アクチュアリー試験講評(2022年度 生保2編)


2022年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
今年は特に、CBTによる初めての試験でしたので、操作方法等に戸惑った受験生も少なくなかったかもしれません。
いずれにせよ、合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保2について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。

1.問題数等

問題数および配点については、昨年と同様でしたので、大きな混乱はなかったように思います。ただし、“文字数”について、生保1では“程度”であるのに対して、生保2では“上限”でしたので、特に、生保1と生保2を同時受験された受験生では、多少の混乱があったかもしれません。
また、2025年度決算から導入される、“経済価値ベースのソルベンシー規制”も予想問題としては有名でしたが、無事に出題されましたので、事前準備ができている受験生にとっては解き易かったかもしれませんね。
ただし、米ドル建て、豪ドル建て保険に関する告示第48号に関する出題はありませんでしたので、安全率係数も含めて暗記されていた受験生は、若干、肩透かしをくらったように感じたかもしれません。

2.各問題のポイント

問題1(1)
講評:監督指針からの穴埋め問題です。告示第48号の改正に伴い、変額年金保険における標準的方式なども絡めた点が特徴と言えるでしょう。

問題1(2)
講評:生命保険会社の保険計理人の職務(保険業法第121条)の穴埋め問題です。特に、実務で保険計理人の補佐業務等を行っている場合は、必ず満点を取りたいところです。

問題1(3)
講評:既発生未報告支払備金(IBNR備金)に関する計算問題です。過去問では、例えば、平成27年度問題1(6)で出題されていますが、税務法上の取扱い等、より細かな内容が問われています。

問題1(4)
講評:区分経理に関する監督指針の穴埋め問題です。過去問では、2018年度問題1(3)でも、『Ⅱ-2-4-2 主な着眼点』から出題されていますが、当時は、『(5)資産の配賦方法及び管理基準』からの出題でした。本問は、『(7)各区分間の取引等』でしたので、過去問を中心に学習された受験生にとっては、比較的取り組みやすい問題だったように思います。

問題1(5)
講評:資産負債管理に関して、ポートフォリオのイミュナイゼーションのために満たすべき基準を記述する問題です。少なくとも、平成12年度以降の過去問では、イミュナイゼーションに関する出題はありませんでしたので、事前準備が十分であった受験生は多くないかもしれません。

問題1(6)
講評:利源別配当方式の長所3つ、 短所2つを簡潔に説明する問題です。過去問では、平成19年度問題2(1)で、「利源別配当方式」と「アセット・シェア配当方式」について、利点・留意事項も含めて簡潔に説明する出題がありましたが、利源別配当方式に限定した出題はこれまでなかったように思います。

問題2(1)
講評:金融庁による事業費モニタリングについて、概要および導入された背景を簡潔に説明する問題です。文字数上限があることを除けば、平成25年度年度問題2(3)と全く同じ問題でしたので、問題1(4)と同様、過去問を中心に学習された受験生にとっては、比較的取り組みやすい問題だったように思います。

問題2(2)
講評:リスク計測に使用する各モデルを簡潔に説明する問題です。教科書4‐28~30ページを暗記しておけば、取り組みやすい問題です。

問題3(1)
講評:利源分析に関する出題は、これまでたびたび行われてきましたが、本問のように、“金融庁提出用の利源分析の手法にとらわれない”という前提での出題は、例えば、平成21年度問題3(2)などが挙げられます。なお、追加責任準備金を積み立てているという前提も、平成21年度問題3(2)と同じ前提ですので、当該問題をしっかりと理解しておけば、取り組みやすい問題です。

問題3(2)
講評:冒頭で申し上げましたとおり、2025年度決算から導入される、“経済価値ベースのソルベンシー規制”に関する出題でした。特に、時事問題として予想されているように思えましたので、多くの受験生にとって解き易かったように思います。

3.次回以降に向けて

いかがでしたか。第Ⅰ部対策としては、やはり、教科書を中心として監督指針や実務基準等、さらに余裕があれば法令や告示等の理解が極めて重要です。また、新型コロナウイルス感染症のような“明らかな時事ネタ”については、ついつい所見対策が中心になりがちですが、第三分野保険のストレステスト等、第Ⅰ部(知識問題)としての出題も十分考えられますので、第Ⅱ部(論述問題)とセットで対策を講じておきたいところですね。一方、第Ⅱ部対策としては、様々な情報源に注意しつつ、常日頃から課題意識を持ち、自分自身の意見や考え方を“自分の言葉で分かりやすく相手に伝える練習”をしておくことも大切です。特に、新設の教科書『第4章 リスク管理』からリスク管理が出題されましたので、来年はALMかな?と予想して、今のうちから十分な試験対策をスタートさせることも重要です。当たり前のことを当たり前に実行できることは、決して当たり前ではありません。

 

(ペンネーム:活用算方)

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