例年、11月末に、年金数理人会試験の問題および解答が公開されますが、2020年も11月30日(月)9時30分頃に公開されました。
特に、同試験科目中、基礎数理Ⅱは、アクチュアリー試験の生保数理との親和性が高いこともあり、アクチュアリー試験に向けた直前対策として利活用される受験生も少なくないと思われます。
そこで、今回のコラムでは、2020年の年金数理人会試験(基礎数理Ⅱ編)の問題について、生保数理の受験生にも役立つように、気づいた点を幾つかご紹介いたします。
問題1(1):確定年金の右下添字は、期始払と期末払の関係式が現価と終価で逆の動きをする点に着目すると良いでしょう。実際、生保数理の教科書(上巻)14ページ(1.5.6)および14ページ(1.5.10)を用いて、現価と終価について期始払を期末払に変形すれば、右下添字が同じ値になります。
問題1(2):“帳簿上の利回りによる利息”-“クーポン”=“評価損益”という関係に着目しましょう。なお、j > i より、評価「益」であることは明らかです。また、教科書(上巻)230ページ(2)(b)の表で、(3)から(4)を控除すれば(5)評価益が得られることを活用すると良いでしょう。
問題1(3):アクチュアリー試験(生保数理)過去問H13問1(2)と同じ問題です。特に、α=1とした場合、不合理な選択肢(例.(ア)(イ)(ウ)は分母がゼロとなり不正解、(エ)(カ)は分子がゼロとなり不正解など)を除外して、正解候補を(オ)(キ)(ク)に絞り込む方法も有効です。なお、正解は(ク)です。
問題1(4):アクチュアリー試験(生保数理)過去問H18問1(2)の類題です。なお、問題文には明記されていませんが、定常状態が崩壊しても死亡率は不変である点が、暗黙のルールとなります。
問題1(5):多重脱退表における『脱退力の線形性』に着目して、μ=μA+μBを単生命表における『死力』とみなせば、死力と生存確率に関する重要公式(教科書(上巻)57ページ(2.4.12))から生存確率を求めれば解けます。
問題1(10):アクチュアリー試験(生保数理)過去問H21問1(10)の類題です。
問題2(1):アクチュアリー試験(生保数理)過去問H11保険数学Ⅱ問2と同じです。なお、アクチュアリー会の公式解答をご覧いただければ、少なくとも、3通りの別解が存在します。
いかがでしたか。新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年の試験は延期・中止を余儀なくされたことが多かったように見受けられますが、年金数理人会試験が開催されたことはとても喜ばしい限りです。アクチュアリー試験まであと少しですが、受験生の皆様におかれましては、体調を崩されずに良い結果が出せることをお祈りしております。
(ペンネーム:活用算方)