今年こそ正会員になりたい!


昨年は、新型コロナウイルス感染症の影響で、アクチュアリー資格試験の開催が危ぶまれた一年でしたが、無事に試験が開催され、合格発表を心待ちにされている受験生も少なくないと思います。

そこで、今回のコラムでは、筆者自身の経験と反省を踏まえて、2021年に日本アクチュアリー会正会員を目指す方々に向けて、勉強方法などをご紹介いたしますので、受験生の方々への一助となれば幸いです。

なお、コラムの性質上、別のコラム『今年こそ準会員になりたい!』と一部内容が重複している点を何卒ご容赦ください。

1.教科書の読み方
第2次試験(専門科目)では、第1次試験(基礎科目)と異なり、出題範囲が教科書に限定されることはありません。むしろ、教科書以外の情報源(例.アクチュアリージャーナル、パブリックコメントなど)を意欲的に取り入れて、ひたすら応用力(=問題解決能力)を身に着ける必要があります。
しかし、第2次試験(専門科目)でも『教科書』は指定されていますし、テーマによっては、テキスト委員会からの貴重な情報(例.課題、留意事項など)が書かれていますので、当然、本試験においても、これらの内容をしっかりと記述した答案が必要であることは言うまでもありません。
そこで、是非、実践していただきたいのが、『目次を常に持ち歩く』というものです。目次だけをコピーしたものでも構いませんし、テキスト情報のみをスマホやタブレットに入れても構いません。教科書の流れや、どこになにが書いてあるのか大体の目安を頭に入れることが重要です。
そして、目次の項目を見ただけで、『法令や告示等における該当条文』、『アクチュアリー実務上の課題および解決策』、『アクチュアリーとしての留意事項』などがスラスラと書き出せるようになれば、合格レベルと言えるでしょう。

2.過去問の利用法
幸い、日本アクチュアリー会ホームページの『TOPページ > 書籍・ライブラリー > 資格試験過去問題集』で、昭和37年度以降の過去問および公式解答(←古いものは問題のみ掲載)がPDFファイル形式で公開されていますので、是非、活用しましょう。
その際、単に、スマホやタブレットに当該ファイルをダウンロードするだけでなく、出題傾向や頻出問題などをまとめておくのも効果的です。特に、WordファイルやExcelファイル等の電子媒体で過去問の見出しだけでも一覧にすれば、試験直前対策として、類題の抽出などがスムーズに行えるでしょう。
特に、第2次試験(専門科目)では、第Ⅱ部(論述問題)と呼ばれるいわゆる“所見問題”がかなり合否を左右する要素となりますので、典型的な出題パターンである、『●●の意義』、『●●についての留意事項』、『●●についての所見』という三段階の流れで、過去問を整理されることをお勧めします。

3.参考書など
少なくとも、資格試験要領で示されている参考書は、一通り読んでおきましょう。
また、アクチュアリージャーナルなどが指定されている場合、内容の『出典』にも必ず目を通すようにしてください。

4.ネタ本
流石に、第2次試験(専門科目)でのネタ本は、あまりないように思えますが、例えば、生保2における経済価値ベースのソルベンシー規制やERMなどについては、市販の書籍が刊行されていますので、それらにも目を通しておけば心強いでしょう。

5.スキマ時間
電車待ち、移動電車内、個室洗面所、ミーティング待機など、日常生活を注意深くみてみると、いろいろなスキマ時間があることに気づくでしょう。たとえ、1日10分程度の時間でも1年間で考えれば相当な時間になるでしょうし、逆に、スキマ時間用に、一問一答式の問題を準備しておくのもよいでしょう。
特に、第2次試験(専門科目)では、細かな知識(例.法令や監督指針等の穴埋めなど)が問われることが少なくありませんので、逆に、1分間でひと段落を覚える、といった学習方法もよいでしょう。

6.スクール
最近は、アクチュアリー試験対策に特化した学習塾や予備校のような講座がいろいろと用意されていますので、効率的に学習するためのツールとして検討されてもよいかもしれません。
特に、準会員から正会員になれば、自ずと、年収も増えることが想定されますので、自分自身への先行投資と割り切って、“お金で時間を買う”意気込みで、有料のスクールを活用されるのも、十分アリです。
残念ながら、第2次試験(専門科目)に特化した講座は、まだまだ発展途上といった感じですが、インターネットや知人などからの情報収集に努めて、自分に合った講座を探すのが良いでしょう。
また、講座によっては、無料で講座が体験できたり、無料でガイダンスに参加できたりと、様々な工夫を凝らしているものもありますので、大いに活用したいですね。

7.SNS
FacebookやTwitterなどのSNSは、試験勉強の情報交換の場であり、勉強仲間を探すツールとして有効活用したいですね。特に、フリー暗記ソフト『Anki』については、第1次試験(基礎科目)に沿った活用方法の“つぶやき”も散見されますので、是非、チェックされるとよいでしょう。
なお、当該ソフトの使用方法は、以下のサイトが便利かもしれません。
https://rs.luminousspice.com/how-to-anki/
  特に、第2次試験(専門科目)では、覚えるべき知識量が飛躍的に増加しますので、自ら発起人となって、暗記ツールの共同作成者を募るところからスタートされてもよいでしょう。

8.ヘッドハンター
良い意味で自分自身を“追い込む”ために、そしてまた、自分自身の将来のキャリアアップの機会を見定める意味からも、是非、信頼できるヘッドハンターと良質な関係を構築しておくことを、強くお勧めします。
最近では、保険会社や信託銀行などの伝統的な組織以外にも、例えば、ERMやデータ分析など、アクチュアリーの素養を活かせる仕事やポジションが多くみられますので、視野を広げる観点からも、ヘッドハンターとざっくばらんに意見交換する機会を設けるようにしましょう。
もちろん、このホームページを運営されている、VRPパートナーズの大谷さんにも、是非、お声かけをお願いできれば幸いです。
なお、たまに誤解されることが多いように思えますが、資格試験で求められる知識(含む、問題解決能力)と実務で求められる知識には、ややギャップがあるように感じられます。ですので、アクチュアリーと親和性の高い資格や、異業種からの転職時に身に着けておくべきスキル(例.語学力、対人交渉力など)についても、合わせて、ヘッドハンターに聞かれるとよいでしょう。
特に、保険会社等が求める人材像を求人票などから見る機会も少ないと思いますので、ヘッドハンターを通じて、“資格試験では習得できない”情報も、あわせて得る機会になれば、なおよいと思います。

いかがでしたか。今回ご紹介した内容を『すべて知ってたよ』という方は少なくとも楽手スタイルは確立されていると思いますので、あとは実行あるのみです。一方、『この方法は知らなかったなあ』という方は、是非、ご自身の学習スタイルに取り入れていただければ、必ず合格が近づいてくるものと思います。

(ペンネーム:活用算方)

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