8月に引き続き9月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
また、スケジュールの関係で、8月下旬のニュースが含まれている場合がありますことを何卒ご容赦ください。
1.死亡率、10年ぶり増加
国立がん研究センターの調査により、2021年の「年齢調整死亡率」が前年に比べて2.2%増加した模様です。
なお、東日本大震災の影響で2011年の同死亡率が一旦上昇しましたが、その後は減少傾向にありましたので、10年ぶりの同死亡率上昇です。
新型コロナウイルスの影響が考えられますが、同センター曰く、「2022年も増加し、2021年が日本人の死亡率トレンドの変わり目となった可能性がある」とのことです。
長寿化の歯止め、死亡率上昇トレンドなど、アクチュアリー試験(生保二次)の時事ネタにも繋がりそうですね。
https://www.ncc.go.jp/jp/information/researchtopics/2023/0831/slide_2021nihonjinno_zenshiinbetsushibouritsu_0831.pdf
2.打ち上げ成功
探査機と衛星の2つが搭載されている「H2Aロケット47号機」の打上げが成功しました。日本初の月面着陸を目指すものですが、米国の「アルテミス計画」にも利用される可能性がある模様です。(←“アルテミス”は“月の女神”という意味です。)
なお、H2Aロケットについては、これで47機中46機の打上げが成功し、成功率97.9%となった模様です。
https://www.asahi.com/articles/ASR972SPFR96ULBH00B.html
余談で恐縮ですが、90年代を生命保険業界で過ごした者の一人としては、「アルテミス(計画)」と聞くと、“生命保険会社の破綻処理”を思い出します。実際、金融庁資料『あおば生命の株式売却スキーム』によれば、アルテミスという名称のフランスの会社が登場します。日本における宇宙開発の“女神様”となることが期待されますね。
https://www.fsa.go.jp/p_fsa/news/newsj/f-20000627-0/10.pdf
3.保険金請求のための写真撮影
8月に猛威をふるった台風7号による災害について、「激甚災害」に指定される見込みになったもようですが、今月6日のTBSテレビ「News23」で、台風罹災時の写真撮影次第で火災保険金の多寡が異なる旨が報道されていました。
一言でいえば、罹災時の後片付けを行う前に、被害状況をきちんと写真撮影することで火災保険金をより多く受け取ることができるというものですが、一日も早い復旧を念頭においたままであれば、ついつい“証拠を残す”ことを失念しがちですね。
インタビューでは、“他人の復旧作業に注力し過ぎた余り、自分の自宅写真撮影を失念してしまい、結果的に修繕費用の一部を自己負担した”とコメントされた方もいらっしゃいましたので、日ごろからの防災意識や損害保険などの金融知識の大切さを痛感させられました。
損害保険協会を中心に、このような“啓蒙活動”を行っていただけているものと思いたいところですが。“契約者保護の精神”とはどうあるべきなのか、自戒を込めて改めて深く考えて欲しいと願うばかりです。
4.社長交代
上述の“ビッグモーター社事件”で、ついに大手損害保険の社長が辞任することとなった模様です。
なお、ご本人の社長就任年齢は51歳で、大手金融機関では最年少トップとして話題になった模様ですが、ひょっとすると、“若さ故の焦り”があったのかもしれません。
いずれにせよ、現在、金融庁による立ち入り検査が行われている模様ですので、今後の成り行きが大いに注目されるところですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB083HB0Y3A900C2000000/
5.手の内を開示?
ビッグモーター社事件に関して、上記の社長交代ではない損害保険会社に対して、金融庁から保険業法に基づく報告徴求命令が出されている模様です。
具体的な報告徴求対象は2022年6月の同社との取引停止前後の経緯であり、“競合他社に自賠責などの契約を奪われるかもしれないという危機感”がどの程度の信頼性があったのかなど、当時の状況をヒアリングする目的があるものと思われます。
なお、本件に限らず、主務官庁のご意向(ご威光?)を“敢えて報道機関にリークする”という姿勢は、(あくまでも噂レベルですが)それほど珍しいことではないと関係筋からお伺いした記憶もあります。
本件に当てはめた場合、敢えて記事を出すことによって、関係者の“忌憚なきコメントや本音”などを引き出す意味合いがあるのかもしれませんね。
https://toyokeizai.net/articles/-/703189
6.超長期住宅ローン
いわゆる“奨学金返済問題”が晩婚化・非婚化の原因ともいわれていますが、実際、奨学金の返済完了が40代に達するため、住宅購入はもちろん結婚すらできないという悲鳴をしばしば耳にします。
最長40年としていた住宅ローンの返済期間を50年に延ばす取り組みが金融機関で行われている模様ですが、下手をすれば、子供の世代にまで“借金”を背負わせることにもなりかねない点をどのようにコントロールしていくのか、金融機関としての“良心”が期待されます。
もちろん、団体信用生命保険を付保すれば、ローン債務者の死亡時に債務残高が解消されますので、相続時の「限定承認」も不要になりますが、人生100年時代において目減りする「公的年金収入」が懸念される中、老後破産という悲劇は回避したいですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB307O80Q3A830C2000000/
7.世界保険市場の見通し
世界保険市場に関して2033年までの見通しが出された模様です。
具体的には、10年後の生保収入保険料について、インドが世界第3位、日本は第5位になる見込みだそうです。
人口世界一を達成したインドの動向については、“クアッド”においても日本にとって大きな関心事であり、個人的には、カースト制度と生命保険との関係性にも非常に興味があるところです。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75972?site=nli
8.がん患者自殺リスク
がん患者が診断後2年以内に自殺するリスクは、一般と比べて約1.8倍高いことが厚生労働省の調査で判明された模様です。
以前、コンサルタントとして某生命保険会社の商品開発プロジェクトに参画した際、“保険会社の社会的使命として、がん罹患経験者向けに生命保険を提供することは大変有意義であると考えるが、いかんせんマーケットが小さく(≒150万人規模)、ビジネスになりにくい”というコメントをいただけたのがとても印象的でした。やはり、いくら壮大な理想論を振りかざしても、“ない袖は振れぬ”ということなのでしょう。
なお、国立がん研究センターのがん対策研究所室長による、「早期の段階でリスクの高い人を見つけてアプローチすることが大切」とのご指摘は、全くその通りと思います。
https://mainichi.jp/articles/20240408/ddm/005/070/008000c
9.「はんこ」が爆売れ?
筆者は昭和から平成に代わる頃に大学生でしたが、当時、消費税導入で「(1円玉を保管するための)小銭入れ」が爆売れしたというニュース記事を見た記憶がありますが、10月からスタートする“インボイス制度”により、「はんこ」が爆売れしている模様です。
そもそも、同制度は、事業者間の消費税額を正確に把握するための制度ですが、「(領収書の)隙間に登録番号を押すことで、既存の領収証が使い回せる」という事情が背景にある模様です。
新型コロナなどで在宅ワークが進展した結果、脱ハンコが進み、結果的にハンコ店が減少している中、同店にとっては特需といえそうですね。
10.年収の壁
年収130万円を超すと扶養から外れ、国民年金・国民健康保険の保険料を払う。
従業員101人以上の企業で週20時間以上働き年収106万円を超すと社会保険に加入。
いわゆる、「130万円の壁」、「106万円の壁」と呼ばれるものですが、一時的増収で130万円を超えても、2年までは扶養にとどまれる案が浮上している模様です。
抜本的な制度の見直しは2025年予定の「年金制度法改正」に向けて検討されるようですが、同年の「経済価値ベースのソルベンシー規制」の導入と併せて、よりよい制度設計が実現されることを期待したいですね。
https://www.asahi.com/articles/ASR9R6Q4MR9RUTFL00F.html
いかがでしたか。9月は“秋のお彼岸”ですが、20日に放送されたTBSテレビ「ゴゴスマ」で“おはぎの別名”が紹介されました。夏は「夜船」、冬は「北窓」と呼ばれるそうで、“(杵で)つかない餅(←夜に到着する船はいつ着いたのかが分からない)、月(ツキ)がない餅(←北窓からは月が見えない)”という言葉遊びが、なんとも風流です。
ちなみに、“春のお彼岸”は「ぼたもち」と呼ばれますが、これは、春の花「牡丹」に由来するそうです。(おはぎは秋の花「萩」に由来)https://topics.tbs.co.jp/article/detail/?id=692
(ペンネーム:活用算方)