今年もアクチュアリー試験が近付いてきましたが、受験生の皆さまにおかれましては、ラストスパートの時期に突入されていることと存じます。
そこで、今回のコラムでは、昨年10月のコラム(https://www.vrp-p.jp/acpedia/2371/)と同様、アクチュアリー試験の第2次試験(生保2)について、重要性が高いと思われる論点を幾つかご紹介いたします。
1.基礎利益の見直し
毎週、鋭い視点と平易な表現で保険業界の動きを解説されている植村信保氏のブログ(https://nuemura.com/)で、基礎利益の見直しが紹介されておりました。
具体的には、同ブログの『2021.09.12保険モニタリングレポート』において、基礎利益に関する新たな計算方式の概要が初めて公表され、為替に係るヘッジコストを含めるようにするなどの見直しが予定されている模様です。
なお、当該見直しは、2022事業年度から反映されるそうですので、見直される項目の説明や、そもそも基礎利益の意義など、アクチュアリー試験(生保2)の問題2の用語説明問題対策としても、是非、内容をチェックしておきたいところですね。
2.新型コロナウイルス感染症
2020年度のアクチュアリー試験(生保2)では、問題1(1)で「第三分野の責任準備金積立ルール・事後検証等」が、また、問題3(2)で「感染症の世界的流行を想定したシナリオによるストレステストの導入検討」がそれぞれ出題されました。
これらの問題は、新型コロナウイルス感染症による会計上の対応(例.内部留保の積み増し、第三分野保険のストレステストなど)に関して、生命保険会社が直面している課題としての時事問題ともいえるでしょう。
なお、昨年度の出題以外の論点として、
(1)責任準備金の計算基礎率(例.予定死亡率など)の改訂
(2)新型コロナウイルス感染症に特化した保険商品にかかる会計上の論点
(3)ソルベンシーの確保
といったものも考えられますので、余力があれば、ご自身の言葉で論点整理などをされておくとよいでしょう。
3.告示48号の改正
2022年4月から、外貨建保険のうち米ドルおよび豪ドル契約が、標準責任準備金の対象に加わることとなりました。
内容的には、生命保険会計・決算に関するものですので、アクチュアリー試験としては生保2の時事問題と考えられますが、標準責任準備金という観点からは、
(1)標準責任準備金の対象契約範囲および根拠規定
(2)1号収支分析のあり方(保険計理人の実務基準)
(3)一般勘定で外貨建保険を販売する際の会計上の留意点
(4)区分経理との関係
など、様々な論点も考えられます。
なお、告示48号の改正自体が穴埋め問題などで出題される可能性もありますので、新旧対比表などを活用しながら、邦貨建と米ドル・豪ドル建の規定の違い(例.対象利率、安全率係数など)を整理されるとよいでしょう。
https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20210423/20210423.html
https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20210630/20210630.html
4.経済価値ベース
2025年度の本格導入に向けて経済価値ベースのソルベンシー規制に関する議論がFT(フィールドテスト)を含めて鋭意検討されておりますが、2021年度では、
(1)「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する検討状況について」(令和3年6月30日)
(2)FT(フィールドテスト)にかかる仕様書およびEXCELテンプレート(令和3年8月26日)
が、それぞれ金融庁から公開されました。
https://www.fsa.go.jp/policy/economic_value-based_solvency/index.html
内容的には、「3.告示48号の改正」と同様に、生命保険会計・決算に関するものですので、アクチュアリー試験としては生保2の時事問題と考えられます。
なお、経済価値ベースに関する過去問として、平成29年度(生保2)問題3(1)を必ず押さえる必要がありますが、余力があれば、2018年度(生保2)問題3(2)も押さえておきたいところです。実際、
(1)通常の予測の範囲を超えたリスクへの財務上の備え
(2)統合的リスク管理(ERM) の論点を踏まえた所見が求められており、まさに、新型コロナウイルス感染症および今年改訂された教科書『第4章 リスク管理』に深く関係した、出題可能性が大いに期待されるテーマと言えるでしょう。
5.保険商品審査事例集
以前のコラム(https://www.vrp-p.jp/acpedia/2759/)でご紹介できませんでしたが、金融庁ホームページ(https://www.fsa.go.jp/status/hoken_sinsajireishu/index.html)の『保険商品審査事例集』は、生保1はもちろん、生保2の試験対策としても大いに活用したいところです。
例えば、令和3年1月の同事例集
(https://www.fsa.go.jp/status/hoken_sinsajireishu/20210108/2101shinsajireishu.pdf)2ページ以降に「負値責任準備金」が登場しますが、
(1)負値責任準備金が生じる理由
(2)負値責任準備金に対する会計上の取扱い
(3)算出方法書における負値責任準備金の手当て(例.危険差益等での補填など)
といった論点を中心に対応策を含めて情報を整理されるとよいでしょう。
いかがでしたか。昨年のコラムでも触れましたが、アクチュアリー試験は直前になればなるほど、緊張感からか、なかなか集中できない日々が続く可能性もあります。今回ご紹介した内容をしっかりと押さえ、良い結果につながることを祈念しております。
(ペンネーム:活用算方)