気になるニュース(2022年7月)


6月に引き続き7月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。

1.経済価値ベースのソルベンシー規制

ここ数年、毎年6月末に、経済価値ベースのソルベンシー規制に関する報告書などが金融庁から出されています。今回は、“令和7年(=2025年)の経済価値ベースのソルベンシー規制の導入”に向けたマイルストーンとして、当該規制等に関する基本的な内容の暫定決定が公表されました。
なお、金融庁の事務年度(←保険会社の事業年度に相当)が、7月~(翌年)6月というサイクルのため、事務年度の最終日に合わせて公表されることも通例になりつつありますね。

また、当該規制に沿った形で、従来のFT(フィールドテスト)についても、各生命保険会社にアナウンスされておりますが、昨年に比べると内容が盛り沢山にも関わらず、昨年よりも提出期限が早いといったコメントなども、SNS上で飛び交っております。
数年後の本格的導入に向けて、IT部門も巻き込んだ大きな変動を、保険業界は余儀なくされていますね。
ちなみに、アクチュアリー試験(特に、第2次試験(専門科目))においては、経済価値ベースのソルベンシー規制は絶対に外せない論点ですので、上記の報告書と併せて、しっかりと準備しておきたいところです。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/hoken/20220630_2.html

2.資格試験要領の公開

日本アクチュアリー会から同会の資格試験要領が公開されましたが、今年は、CBT方式に変更されますので、これまで以上に注目されそうですね。
特に、第2次試験(専門科目)のうち第Ⅱ部(論述問題)では、解答用紙の枚数制限が従来から導入されておりましたが、CBT方式への変更により、文字数制限に変更されました。
ただし、厳密に○○文字以内という感じではなく、○○文字程度で解答すればよさそうですので、受験生の負担はやや軽減されたようにも感じます。

なお、例えば、“ソルベンシー・マージン”という語句をカタカナ半角入力した場合、文字数がどのようにカウントされるのが気になりますが、アクチュアリー試験で登場するカタカナ用語はそれほど多くないでしょうから、あまり気にしなくていいかもしれませんね。
なお、CBT方式全般に関する留意点は、過去のコラム『2022年03月22日 (火) アクチュアリー試験のCBT移行』(https://www.vrp-p.jp/acpedia/3376/)をご参照いただければ幸いです。
https://www.actuaries.jp/examin/info.html

3.節税保険に対する主務官庁資料

当コラムの性質上、特定の会社の誹謗・中傷につながるような表現は厳に慎むべきと考えますが、一方で、保険業界共通の話題(特に、主務官庁からのご見解など)にまつわる事項は、コラムとして備忘録的に残す必要があると思います。
一連の「節税保険問題」は、節税に留まらず、脱税(=租税回避)を主たる目的として販売される保険商品という位置づけの模様です。

特に、金融庁宛に、ある種の“内部通報制度”に類似した仕組みを要請することは、本件事例が極めて悪質であり、主務官庁として、相当の危機感を持って対処する必要があるとの決意表明のようにも受け取れました。
いずせにせよ、適正な募集活動を推進することで、業界の信頼を取り戻せることが、本来あるべき姿といえるでしょう。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/hoken/20220714-2/20220714-2.html

4.物価上昇

ウクライナ情勢の影響を受けて、日本国内でも物価上昇がみられますが、海外でも同上昇が顕著なようです。
実際、トルコでは、6月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比78.6%であったことが同国統計局から発表されました。なお、5月の同率が73.5%でしたので、物価上昇に歯止めがかかっていないようですね。
ちなみに、日本では、昭和40年代のいわゆる“オイルショック”で物価上昇を経験しており、具体的には、1年で20%程度の物価上昇があった模様です。

なお、昭和50年代には、“物価スライド保険”という生命保険業界共通商品も発売されましたが、売れ行きはあまりよくなかったそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62313610U2A700C2FF8000/

5.新型コロナ保険の販売停止

ジャスト・イン・ケースさんのニュースが記憶に新しいところですが、第一スマート少額短期保険さんでも、新型コロナ保険商品の新規販売を停止された模様です。ただし、既契約者の保障は続くようですので、既契約者にとっては一安心ですね。
なお、昨年4月に発売された商品のようで、保険料が感染状況に応じて変動する仕組みという点が、通常の生命保険にはない仕組みに思えます。
これまでに約19万7千人が契約し、約1万6千件の支払いがあったということですので、新型コロナの感染スピードがいかに速いかを示す貴重なデータとなりますね。

6.「家財補償」自己負担額

火災保険の「家財補償」は、家具や家電を壊してしまった場合などに備えるもので、自己負担を最低1万円以下の金額で設定できるようです。
しかし、今年10月契約分から損害保険大手4社が一律5万円に引き上げるようでして、コロナ禍で家財補償の請求が急増(ある損保大手はコロナ前に比べて約4割増)していることが原因のようです。
在宅勤務や学級閉鎖などで、家族の在宅時間が長くなったことに起因しているという見方がありますが、記事の最後にある、“食品など生活必需品の相次ぐ値上げに苦しむ家計にとっては追い打ち”という見解には、まったく同感です。
https://www.fnn.jp/articles/-/384227?display=full

7.リモートワークの試行

元総務大臣の竹中平蔵氏が率いるパソナグループでは、東京・大手町にある本社機能の一部を淡路島に移転する計画を発表されており、具体的には、同島に約1,200人の社員を移住させることが予定されております。
さらに、今年4月までに、既に約350人が移住されているそうですが、今後の動きが注目されますね。
なお、本社機能の移転のみならず、同グループは、淡路島での雇用創出を目指して、物販・レストランなどの観光施設を島内に次々にオープンされているようです。
まさに、地元の活性化に繋がるご支援を行われているという意味で、是非、他のグループにも追随していただきたいところです。

なお、淡路島というと、京阪神圏内から通りイメージもありますが、実際は、バスと電車を乗り継いで、神戸の中心・三宮までは約40分、大阪のキタの中心・梅田までは約60分でアクセスが可能という、利便性の良い立地であることも注目されます。
ちなみに、「『淡路島では夜、飲みに行く場所もなくてつまらないでしょう』と、東京に住んでいる人からよく言われます。でも、淡路島には住んでいる人が増えて、新しく居酒屋ができている場所もあります。飲み屋街はなくても、選べるくらいのお店の数はあります。通勤時間が短いので、東京に居た時よりも長い時間飲めるくらいですよ」という広報部長のコメントには、本当に救われます。

8.史上最大の賠償命令

福島第一原発事故をめぐり、東電株主が起こした株主代表訴訟で、東京地裁から目を疑うような賠償命令がなされました。
具体的には、旧経営陣5人のうち4人に対し、実に13兆3210億円を賠償するよう命じるものでした。
なお、判決を言い渡した裁判長は、裁判官として初めて福島第一原発の構内まで視察された模様ですので、個人的にも相当強い思い入れを持たれていたのかもしれません。

また、もし、保険会社が東電の賠償責任保険を受諾していた場合、どのような流れになるのかも、非常に興味があります。
ただ、個人的には、守るべきは株主よりも、避難生活を余儀なくされている被災者を優先すべきだとは思いますが。。。

9.原則出社を撤廃へ

大手電機メーカーで原則出社ルールを撤廃する模様です。
対象となるのは国内グループの従業員4万4000人です。
勤務体系を見直し、原則出社するルールを撤廃して、テレワークと出社を組み合わせる「ハイブリッド勤務」に移行される模様ですが、テスラ社のイーロン・マスク氏が聞いたら、どのようなコメントが出されるのかが、とても興味があります。
いずれにせよ、社員の柔軟な働き方を認めることで、優秀な人材を獲得することや離職を防ぐことが狙いという点は、大いに賛同できますね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC117E50R10C22A7000000/

 

10.帰国できないリスク

アメリカに出張中のデジタル大臣が、新型コロナ陽性と判明したため、陰性となるまで日本に帰国できない見通しです。
一国の命運を握っている大臣が、自由に移動できないことは、見方によっては国益を著しく損なっているようにも感じられますが、万全の態勢で臨んでいただけることを有権者の一人として、強く願います。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000261571.html

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220714/k10013716971000.html

 

いかがでしたか。経済価値ベースのソルベンシー規制に関する暫定決定やアクチュアリー試験の資格試験要領が公開されて、いよいよ、今年のアクチュアリー試験が本格的にスタートした感がありますね。新型コロナの動きは依然として不透明ですが、“夏を制する者は受験を制する”という有名なフレーズもありますので、暑い夏を乗り切っていきましょう。

 

(ペンネーム:活用算方)

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