確定拠出年金(DC)法令解釈 Vol2 用語の定義(前編)


本日はDC法令解釈の2回目です。

DC法の構成は以下のとおりです。

第1章 総則

第2章 企業型年金

第3章 個人型年金

第4章 個人別管理資産の移換

第5章 確定拠出年金についての税制上の措置等

第6章 確定拠出年金運営管理機関

第7章 雑則

第8章 罰則

附則

上記の中で、第2章の「企業型年金」において多くの規定が定められています。

3章が「個人型年金」について定められていますが、「企業型年金」の定めを準用する部分がかなり多くを占めています。

ですので、まずは基本として「企業型年金」を中心に解説を進めていこうと思います。

今回と次回とで、法第2条を解説しますが、こちらは「用語の定義」となる部分で、DC法を学ぶ上で非常に重要な事項になります。

(定義)

法第二条 この法律において「確定拠出年金」とは、企業型年金及び個人型年金をいう。

2 この法律において「企業型年金」とは、厚生年金適用事業所の事業主が、単独で又は共同して、次章の規定に基づいて実施する年金制度をいう。

3 この法律において「個人型年金」とは、連合会が、第三章の規定に基づいて実施する年金制度をいう。

4 この法律において「厚生年金適用事業所」とは、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第六条第一項の適用事業所及び同条第三項の認可を受けた適用事業所をいう。

5 この法律において「連合会」とは、国民年金基金連合会であって、個人型年金を実施する者として厚生労働大臣が全国を通じて一個に限り指定したものをいう。

6 この法律において「第一号等厚生年金被保険者」とは、厚生年金保険の被保険者のうち厚生年金保険法第二条の五第一項第一号に規定する第一号厚生年金被保険者(以下「第一号厚生年金被保険者」という。)又は同項第四号に規定する第四号厚生年金被保険者(以下「第四号厚生年金被保険者」という。)をいう。

7 この法律において「確定拠出年金運営管理業」とは、次に掲げる業務(以下「運営管理業務」という。)の全部又は一部を行う事業をいう。

一 確定拠出年金における次のイからハまでに掲げる業務(連合会が行う個人型年金加入者の資格の確認に係る業務その他の厚生労働省令で定める業務を除く。以下「記録関連業務」という。)

イ 企業型年金加入者及び企業型年金運用指図者並びに個人型年金加入者及び個人型年金運用指図者(以下「加入者等」と総称する。)の氏名、住所、個人別管理資産額その他の加入者等に関する事項の記録、保存及び通知

ロ 加入者等が行った運用の指図の取りまとめ及びその内容の資産管理機関(企業型年金を実施する事業主が第八条第一項の規定により締結した契約の相手方をいう。以下同じ。)又は連合会への通知

ハ 給付を受ける権利の裁定

二 確定拠出年金における運用の方法の選定及び加入者等に対する提示並びに当該運用の方法に係る情報の提供(以下「運用関連業務」という。)

8 この法律において「企業型年金加入者」とは、企業型年金において、その者について企業型年金を実施する厚生年金適用事業所の事業主により掛金が拠出され、かつ、その個人別管理資産について運用の指図を行う者をいう。

9 この法律において「企業型年金運用指図者」とは、企業型年金において、その個人別管理資産について運用の指図を行う者(企業型年金加入者を除く。)をいう。

10 この法律において「個人型年金加入者」とは、個人型年金において、掛金を拠出し、かつ、その個人別管理資産について運用の指図を行う者をいう。

11 この法律において「個人型年金運用指図者」とは、個人型年金において、その個人別管理資産について運用の指図を行う者(個人型年金加入者を除く。)をいう。

12 この法律において「個人別管理資産」とは、企業型年金加入者若しくは企業型年金加入者であった者又は個人型年金加入者若しくは個人型年金加入者であった者に支給する給付に充てるべきものとして、一の企業型年金又は個人型年金において積み立てられている資産をいう。

13 この法律において「個人別管理資産額」とは、個人別管理資産の額として政令で定めるところにより計算した額をいう。

(平一三法一〇一・平二四法六三・平二八法六六・令二法四〇・一部改正)

 

第一章 総則

(個人別管理資産額の計算)

令第一条 確定拠出年金法(以下「法」という。)第二条第十三項の個人別管理資産の額として政令で定めるところにより計算した額は、その計算の基準となる日における次に掲げる額の合計額とする。

一 その者の個人別管理資産に係る運用の方法ごとの当該運用の方法におけるその者の持分に相当する額(手数料、報酬その他の当該運用の方法に係る契約の変更又は解除に要する費用(その者の個人別管理資産から負担するものに限る。)があるときは、その費用に相当する額を控除した額)の合計額

二 次に掲げる金銭の額の合計額

イ その者に係る法第二十一条第一項の規定により資産管理機関(法第二条第七項第一号ロに規定する資産管理機関をいう。以下同じ。)に納付された事業主掛金(法第三条第三項第七号に規定する事業主掛金をいう。以下同じ。)及び法第二十一条の二第一項の規定により資産管理機関に納付された企業型年金加入者掛金(法第三条第三項第七号の二に規定する企業型年金加入者掛金をいう。以下同じ。)又は法第七十条第一項の規定により連合会に納付された個人型年金加入者掛金(法第五十五条第二項第四号に規定する個人型年金加入者掛金をいう。以下同じ。)及び法第七十条の二第一項の規定により連合会に納付された中小事業主掛金(法第六十八条の二第二項に規定する中小事業主掛金をいう。以下同じ。)であって、法第二十五条第一項(法第七十三条において準用する場合を含む。)の規定により運用の指図が行われる前のもの

ロ その者の個人別管理資産に係る法第二十三条第一項(法第七十三条において準用する場合を含む。)の規定による運用の方法ごとの当該運用の方法に係る契約に基づく次に掲げる金銭の額の合計額

(1) 預金又は貯金(利子を含む。)の払出しに係る金銭の額

(2) 信託財産の交付に係る金銭(収益の分配を含む。)の額

(3) 有価証券の譲渡又は償還に係る金銭の額

(4) 生命保険若しくは生命共済又は損害保険に係る保険金、共済金、返戻金その他のその者に帰属する金銭の額

(平一九政二三五・平二三政三五八・平二九政二九二・一部改正)

 

第一章 企業型年金

(連合会が行う業務)

則第一条 確定拠出年金法(平成十三年法律第八十八号。以下「法」という。)第二条第七項第一号の厚生労働省令で定める業務は、次に掲げる業務とする。

一 個人型年金加入者の資格の確認に係る業務

二 個人型年金加入者掛金(中小事業主(法第五十五条第二項第四号の二に規定する中小事業主をいう。以下同じ。)が中小事業主掛金を拠出する場合にあっては、個人型年金加入者掛金及び中小事業主掛金)の限度額の管理に係る業務

(平二九厚労令一三四・一部改正)

 

① 用語の定義(法第2条第1項~第3項)

法第2条第1項から第3項で、「確定拠出年金」「企業型年金」「個人型年金」を定義しています。

確定拠出年金は、「企業型年金」「個人型年金」の二つからなります。

そして、「企業型年金」は、厚生年金適用事業所の事業主が、単独で又は共同して、第二章企業型年金(法第3条~法第54条の7)の規定に基づいて実施する年金制度と規定しています。

実施主体は、事業主ですが、事業主といっても法人すべてを指すものでもなく、「厚生年金適用事業所」となっている事業主である必要があります。

また、ここで事業主という表現を使っていますが、個人事業主も含まれます。つまり、「厚生年金適用事業所」である事業主であれば、法人、個人事業主問わず企業型年金を実施可能です。

これは、法第1条において明示されている「公的年金の給付と相まって」との目的に資するため、厚生年金をやっていない事業主、はDCやDBを実施することができないようになっています。

② 厚生年金適用事業所とは(法第2条第4項)

「厚生年金適用事業所」とは、厚生年金保険法 第 6 条第 1 項の適用事業所及び同条第3 項の認可を受けた適用事業所を指しています。 前者を 強制適用事業所 と 言い 、後者を 任意適用事業所 と言います。

<強制適用事業所>
厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。

また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。

被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければいけません。

令和4年10月から【法律・会計にかかる業務を行う士業】に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所も、強制適用事業所となりました。

以下リンク先も参考になると思います。

健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加(令和4年10月施行)

<任意適用事業所>
上記強制適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。

③ 連合会とは(法第2条第5項)

以前も述べましたが、DC法で「連合会」といえば「国民年金基金連合会」を指す、と覚えておきましょう。

ではなぜ、国民年金基金連合会が、個人型の実施者として選ばれたのか、ということについて、以下が考えられると思います。

a.個人型年金の税制優遇で、国民年金第1号被保険者に対する拠出限度額が、国民年金基金の拠出限度額との、合計で68,000円と設定されているため、その拠出限度額チェックをできる組織であること

b.個人型年金の加入者掛金の拠出は、国民年金を拠出した期間しかできず、未納の部分があれば、保険料を還付しなければならないため、国民年金の拠出チェックができる組織であること

上記を考えると、国民年金基金連合会以外の機関が個人型の実施者をやるのは合理的ではないことが理解できると思います。

④ 第一号等厚生年金被保険者とは(法第2条第6項)

「第一号等厚生年金被保険者」とは、厚生年金保険の被保険者のうち厚生年金保険法第2条の5第1項第1号に規定する「第一号厚生年金被保険者」と同項第四号に規定する「第四号厚生年金被保険者」を指します。

第一号厚生年金被保険者」はいわゆる、厚生年金保険の被保険者のうち、国家公務員共済の組合員(第二号厚生年金被保険者)、地方公務員共済の組合員(第三号厚生年金被保険者)、私立学校教職員共済制度(以下、私学共済)の加入者(第四号厚生年金被保険者)を除いたものを指します。

「第一号等厚生年金被保険者」には、この「第一号厚生年金被保険者」と私学共済の加入者である「第四号厚生年金被保険者」が、企業型年金の加入者になることができるということです。

DB法では、「第一号等厚生年金被保険者」といわず、「厚生年金保険の被保険者」という表現にしていますが、中身としては同じく「第一号厚生年金被保険者」および「第四号厚生年金被保険者」になります。

今回は以上になります。

第2条第7項以降は、後編でご説明いたします。

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