生命保険契約を締結すると、生命保険会社は、契約者(被保険者)に保障を提供する見返りとして、契約者から保険料を頂きます。
これは、生命保険を知っている人にとって極めて当たり前のことですが、実はもうひとつ、お客様から頂く、非常に大切なものがあります。
何だか分かりますか?
答えを探すために、生命保険会社が新商品を開発する場合を考えてみましょう。
新商品を開発する場合、まず、お客様のニーズ調査や、ライバル会社の商品分析等からスタートすることが多いのですが、これらの調査分析が終了すると、次にどのような保障内容にするのかを決める必要があります。そして、保障内容が決まると、いよいよ保険料水準を試算することになります。
生保数理を勉強された方はご存じでしょうが、保険料を決めるためには、少なくとも3つの要素(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)を決める必要があります。また、医療保険のような、いわゆる第3分野商品を開発する場合には、さらに、予定入院発生率、予定手術発生率などが必要になります。
これらの予定死亡率、予定入院発生率などの作成は、アクチュアリーの重要な役割(の一つ)です。
通常、予定死亡率等は、粗発生率(生データ)に安全割増と呼ばれるバッファーを加えて保守的に作成します。
粗発生率の分母は、分子に対応する人数(人口や契約者数など)となりますが、分子は、以下の3種類のものが考えられます。
1. 公的データ(患者調査、人口動態統計など)
2. 業界データ(生命保険協会が加盟各社から集計するデータなど)
3. 自社経験データ(自社の保有契約から生じるデータなど)
もうお分かりですね。
そうです。これらのデータのうち、3番目のデータが、まさに、被保険者からいただいているもので、被保険者自身が入院されたり、手術されたりしたデータです。
そして、時には不幸にも、被保険者自身が自らの命と引き換えに、貴重な「死亡データ」を生命保険会社に提供しているのです!
そして、これらのデータを地道に蓄積し続けることで、将来の商品開発に役立つと同時に、未来の子や孫の世代にわたる生命保険事業にとって大変有用なデータとなります。
アクチュアリーを目指すみなさんは、この2つのものをお客様から頂いていることをしっかりと念頭において、お客様への感謝の気持ちを忘れずに、よりよい保険制度構築のために弛まぬ努力を継続することが大切だと思います。