今年もアクチュアリー試験が近付いてきましたが、受験生の皆さまにおかれましては、ラストスパートの時期に突入されていることと存じます。
また、今年からCBTによる試験がスタートしますので、体験版にて、操作方法なども、しっかりと押さえておきたいところです。
そこで、今回のコラムでは、昨年および一昨年のコラムと同様、アクチュアリー試験の第2次試験(生保2)について、重要性が高いと思われる論点を幾つかご紹介いたします。
1.時事問題候補
以下の項目が第2次試験(専門科目)のうち、生保1および生保2における時事問題候補と考えられます。
1) 新型コロナウイルス感染症
2) 第三分野保険のストレステスト
3) ニューリスクに対するリスク管理のあり方
4) 告示48号の改正
5) 経済価値ベースのソルベンシー規制
6) 標準利率の上昇(第一号保険契約)
2-1.新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症に関連した出題としては、2020年度問題3(2)パンデミックシナリオによるストレステストが挙げられますが、2021年度では、同感染症に特化した出題はなされなかったように見えます。
一方、今年9月からスタートした、感染者数把握の変更、みなし入院の取り扱いなど、同感染症を取り巻く環境も徐々に変わりつつあります。
このため、生保2としては、例えば、
1) 第三分野保険のストレステストにおける新型コロナウイルス感染症の反映
2) 危険準備金
3) 新型コロナ渦におけるリスク管理
4) 追加責任準備金
といった観点からの出題が想定されます。
2-2.第三分野保険のストレステスト
第三分野保険のストレステストに、新型コロナウイルス感染症の影響を含めるかどうかは、なかなか悩ましいところです。
特に、生命保険会社にお勤めの方であれば、日本アクチュアリー会の実務基準部会(生保)委員に対して、同部会資料を閲覧させていただければ、業界の動きが分かるので、試験対策としても大いに役立つことでしょう。
2-3.ニューリスクに対するリスク管理のあり方
新型コロナウイルス感染症を含めた、いわゆる“ニューリスク”に対しては、決算時においてリスク管理を意識することが極めて重要となります。
特に、生保2の教科書『第4章 リスク管理』が、最近新設されましたので、出題可能性も十分ありますので、当該教科書を熟読されることを強くお勧めいたします。
2-4.告示48号の改正
2022年4月から、外貨建保険のうち米ドルおよび豪ドル契約が、標準責任準備金の対象に加わることとなりました。
内容的には、生命保険会計・決算に関するものですので、アクチュアリー試験としては生保2の時事問題と考えられますが、標準責任準備金という観点からは、
(1)標準責任準備金の対象契約範囲および根拠規定
(2)1号収支分析のあり方(保険計理人の実務基準)
(3)一般勘定で外貨建保険を販売する際の会計上の留意点
(4)区分経理との関係
など、様々な論点も考えられます。
なお、告示48号の改正自体が穴埋め問題などで出題される可能性もありますので、新旧対比表などを活用しながら、邦貨建と米ドル・豪ドル建の規定の違い(例.対象利率、安全率係数など)を整理されるとよいでしょう。
https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20210423/20210423.html
https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20210630/20210630.html
2-5.経済価値ベースのソルベンシー規制
2025年度の本格導入に向けて経済価値ベースのソルベンシー規制に関する議論がFT(フィールドテスト)を含めて鋭意検討されておりますが、2022年度においては、
(1)経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する基本的な内容の暫定決定(令和4年6月30日)
(2)経済価値ベースの評価・監督手法に関するフィールドテスト(2022年)における仕様書およびEXCELテンプレート(令和4年8月)
が、それぞれ金融庁から公開されました。
https://www.fsa.go.jp/policy/economic_value-based_solvency/index.html
内容的には、生命保険会計・決算に関するものですので、アクチュアリー試験としては生保2の時事問題と考えられます。
なお、経済価値ベースに関する過去問として、平成29年度(生保2)問題3(1)を必ず押さえる必要がありますが、余力があれば、2018年度(生保2)問題3(2)も押さえておきたいところです。実際、
(1)通常の予測の範囲を超えたリスクへの財務上の備え
(2)統合的リスク管理(ERM) の論点を踏まえた所見が求められており、まさに、新型コロナウイルス感染症および今年改訂された教科書『第4章 リスク管理』に深く関係した、出題可能性が大いに期待されるテーマと言えるでしょう。
2-6.標準利率の上昇(第一号保険契約)
一時払終身保険などの第一号保険契約について、今年7月から標準利率が0.25%(従前は0%)に引き上げとなりました。
このため、例えば、生保1の出題として、
(1) 標準利率引き上げ時の責任準備金のあり方
(2) 保険料計算基礎率と標準利率が異なる場合の留意点
といった論点が考えられます。
3.所見問題で触れるべき視点
生保2の教科書『第4章 リスク管理』が新設されたこともあり、最近の所見問題では、“本商品の導入に伴うリスクとそのリスク管理手法”を問われる可能性が高くなっています。
特に、生保2の「内容」である「内容: 生保会計・決算」の観点からは、例えば、
(1) リスク管理を念頭においた決算実務
(2) リスク管理における内部留保・自己資本の活用方法
(3) 生命保険会社におけるリスク管理のあり方
といった論点が考えられます。
4.保険商品審査事例集
金融庁『保険商品審査事例集』も、時事問題の宝庫ですので、是非、チェックしましょう。
特に、生保2に関連するものとしては、例えば、以下の事項が挙げられます。
(1) 令和4年1月:負値責任準備金に対する対応
いかがでしたか。第三分野標準生命表2018の作成過程が続けて出題(2019年度、2021年度)され、しかも、両者とも生保1での出題に、戸惑った受験生も少なくなかったかもしれません。本来、標準責任準備金の計算基礎率という観点からは、生保2での出題があってもおかしくないように思います。昨年のコラムでも触れましたが、アクチュアリー試験は直前になればなるほど、緊張感からか、なかなか集中できない日々が続く可能性もあります。今回ご紹介した内容をしっかりと押さえ、良い結果につながることを祈念しております。
(ペンネーム:活用算方)