2021年の年金数理人会試験(基礎数理Ⅱ編)


例年、11月末に年金数理人会試験の問題および解答が公開されますが、2021年も11月30日(火)11時30分頃に公開されました。

特に、同試験科目中、基礎数理Ⅱは、アクチュアリー試験の生保数理との親和性が高いこともあり、アクチュアリー試験に向けた直前対策として利活用される受験生も少なくないと思われます。

そこで、今回のコラムでは、2021年の年金数理人会試験(基礎数理Ⅱ編)の問題について、生保数理の受験生にも役立つように、気づいた点を幾つかご紹介いたします。

問題1(3):完全平均余命が一次式で表される問題ですが、アクチュアリー試験(保険数学1)過去問H7問1(3)の類題です。特に、0.8を4/5と表現している辺りが微笑ましいですね。なお、この手の問題の解法として、『生命保険数学 二見隆著(日本アクチュアリー会)』(以下、「教科書」という。)(上巻)68ページ問題(16)に記載の、完全平均余命に関する微分方程式を用いる必要がある点に注意しましょう。

問題1(4):2重脱退残存表の問題ですが、面白い点は、“なお、𝑞𝑥𝐴、𝑞𝑥𝐵の値が小さくないので近似式を用いると、𝑞𝑥𝐴∗の真の値は求まらないことに注意すること。”という部分です。つまり、近似式である教科書(上巻)91ページ(3.3.11)を用いてはダメということであり、近似式を用いない別の方法を用いる必要があります。

なお、上述の近似式を用いると(エ)が正解になりそうですが、実際には以下の3つの公式(ただし、C脱退率およびC絶対脱退率はゼロと考える):
教科書(上巻)88ページ(3.2.4)
教科書(上巻)89ページ(3.2.6)
教科書(上巻)89ページ(3.2.14)
を用いて、敢えて、A絶対脱退率およびB絶対脱退率の連立方程式に帰着させる方法で解けば、(エ)以外が正解になるかもしれません。

問題1(6):アクチュアリー試験(生保数理)過去問H29問2(6)の類題です。特に、死力から災害死力を控除したものが『災害以外の死力』になることに着目できるかが、合否の分かれ目となるでしょう。

問題1(12):就業不能にかかる保険料払込免除特約の問題です。問題文のうち、“ただし、最終年度に発生する就業不能に対しては、免除すべき保険料がないため、最終年度の保険料払込免除特約の保険料の払い込みはない”のおかげで、教科書(上巻)166ページにある、“特約保険料の払込は高々n-1回とされる”をそのまま適用すれば良いことが明確になりますね。

問題1(14):問題文のうち、“全期チルメル式責任準備金を積み立てたところ、第 1 保険年度末の責任準備金が 0 となった”という部分から、初年度定期式責任準備金であることが分かるかどうかが合否の分かれ目となるでしょう。

問題2(2):条件付連生保険の問題ですが、多くの受験生が嫌がる、“4人の条件付連生保険”という問題です。特に、2つ目の支払事由で、(y)の死亡時期を問わないという部分を数式に置き換えるところが、やや難しかったと思います。

いかがでしたか。日本年金数理人会ホームページ
http://www.jscpa.or.jp/become/test/pdf/2022jouhou.pdf)によれば、2017年10月にIAA(国際アクチュアリー会)教育シラバスが改定されたことに伴い、2022年度より日本年金数理人会能力判定試験が改定される模様です。具体的には、試験科目のうち、「基礎数理Ⅰ」、「基礎数理Ⅱ」および「会計・経済・投資理論」について、日本アクチュアリー会の資格試験が活用され、今回ご紹介した『基礎数理Ⅱ』も今年が最後となる見込みです。

アクチュアリー試験まであと少しですが、受験生の皆様におかれましては、体調を崩されずに良い結果が出せることをお祈りしております。

(ペンネーム:活用算方)

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