保系科目(損保数理、損保二次)で比較的高い傾向が見られます。上述の通り、他の科目に比べて受験者数の増加基調が影響しているのかもしれません。

4.合格率

第1次試験および第2次試験の合格率の状況は以下の通りですが、第1次試験の方が第2次試験に比べてバラツキが激しいことが分かります。
これは、第1次試験では各問題の配点があらかじめ決まっていることに加えて、正解・不正解が明確であり、部分点のウェイトが比較的少ないことから、問題の難易度に応じた年度ごとの差異が大きいことに起因しているように思います。
一方、第2次試験については、第1次試験と同様に各問題の配点はあらかじめ決まっているものの、特に、第Ⅱ部(論述問題)の採点基準が非公開であり、合格率に大きなバラツキが出ないように同基準を調整しながら安定した合格率が導かれているのかもしれません。

また、合格率の平均および分散は以下の通りです。
このうち、平均については、第1次試験では科目間の差異が比較的大きく、特に、年金数理および会計・経済・投資理論が高い傾向にありますが、第2次試験では科目間の差異が小さく、15%程度で安定しています。
なお、全体的に、第1次試験よりも第2次試験の合格率が低くなっていますが、これは、資格試験要領に明記されている通り、第1次試験では専門的知識のみが問われ出題範囲も教科書に限定されているのに対して、第2次試験では専門的知識に加えて問題解決能力も問われ、出題範囲が教科書に限定されていないため、第1次試験に比べて難易度が上がることを示唆しているものと考えられます。
一方、分散については、年金数理で高くなっています。やはり、平成25年度を筆頭に、数年に一度のペースで起こる“ビッグウェーブ”が影響しているのでしょう。

いかがでしたか。2024年度のアクチュアリー試験まであと数か月となりましたが、受験生の皆さまは、ラストスパートに勤しんでいる頃と思われます。皆さまの受験結果が是非、「合格率のグラフ」に含まれることを祈念いたしております。

 

(ペンネーム:活用算方)

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