2021年に起こりそうなこと(独断と偏見)


2021年がスタートしましたが、新型コロナウイルス感染症の猛威は収まるどころか、変異ウイルスの登場で、まだまだ予断を許さない状況が続いています。

一方、生命保険業界を眺めてみると、同ウイルス以外にも様々な要因が業界共通の課題として重くのしかかっているようにも思えます。

そこで、今回のコラムでは、2021年に起こりそうなことを独断と偏見を交えながら思いつくまま列挙してみたいと思います。

1.富士山噴火
以前、某保険会社のセミナーに参加させていただいたのですが、その中で、2021年は大規模な噴火に注意というコメントがありました。どうやら、世界中で大地震が起きた後、10年以内に大規模な噴火が発生していることが統計的に知られているようでして、東日本大震災から10年目に当たる2021年がその年に当たるようです。
もし、富士山が大噴火した場合、都内にも火山灰が数センチ積もるようで、日光が遮られ、農作物等への被害など、様々な問題が出てきそうですね。
なお、生命保険契約の普通保険約款では、地震・噴火・津波はいわゆる免責事項として列挙されることが多いのですが、免責となるくらいの甚大な人的被害が出ないことを祈るばかりです。

2.経済価値ベースのソルベンシー規制
2020年6月末に、金融庁の『経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議』から報告書が公表されました。特に、アクチュアリー試験(第2次試験(専門科目))で生保2の受験生のうち、当該ソルベンシー規制を予想問題に想定された方も多かったのではと思います。
2025年の本格的導入を目標にされているようですが、今のうちから、態勢整備を本格化させておく必要がありますね。

3.円建て変額保険
欧州ではソルベンシーⅡの導入で、販売商品が変化している模様で、大手社の販売量が好調なようです。逆に、個性的な商品で市場攻勢をかけている中堅会社にとっては、ソルベンシーⅡの導入で個性的な商品が販売しにくいという状況に陥っているのかもしれません。
日本においても、(外貨建の)変額保険の加入機会が増えているようにみえますが、ソルベンシーⅡの本格的導入を見据えて、かつ、(今のところ)好調な株価を背景に、今後、“円建ての変額保険”の販売が回復するという見方もあるようです。
もっとも、一部マスコミからは、『行き場を失った余剰投資資産が、たまたま株式市場に流れているだけ。』という冷めた見方もあるようでして、例えば、ビットコインのように、新たな投資先が見いだされた場合、一気に、お金が動く可能性もあります。
平成1桁台には、残念ながら、銀行借入れと変額保険のセット販売という事態を招きましたが、運用リスクを契約者が負っていることを募集時に徹底的に周知するように心がけて欲しいと願うばかりです。

4.新型コロナウイルス
第三分野保険については、監督指針で基礎率変更権の導入が記載されていますが、実際に導入されている保険会社は(少)ないように見受けられます。幸い、日本においては、諸外国に比べると、今のところ大きな脅威とまでは至っていない状況ですが、長期的ビジョンの下で、基礎率変更権の導入についても、そろそろ本格的な議論があってもいいかなと思います。
保険業界共通の課題であることから、例えば、生命保険協会、損害保険協会および日本アクチュアリー会などの業界団体で横断プロジェクト的に進めていくのもよいかもしれません。

5.オンライン募集
新型コロナウイルス感染症は、伝統的な営業職員チャネルの在り方を見直す機会を生命保険業界に求めているようにみえます。実際、オンライン募集中心の営業スタイルに舵を切ったり、そもそも、同チャネルを縮小して、新たに、非対面チャネルの導入を検討したりといった営業スタイルの変革の必要性が問われる事態になりつつあります。
ただし、例えば、インターネット・チャネルの導入は、少なくとも、『モラルリスクの回避』、『固定費(初期投資)の適正管理(例.リスティング広告料など)』など、新たな課題をもたらしますので、迅速な対応が容易ではない面も多々あると思います。

6.契約者配当の在り方
明治安田生命さんが、新たな配当方式を導入された旨の報道発表がありましたが、いわゆる有配当保険は相互会社が中心となって販売されていることを考慮すれば、給付内容や営業保険料だけではなく、契約者配当についても創意工夫を凝らすという視点は、契約者保護の一環とも考えられます。
一方、保険株式会社の台頭により、保険相互会社においても価格競争に追随せざるを得ず、5年ごと(利差)配当付保険のような営業保険料引下げ方法の工夫なども益々求められる可能性が高いと思われます。極論すれば、保険相互会社に対する無配当ルール(20%ルール)の見直し(占率引上など)の検討時期に来ているのかもしれません。

7.先進医療特約の料率引下げ
2020年3月末をもって『多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術』が先進医療の適応から除外されましたが、同施術はかなりの件数があったため、除外に伴う営業保険料の調整が望まれる可能性があります。実際、第一生命さんからは、当該除外を踏まえて、先進医療特約(10年更新)の料率改定がアナウンスされました。
終身医療保険等の終身型保険と先進医療特約がセット販売されるケースが多いと思われますが、将来的な発生率の変動(悪化)を懸念して、当該特約は定期型で販売されるケースも少なくないように思えます。
あくまでも噂ですが、先進医療リスクを回避するために、再保険活用が考えられますが、実際に終身のリスクをカバーする再保険が少ないため、顧客ニーズの高い保障を長期間の保証付きで提供しにくい環境下にあるのかもしれません。
その意味では、今後は、年齢別料率かつ有期(更新型)保障が主流になっていくのかもしれませんね。

8.第二ブランド推進:
日経新聞朝刊(2020/12/24付)に『生保、保険ショップに活路』という記事が掲載されましたが、アフラックさんや朝日生命さんが簡素な保険を提供する新ブランドを相次いで立ち上げる模様です。従来よりも保険料が安い商品という点が最大のポイントで、営業職員チャネルが取り扱う商品とどのような差別化を図るのか、“組合問題”を回避する観点からも難しいかじ取りが求められるかもしれません。
もっとも、消費者目線では、良質で安い商品が市場に流通して、保険加入の選択肢が拡大することは、歓迎すべき動きと言えるでしょう。

9.保険会社の合併・経営統合
超低金利に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で、保険業界に限らず、経営の効率化・合理化が求められています。一方、世界的にみれば、まだ、日本の保険市場は安定的に推移しているため、外国保険会社からみれば、優良な保険市場を求めて日本へ進出される可能性も十分あると思われます。

10.アメリカ新大統領
日米保険協議は、いまだに日本の保険市場に影響を残している感がありますが、個人的には、正直、トランプ氏はもっと日本に対して強硬姿勢を取られるように想定していました。一見、穏やかな紳士のように見えるバイデン氏が、どのようなかじ取りをされるのか、また、それによって、日本を含めた世界の保険市場がどのような影響を受けるのか、大いに注目されますね。

 いかがでしたか。上記以外にも様々なイベントが起こりそうな2021年となりそうですが、東京オリンピックの開催も含めて、新型コロナウイルス感染症が一日も早く収束して、日本経済への影響が最小限にとどまることを祈念しております。

(ペンネーム:活用算方)

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