8月に引き続き9月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。
1.金融庁からの御要請
新型コロナウイルス感染症に関する金融庁からの御要請としては、なんといっても、令和2年4月10日付文書『新型コロナウイルス感染症に関する保険約款の適用等について(要請)』が、日本の保険史に残るといっても過言ではないように思えます。
一方、昨今の同ウイルス感染者数の増大などが懸念される中、金融庁から、保険会社等に対し、入院給付金の取扱い等に係る御要請がされました。https://www.fsa.go.jp/news/r4/hoken/20220902/20220902.html
具体的には、
1)同ウイルス感染症に関する医療機関等の負担軽減策への対応について、厚生労働省から金融庁への御要請。
2)「みなし入院」による入院給付金支払対象等について、金融庁から生命保険協会等への御要請。
の2つの事項から構成されています。
穿った見方をすれば、上記1)を保険会社が順守すれば、上記2)に基づき、従前、支払い対象としていた「みなし入院」(の一部)を、今後は不払いとすることも許容されるような環境整備が促進されたといえるかもしれません。(←あくまでも、個人的な推測に過ぎませんが)
なお、新型コロナとの関連は不明ですが、入院給付金日額を引き下げた会社も登場しておりますので、今後の動向が注目されますね。
https://www.axa-direct-life.co.jp/info/2022/info_220901.html
2.丁寧な説明
今回のコロナ保険に関する商品変更や給付対象などの見直しは、実に、生命保険会社39社が変更された模様です。
この事態を受けて、生命保険協会長が定例記者会見(注:決算期などを除き、毎月第三金曜日が会見日)で、“新型コロナで支払う入院給付金対象が絞られる点については、(各保険会社による)「丁寧な説明が重要」”とコメントされた模様です。
新型コロナウイルス感染症における軽症者の増加に加えて、政府による感染者報告の簡略化対応を受けた措置である点が強調されておりますので、まさに、官民一体として急激な給付金支払い上昇に対処する姿勢が明確になっています。
なお、記事には、“方針の変更に不満を募らせる契約者も少なくない”とありますが、“一部の(?)悪意を持った「俄か契約者」達が、SNSなどに影響されて、一度に多くの医療保険に集中加入し、不要なPCR検査を毎週受け続ける”という“いびつな構図”を解消するためのやむを得ない措置である点を、もっと明確に報道する姿勢を、是非、マスコミには期待したいと切に願います。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64425820W2A910C2EA4000/
3.ニッセイ基礎研究所のレポート
様々な優れたレポートを無料で公開いただけているニッセイ基礎研究所から、今回の新型コロナウイルス感染症について、「みなし入院」を含めた非常にわかりやすいレポートが出されております。
特に、普通保険約款で認められている「受取人による請求時効完成(=3年ルール)」などにも触れられており、基礎書類に関する著者の造詣の深さを表しています。
幸い、当方は前職で、著者と一緒に仕事をさせていただく機会に恵まれましたが、昼夜を問わず、常に誠実に対応されていたお姿には強く感銘を受けた記憶があります。
4.各社の取り扱いなど
植村信保先生のブログで、新型コロナに対する給付金支払対象について、各生命保険会社の対応が簡潔に紹介されていますので、是非、ご覧ください。
5.損保も縮小
新型コロナに対する給付金支払対象の狭小化については、損害保険も同様の措置がとられる模様です。
具体的には、団体向けの医療保険や傷害保険などで、9月26日からスタートする模様です。
ご案内の通り、第三分野保険については、生損保とも取扱可能ですが、同保険については、生損保との違いよりも、むしろ、個人保険と団体保険の違いが際立っているようにも思えます。
実際、団体医療保険については、そもそも、当該団体に所属していることが加入要件であり、今回の“新型コロナショック”のようなモラルリスクの誘因は、個人保険に比べると格段に少ないというのが業界全体の印象です。
このため、個人保険はともなく、団体保険については、引き続き、軽症者も給付対象にして差し支えないという経営判断もあり得たのかもしれませんが、やはり、契約者間の公平性などを考慮して、個人保険と足並みを揃える対応を余儀なくされたのかもしれません。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB07D190X00C22A9000000/
6.阿波おどりで大量感染
“本末転倒”という四文字熟語がこれほど当てはまる出来事も見かけないような気がします。
徳島市で開催された阿波おどりで、参加者の約4人に1人(=819人)が新型コロナウイルスに感染したことが実行委員会アンケートで分かった模様です。
3年ぶりに屋外演舞場に観客を入れた本格開催ということで、開催を心待ちにしていたファンも大勢いらっしゃったのでしょうが、感染防止対策について「演舞中にマスクをする、しないが曖昧に」などの意見があったようです。
新型コロナについては、ワクチン接種を始めとして、経済活動優先か蔓延防止優先かなど、様々な議論がこれまで散々、行われてきましたが、肝心なことは、“人命は何事にも代えがたい”という点ですね。
くれぐれも、“命よりも経済(=円)を優先する”という“円命措置”だけは勘弁してもらいたいです。
7.宿泊拒否が可能に
新型コロナに関する“人流抑制”については、諸外国と異なり、日本には“制限の法的根拠”の乏しさが、しばしば話題になります。
居住・移転・職業選択の自由は、日本国憲法の大きな特徴ですが、この“人流抑制”に関する規定がないことも、特に、海外の法曹界からみると際立った特徴の1つと言えそうです。
第7波を経た今日では、遅きに失した感は否めませんが、やっと、旅館業法改正案の全容が判明しました。
具体的には、ホテルや旅館を経営する事業者がマスク着用などの感染防止策を客に求め、正当な理由なく拒んだ場合は宿泊を断れるようにするそうです。
繰り返しになりますが、優先すべき事項は、あくまでも人命であり、経済活動ではないことを今一度、認識し直す時期にきているように思えます。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220921-OYT1T50018/
8.監督指針の改正
「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正は、アクチュアリー試験の受験生にとっても注目されるニュースですが、障がい者等への様々なサービス等の利用しやすさを保険会社に求めるような改正についても、仮に、試験に出題されなくても、保険業界人としてしっかりと認識すべき事項ですね。
例えば、目の不自由な方々に向けた、普通保険約款などの音声案内や、耳の不自由な方々に向けた保険金請求手続きの可視化(例.動画による案内など)を充実されることも、保険会社の社会的責任の1つといえるでしょう。
今後も、様々な方面からの創意工夫で、みんなが住みやすくなる明るい社会の仕組みづくりを大いに期待したいところですね。
9.放置年金
2400億円のお金が「放置」されていると聞くと、一瞬、ドキッとしますが、111万人の運用資産と聞くと、一人当たり、20数万円に過ぎず、相変わらずの“脅し商法”がマスコミをにぎわしているようです。
もちろん、たとえ1円でも大切にしなければならないという精神は具備すべきですが、税金の無駄遣いなどを含めて、もっと焦点を当てるべきニュースが山積しているようにも思えます。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64111110X00C22A9MM8000/
10.人口動態統計(確定数)
厚生労働省から、令和3年(2021年)人口動態統計(確定数)の概況が公表されました。新型コロナの影響などもあり、出生数および婚姻数が戦後最小となった模様です。
ちなみに、先日YouTubeで、“米国における白人男性の平均寿命が縮小”という話題を見たのですが、ひょっとすると、新型コロナの影響が寄与しているのかもしれませんね。
なお、“簡易生命表の概況”が、毎年7月下旬に公開されておりますので、9月の人口動態統計(確定数)の公開と合わせて、保険業界人としてはスケジュールを押さえておきたいところですね。
いかがでしたか。新型コロナウイルス感染症への保険会社対応については、お客さまの納得感を最優先にしつつ、既契約者間の公平性や営業保険料の適切性など、保険会社破綻に次ぐ、重大なテーマを保険業界に投げかけているように感じます。時事問題として、アクチュアリー試験の第2次試験(専門科目)の予想問題としても、依然として筆頭になりそうですね。
(ペンネーム:活用算方)